1. Home
  2. 社会・教養
  3. 日本野球よ、それは間違っている!
  4. 巨人・上原引退への違和感

日本野球よ、それは間違っている!

2019.05.25 更新

巨人・上原引退への違和感広岡達朗

巨人の上原浩治投手(44)は5月20日の引退記者会見で、顔をクシャクシャにして泣いた。

通算成績は日本で112勝67敗、33セーブ、防御率3.02。米大リーグでは22勝26敗、95セーブ、防御率2.66。直球はさほどスピードがないものの、フォークボール(スプリット)などの多彩な変化球とコントロールで10年間メジャーの救援投手として活躍し、日米通算100勝・100セーブ・100ホールドの実績を残したのは立派だった。

しかし今年は一軍の登板がなく、二軍でも9試合で防御率4.00と打ち込まれて21年間の現役生活に限界を感じた。記者会見でも「二軍戦で通用しなかったことで、気持ちが後ろ向きになった」と告白したが、私にいわせれば、二軍で打たれて初めて限界を知ったというのは遅い。昨年10年ぶりに日本球界に復帰したが、メジャーで戦力外になったときに引退すべきだった。

昨年オフに左ヒザを手術し、一度自由契約になったところを原巨人に再契約してもらったのだから、泣くことはない。

上原は「アマチュアでプロ野球に入っていく子を育ててみたい気持ちはある」と第二の人生について語ったが、ここで「人間は年齢とともに体力が衰えるという自然の摂理には勝てなかった。やはりいつまでも現役にこだわるより、後輩を育てることに価値があることに気がついた」といえばりっぱだった。最年長選手がこういえば、ほかの“限界選手”たちも気がつくだろう。

遅すぎた決断。泣くことはない

かつて中日に、ホームランを打たれた翌日に「この球を打たれるようでは俺ももうだめだ」といって引退した投手がいた。

広島とヤクルトで活躍した内野手の小早川毅彦も「この球をホームランできなくなったのではもうだめだ」と覚悟を決めた。

そして王貞治が、それまでなんとも思わなかった投手の球が別人の球のように速く見えたとき、自分の衰えと限界を感じて40歳で引退したのは有名な話である。

昔の選手には、プロとしての責任感があった。

ところがいまは、かつて不動の4番だった選手が7番、8番でも平気で打席に立ち、ベンチ要員として試合の後半、後輩選手の代打に立っても何も思わないのはおかしい。プライドも何もないのだ。

そういうことからいえば、44歳でマウンドを降りた上原には、自然の摂理には勝てないことに気づいて、今後プロ野球で後輩たちを育ててくれればありがたい。

イチローと松井が日本に帰らない理由

引退といえば、アメリカでは3月に引退したマリナーズのイチローが同球団のインストラクターに就任した。昨年5月に就任した会長付特別補佐を兼務しながら、打撃、外野守備、走塁を担当する。本拠地での大半の試合に同行し、傘下のマイナーリーグ、3Aタコマでも指導するという。

大リーグの日本人選手の処遇としては、ヤンキースのゼネラルマネジャー特別アドバイザーの松井秀喜がいるが、2人とも選手指導の資格と権限があるチーム付きのコーチではない。

イチローが5月1日(現地時間)、初仕事として試合前の打撃練習で投手を務めたように、2人とも中途半端な立場に見えるが、どちらも実績のある選手を引退後も厚遇しているように見えるアメリカらしい人事である。背景には、現役の日本人選手とその後ろにいる日本球界とファンに対する親善パフォーマンスという配慮もあるのだろう。

一方、2人が日本に帰らないのは、大事にしてくれるアメリカでぬくぬくと球団に残ったほうがいいし、それなりに野球の勉強にもなるからだ。

そしてもっと大事なことは、日本のオーナーや球団は「待っています」というだけで、スーパースター監督として就任しても、すぐ結果が出なければクビを切ることがわかっているからだろう。

大リーグで長年活躍した2人には、日本球界の理不尽で遅れた体質がわかり切っているだけに、日本のコミッショナーやオーナーたちは、2人が引退後も帰国しない背景を深く反省したほうがいい。

*   *   *

「私がイチローに引退を勧め続けた理由」
「大谷は外野手になれ!」
「原巨人は、丸で優勝しても意味がない」
――日本野球界を斬って斬って斬りまくる、この連載が本になりました!

最新刊『言わなきゃいけないプロ野球の大問題 巨人はなぜ勝てなくなったのか?』(幻冬舎)は全国の書店で好評発売中。

●長野、内海の流出で試される巨人の若手育成力
●“ポスト原”の監督育成に着手せよ
●大谷はバッティングを封印してリハビリに専念しろ
●イチロー、45歳で引退。真価が問われる“第二の人生”
●ワールドシリーズを制したレッドソックスの「脱・フライボール革命」
●ソフトバンクは今シーズンこそ“真の日本一”をめざせ
●日ハム・吉田と中日・根尾 大型ルーキーの課題とは
●FA選手の巨額複数年契約はやめろ ……ほか

セ・パ両リーグ日本一の名将・広岡達朗氏が「野球の本質とは何か」を提言。
2019年シーズンの最新情報をもとに、甲子園から大リーグまで野球界の問題を徹底検証します。

関連キーワード

関連書籍

広岡達朗『言わなきゃいけないプロ野球の大問題 巨人はなぜ勝てなくなったのか?』

「私がイチローに引退を勧め続けた理由」「大谷は外野手になれ!」「原巨人は、丸で優勝しても意味がない」――セ・パ両リーグ日本一の名将が書き残す、野球の本質とは何か

広岡達朗『日本野球よ、それは間違っている!』

「清宮は即戦力にならない」「大谷の二刀流はメジャーで通用しない」「イチローは引退して指導者になれ!」――セ・パ両リーグ日本一の名将が大胆予言! 球界大改革のすすめ

広岡達朗『巨人への遺言 プロ野球 生き残りの道』

セ・パ両リーグで日本一監督となった球界の伝説・広岡達朗氏が、84歳になってようやくわかった「野球の神髄」をまとめた、野球人生の集大成的な一冊。 新監督、大リーグから賭博事件、元選手の薬物逮捕といった近年の球界を取り巻く問題まで舌鋒鋭く斬り込んだ、日本プロ野球への「愛の鞭」が綴られている。

{ この記事をシェアする }

日本野球よ、それは間違っている!

 

 

 

バックナンバー

広岡達朗

1932年、広島県呉市生まれ。早稲田大学教育学部卒業。学生野球全盛時代に早大の名ショートとして活躍。54年に巨人に入団、1年目から正遊撃手を務め、打率.314で新人王とベストナインに輝いた。引退後は評論家活動を経て、広島とヤクルトでコーチを務めた。監督としてヤクルトと西武で日本シリーズに優勝し、セ・パ両リーグで日本一を達成。指導者としての手腕が高く評価された。92年に野球殿堂入り。『動じない。』(王貞治氏・藤平信一氏との共著、幻冬舎)、『巨人への遺言』『中村天風 悲運に心悩ますな』『日本野球よ、それは間違っている!』(すべて幻冬舎)など著書多数。新刊『言わなきゃいけないプロ野球の大問題 巨人はなぜ勝てなくなったのか?』(幻冬舎)が発売中。

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP