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日本野球よ、それは間違っている!

2020.06.06 更新 ツイート

巨人・菅野 復調の兆しは減量の効果だ広岡達朗

プロ野球が6月19日の開幕に向けて練習試合を再開した。マスコミは長い冬眠から覚めたように大騒ぎだが、始まったばかりの練習試合で勝った負けたは意味がない。それより、セ・パ両リーグで監督を経験した私が注目するのは、選手たちの体である。

体は正直だ。長いコロナ自粛の間、私生活での自己管理と自主練習をしっかり続けた選手は動きもいいし、自堕落な生活を続けた選手は肥満して動けない。

練習試合初日の6月2日、私は西武戦で先発した巨人の菅野智之を見て「ほう」と思った。昨年までふっくらとたるんでいた頬はすっきりして、ユニホーム姿も昨年より締まって見えた。

 

緩急とメリハリの効いたフォーム復活

体の変化は投球フォームにも表れていた。上げた左足は一瞬だがしっかり溜め、絞った弓を解き放つような右腕の振りは速かった。その結果としてリリース後、跳ね上げた右足はすぐ着地して、自然に打球に備える守備態勢になっている。

このゆっくり始動してピュツと投げる一連の動きはメリハリが効いていて、これを「キレがいい」という。この日、巨人は投手陣の乱調で逆転負けしたが、先発の菅野だけは4回を2安打1失点で仕上げた。だが私が注目したのは、その成績より菅野の体と投げ方だった。

私はこれまで、菅野の優れた素質を評価しながら厳しい意見をいい続けてきた。その根拠はただひとつ、「太りすぎ」への警告だった。

たとえば拙著『日本野球よ、それは間違っている!』(幻冬舎)で、巨人ナインの危険な“肥満体質”について書いた。そのなかで「エース・菅野智之も年々肉づきがよくなっているし、13勝4敗で菅野、マイコラスとともに先発3本柱の一角を担う田口麗斗も171cmで83kgになった。(中略)選手にとって肥満が危険なのは、故障の原因になり、選手寿命を縮めることになるからだ」と指摘した。

菅野の腰痛と不調は肥満が原因

そして2019年6月8日の当コラムでは、腰痛で二軍調整中の菅野について「菅野の復活は肥満体質の改善が先だ」と書いている。

「私の不安は的中し、2017年に13勝4敗だった田口は18年は2勝8敗に終わり、今季は中継ぎ投手に降格した。(中略)

菅野はいうまでもなく、日本球界を代表する本格右腕である。速球のほか、フォークボール、スライダーなどの変化球も精度が高く、コントロールも抜群だった。なかでも私が評価するのは、左肩がリリースの寸前まで開かないので球離れが遅いことだ。

ところが今年は、下半身の動きに粘りがないため重心が高く、結果として手投げが多くなり、被本塁打13の両リーグワースト記録を残して交流戦を迎えた。

菅野がたびたび大量失点で降板したのは、ボッテリと太った姿と無縁ではないと私は見ている。腹や腰に肉がつきすぎたため、下半身や上半身のひねりにキレがなくなったのが大量被弾や腰の故障につながったのではないか。

菅野の体重を調べてみると、2017年と18年は92キロだったのが、19年は95キロに増えていた。ちなみにこのデータは球団独自の計量で、日本相撲協会のように力士を公開で計量しての発表ではない。つまりプロ野球選手の体重は、球団の裁量で実際より軽く公表することも可能なのだ。

菅野が完全復活するには、腰痛治療だけでなく、余分な肉をそぎ落とす体質改善が先決だろう。そのためには肉食に偏らず、植物性の自然食も摂るバランスのよい食生活を送ることだ」

今季の体重は3キロ減

菅野の実際の体重は知らないが、今シーズンの公表体重は92キロになっている。つまり2日の西武戦で菅野が細く見えたのは、昨年より3キロ減で、連続15勝以上挙げた時代に戻ったことにある。

また昨年はフォームや球にキレがなく、投げた後、右足が一塁側に着地することが多かった。これは先述のように「腹や腰に肉がつきすぎたため、下半身や上半身のひねりにキレがなくなった」ためではなかったか。

フォーム改造は必要ない

そして菅野が西武戦でフォームも球もキレがあったのは、贅肉を絞って当たり前の体と投げ方に戻っただけ。「当たり前」というのは「基本通り」ということでもある。菅野ほどの能力があれば、当たり前に投げれば本来の結果を出せるし、まだまだ技術の伸びしろがある。

当たり前といえば、両手を右肩まで上げてから左足を上げる新投球フォームも動きが小さくなった。菅野は「よりシンプルに無駄な動きをなくすことで今のフォームに落ち着いた。完成形といっていいい」と語っているが、このフォームには走者がいるときのセットポジションでは使えないという欠陥もある。

昨年がよくなかったのでフォーム改造をしたのだろうが、菅野ほどの能力があれば小細工は必要ない。しっかり減量と練習を続ければ、当たり前の投げ方で十分だ。

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広岡達朗

1932年、広島県呉市生まれ。早稲田大学教育学部卒業。学生野球全盛時代に早大の名ショートとして活躍。54年、巨人に入団。1年目から正遊撃手を務め、打率.314で新人王とベストナインに輝いた。引退後は評論家活動を経て、広島とヤクルトでコーチを務めた。監督としてヤクルトと西武で日本シリーズに優勝し、セ・パ両リーグで日本一を達成。指導者としての手腕が高く評価された。92年、野球殿堂入り。『動じない。』(王貞治氏・藤平信一氏との共著)、『巨人への遺言』『中村天風 悲運に心悩ますな』『日本野球よ、それは間違っている!』『言わなきゃいけないプロ野球の大問題』(すべて幻冬舎)など著書多数。新刊『プロ野球激闘史』(幻冬舎)が好評発売中。

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