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朝日新聞記者の将棋の日々

2019.03.19 公開 ツイート

27年ぶりに「無冠」となった羽生善治九段の新たな挑戦 村瀬信也

A級順位戦最終局で広瀬章人竜王に勝ち切った羽生善治九段。(村瀬信也 撮影)
A級順位戦最終局で広瀬章人竜王に勝ち切った羽生善治九段。(村瀬信也 撮影)

「また、和服を着て対局する可能性はありますか」。

すぐ近くにいた記者がそう尋ねた瞬間、私はボールペンを動かす手を止め、羽生善治九段の顔を見つめた。

3月2日。前日にA級順位戦最終局を戦った羽生は、東京・有楽町で開かれた鹿児島の伝統工芸品「本場大島紬」の贈呈イベントに出席した。鹿児島県とは、羽生の祖父の出身が種子島という縁がある。

贈られたのは、共に絹100%で織られた緑の着物と深緑の羽織。三反園訓知事が羽織を着せると、羽生は「軽いですね」と驚きの声を上げた。冒頭の質問は、その後の囲み取材で飛び出した。

将棋の対局のほとんどは和室で行われる。棋士は普段、スーツで臨むが、タイトル戦の際は和服を着るのが慣例だ。将棋取材を担当している私には、その質問は「また、タイトル戦に出る可能性がありますか」という問いと同義に聞こえた。そんなことを、ここで聞いちゃうのか――。

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藤井聡太、渡辺明、豊島将之、羽生善治…… トップ棋士21名の知られざる真の姿を徹底取材! ! 史上最年少で四冠となった藤井聡太をはじめとする棋士たちは、なぜ命を削りながらもなお戦い続けるのか――。 「幻冬舎plus」の人気連載『朝日新聞記者の将棋の日々』に大幅加筆をし、書き下ろしを加えてついに書籍化。 藤井聡太の登場から激動の5年間、数多くの戦いを最も間近で見てきた将棋記者・村瀬信也が、棋士たちの胸に秘める闘志や信念に迫ったノンフィクション。

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朝日新聞記者の将棋の日々

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村瀬信也 朝日新聞 将棋担当記者

1980年東京都生まれ。早稲田大学将棋部で腕を磨き、2000年の学生名人戦でベスト16に。2003年、朝日新聞社に入社。2008年に文化グループ員になり、2011年から将棋の専属担当に。大阪勤務を経て、2016年、東京本社文化くらし報道部員になり、将棋を担当。名人戦や順位戦、朝日杯将棋オープン戦を中心に取材。共著に『大志 藤井聡太のいる時代』(朝日新聞出版)がある。

Twitter:@murase_yodan

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