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日本野球よ、それは間違っている!

2020.08.01 更新 ツイート

大谷翔平が「二刀流復活」できなかった理由広岡達朗

7月27日の朝、日本の野球ファンは声を失った。大リーグ・エンゼルスの大谷翔平が、右ヒジの手術から1年11か月ぶりに復帰したマウンドで、1死も取れずに5失点を許してKO降板したからだ。

2年前、メジャーデビューで二刀流のスタートを切ったカリフォルニア州オークランドのアスレチックス戦。693日ぶりに公式戦のマウンドに立った大谷は30球で3安打3四球を許し、最速95マイル(約153キロ)の速球や変化球はほとんどが抜けて、長い右腕にしなりはなかった。

乱調だった紅白戦

私は結果論はいわない。大谷が復帰戦で投げる前日、旧知の新聞記者が「明日の大谷はどうですかね」と聞いてきたが、私は「ダメダメ!」と断言した。根拠があったからだ。

大谷は開幕前にロサンゼルスの本拠地で約2週間のキャンプを行い、実戦形式の紅白戦に3度登板した。73球投げ、5回5安打6三振で無失点だった19日(現地時間)の最終日には、日本のスポーツ紙が1面をつぶして大騒ぎしたが、冗談じゃない。

それまでの紅白戦2試合はボール連発の乱調で、テレビのスポーツニュースで見た大谷は、最終戦も含めて恐る恐る投げていた。

本人は全力投球しているつもりだろうが、手術した右ヒジが無意識のうちに気になるのだろう。スポーツ紙は「修正力抜群」「万全!二刀流」と持ち上げたが、紅白戦の大谷は日本ならノックアウトだ。

自分が治してこそ真の復活

あの紅白戦から1週間で、2年近いブランクのある大谷がオープン戦などの実戦経験もなく別人のように豹変できるはずがない。しかも舞台は、身内の練習試合とは違うレギュラーシーズン(本番)のマウンドだ。結果はご覧の通り、紅白戦以下の大乱調だった。

しかし私がいいたいのは、技術的な問題や勝敗ではない。大谷が2年前の10月に手術したときからこの連載や著書で書いてきたように、投手の故障が手術で治るはずがないということだ。

もし故障してから治ったのなら、手術をしたから治ったのではなく「自分で治した」のでなければダメ。一般人の病気でも、自分が不摂生など間違ったことをして手術を受ける羽目になったのだから、自分に責任があると気づいて自らの生活を直さないと、本当の意味で病気を治したとはいえない。

そして病気をしたら、「ありがたい。俺は何か悪いこと、間違ったことをしているのだな。病気がそれを教えてくれた」と考えるようになればりっぱなのだ。

手術にしても、一般人なら手術で普段の生活ができるまでに回復して長生きをすることもできる。しかし激しい勝負に明け暮れるスポーツマンは、その上の上を考えなければいけない。日常生活ができるだけではダメなのだ。

大谷は体格が恵まれている上に素質もある。それなのに、あの若さでどうして何度も手術をしなければならないのかがわからない。そこに実は、スーパースター・大谷の問題がある。

大谷ほどの体力と素質に恵まれた逸材が、コロナ禍で開幕が大幅に遅れたために術後2年近くもリハビリとトレーニングを続けて、まだ復活できないのなら、ヒジのケガは手術では治っていない証拠ではないか。

ケガを自力で乗り越える選手になれ

私は手術反対論者である。なかでもいまや日米で大流行しているトミー・ジョン手術(靭帯再建手術)に一貫して反対しているのは、あの手術で以前の球威を取り戻した選手がほとんどいないからだ。

私は2年前、大谷が球団の薦めに即応して手術を決断したとき、「危険なトミー・ジョン手術を急ぐな」と書いたのを思い出す。

私は大谷が日本ハムの時代から「二刀流は優れた才能の無駄遣い」と反対してきた。エンゼルスに入ったあとも「約1年の間に3度も靭帯損傷を起こし、同じ注射治療を2度受けていたにもかかわらず二刀流を続けさせたことが、結果的に投手としての調整とリハビリにブレーキをかけていたのではないのか」と「靭帯損傷再発に二刀流の影」を指摘した。

大谷が手術をしないでヒジを治したのなら今後の復活が期待できる。私はそういう人間になってほしい。それでも大谷が手術に頼ったのは、ヒジがよほど悪いか、ケガは自分の力で治せることを知らないのだろう。

あれほど才能に恵まれた日本球界の至宝が、復帰登板のマウンドでストライクが入らずに立ち尽くす姿を見て、手術以外に再起の道はなかったのかと、あらためて思う。

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「際立ってる」メンバー推し闇ゲドー@スキアラバ沼津  大谷翔平が「二刀流復活」できなかった理由|日本野球よ、それは間違っている! https://t.co/lMpo8tBPVg #スマートニュース 村田兆治エ 7日前 replyretweetfavorite

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広岡達朗

1932年、広島県呉市生まれ。早稲田大学教育学部卒業。学生野球全盛時代に早大の名ショートとして活躍。54年、巨人に入団。1年目から正遊撃手を務め、打率.314で新人王とベストナインに輝いた。引退後は評論家活動を経て、広島とヤクルトでコーチを務めた。監督としてヤクルトと西武で日本シリーズに優勝し、セ・パ両リーグで日本一を達成。指導者としての手腕が高く評価された。92年、野球殿堂入り。『動じない。』(王貞治氏・藤平信一氏との共著)、『巨人への遺言』『中村天風 悲運に心悩ますな』『日本野球よ、それは間違っている!』『言わなきゃいけないプロ野球の大問題』(すべて幻冬舎)など著書多数。新刊『プロ野球激闘史』(幻冬舎)が好評発売中。

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