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日本野球よ、それは間違っている!

2021.02.20 更新 ツイート

プロ野球のキャンプは練習期間が短すぎる 広岡達朗

プロ野球のキャンプが始まって3週間になる。2月11日の第3クールからは多くのチームが他球団との練習試合を始めたから、無観客の練習試合が始まる23日までしっかり練習を続けるのはソフトバンクと西武だけだ。

私にいわせれば、キャンプはペナントレースの長丁場を乗り切る基礎体力と基本プレーをしっかり身につける場だ。それが2週間程度で終わり、紅白戦や練習試合を急ぐのはおかしい。

 

最近の指導者は「選手は実戦で成長し、監督は試合で選手の力を見極めることができる」と考えているようだが、これは練習できちんと指導することができない言い訳だ。3月26日の開幕までは1か月以上ある。2月は紅白戦や練習試合より、基本プレーと監督がめざす野球の徹底に専念すべきだ。

日本ハム・吉田輝星は変則フォームを直せば勝てる

練習より実戦といえば、日本ハムが2月7日、早々に紅白戦を行った。この試合に先発した吉田輝星は打者8人に30球を投げ、2回を1安打2三振1四球で無失点だった。

吉田が秋田県立金足農業高校からドラフト1位で入団したとき、私は「これではダメだ」と書いた。たしかに夏の甲子園大会準優勝の右腕はオーバーハンドから力強い速球を投げたが、私が評価できなかったのは「上半身にひねりがなく、パタンと下に向かって折れているだけ」だったからだ。

その後の吉田は即戦力にならず、2年間で一軍通算9試合に登板して1勝5敗。3年目を迎えた吉田は相変わらず上半身を折り曲げるだけの投球だったが、もっと心配なのは、投げたあと体が左に大きく傾き、跳ね上げた右足が一塁側に着地していたことだ。

重心が垂直なら、投げる力がボールに乗って球威が上がる

これではボールに乗る体の力がまっすぐ打者に向かって行かないから、伸びのある力強い球を投げることができない。

投手の理想は、球を投げたとき、(右投げの場合)頭と右肩、左ヒザとつま先が前から見て縦一直線になること。こうなれば、体の軸が垂直で、投げる力が100%ボールに乗っていることになる。だから吉田は、体重が左に抜けたぶんだけ打者に向かう球の力がロスしている。

そして右足が一塁側に着地したら、足元から三塁寄りの打球を捕ることができない。最近、「投手は投げるだけでいい」という理論があるようだが、投手は9人目の野手として足元周辺の打球をさばく責任がある。

たとえば楽天に復帰した田中は日本でゴールデングラブ賞を3度受賞し、大リーグでも守備力が高く評価された。田中の守備がいいのは、投げたあと右足がすぐ三塁側に着地するからだ。

私がコーチなら、重心をへその下に置いて投げ、右足を三塁側に降ろしてすぐ守備態勢に入るよう吉田を指導する。それだけで球威が増し、2年間二軍でくすぶっていた右腕はすぐ一軍で投げられるようになるだろう。投手としての素材はいいのだから、このままではもったいない。

急増した大リーグの猿まね投法

私はキャンプが始まってから、CS放送で各球団の練習を見ている。そこで気づいたのは、吉田と同じように投げたあと左(左投手は右)に傾き、後ろ足を一塁側(左投手は三塁側)に着地する投手が多いことだ。

田中や巨人の桑田など、古今の名投手にこんな変則投法がいないことでもわかるように、これは大リーグの猿まねである。

足が長く下半身が弱い外国人投手は上半身で投げるからこうなるが、手足が短く下半身が強い日本人は、こんな変則投法をまねてはいけない。キャンプで新人や若い投手にこのタイプが多いのは、高校・大学時代にテレビ中継で見たメジャーのまねをするからだろう。

私はこれまで、コラムや著書で大リーグの猿まねによる弊害について書いてきたが、監督やコーチはなぜこんな変則投法を指導しないのか。

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広岡達朗

1932年、広島県呉市生まれ。早稲田大学教育学部卒業。学生野球全盛時代に早大の名ショートとして活躍。54年、巨人に入団。1年目から正遊撃手を務め、打率.314で新人王とベストナインに輝いた。引退後は評論家活動を経て、広島とヤクルトでコーチを務めた。監督としてヤクルトと西武で日本シリーズに優勝し、セ・パ両リーグで日本一を達成。指導者としての手腕が高く評価された。92年、野球殿堂入り。『動じない。』(王貞治氏・藤平信一氏との共著)、『巨人への遺言』『中村天風 悲運に心悩ますな』『日本野球よ、それは間違っている!』『言わなきゃいけないプロ野球の大問題』(すべて幻冬舎)など著書多数。新刊『プロ野球激闘史』(幻冬舎)が好評発売中。

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