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日本野球よ、それは間違っている!

2020.09.12 更新 ツイート

不振の大谷翔平は打撃理論を忘れろ広岡達朗

エンゼルスの大谷翔平が9月10日(現地時間)現在、打率.194、本塁打5と不振にあえいでいる。相変わらずクリンナップ中心の指名打者で、ときどきマルチヒット(複数安打)やホームランを打つが、後が続かない。

大谷は今年もケガに泣かされている。右ヒジの手術から約1年11か月ぶりに公式戦で登板した直後の8月初め、右ヒジ付近の筋肉損傷で今季の登板は封印。その後は指名打者として出場しているが、打率1割台と低迷している。

 

大谷の打撃不振は右足のつま先が象徴している。左打ちの大谷は、日本ハム時代から軽く右足を上げて打つレッグキックだったが、メジャー1年目の2018年はノーステップのトータップで22本塁打を叩き出してアメリカンリーグの新人王になった。

報道によると、二刀流復活をめざした今年は足を上げるレッグキックかノーステップのトータップかで試行錯誤が続いている。4番DHで先発した9月4日のアストロズ戦も、ノーステップの5打席はノーヒットだったが、5-5の同点で迎えた延長11回、一死二塁で右足を上げるレッグキックに変えて、右前に自身メジャー初のサヨナラヒットを放っている。

つま先に出る大谷の“迷い”

現役時代のイチローは、毎日ビデオで自分のフォームをチェックして、悪いところを改善した。体と素質に恵まれているうえに頭のいい大谷も、これまで投打のフォーム改善を続けてきたはずだ。

ワンステップからノーステップへのモデルチェンジもその一つだろうが、打席で構えた後、球が来ると右のつま先を小刻みに動かしてタイミングをとる“すり足”が、私には大谷の迷いに見える。その結果、160キロ前後の速球や大きな変化球に差し込まれて三振したり、詰まって内野ゴロになることが多いのではないか。

7月29日のマリナーズ戦のように、地上37センチの超ローボールを長いリーチですくい上げる神業のようなホームランもあったが、シーズンが半ばを過ぎてもなお自分のバッティングができていない。

打撃はシンプル・イズ・ベスト

ではどうするか。私にいわせれば、打撃の理論でいっぱいになっている頭を空っぽにして、無心で打ったらいい。そうすれば、飛んでくる球に合わせて小刻みにステップするような小細工をしなくなるだろう。

バッティングはシンプル・イズ・ベストである。たとえば巨人時代に私が一緒にプレーした王貞治は、合気道の極意を取り入れて一本足打法を完成した。投手がテイクバックに入ると体の重心を臍下(せいか=へその下)の一点に集めて一本足で立ち、球が自分のミートポイントまで来ると構えたトップから最短距離でバットを振り抜いた。

しかも、ツーストライクまでは真ん中直球に的を絞って悪球や難しい変化球に手を出さなかったから、通算2390の四球を記録している。

邪心を捨てて無心で打て

私が西武の監督時代にも、無心で打つことを教えた選手がいた。のちに西武の主砲になり、引退後はソフトバンクの監督を務めた秋山幸二である。

高知キャンプで秋山を熱心に指導していた打撃コーチの長池徳士は、思うように成長しない秋山を連れて私のところに泣きついてきた。私は秋山に、濡らした藁の束を日本刀で切る練習をさせた。

私がこの特訓をさせたのは、藁を切るときにエイッと反動をつけさせないためと、「無心で打つこと」を教えるためだ。真剣は邪心があったら余分な力が入って藁は切れない。野球も「長打を打ってやろう」という邪心を持たなければ反動をつけず、来た球に素直にバットを出すことができるからだ。

秋山は日本刀で藁を切れるようになった翌日から、目が覚めたように長打を連発した。私たちは打球が場外に出ないよう、あわてて春野球場の外野席に高いネットを張ったものだ。

体と才能に恵まれた大谷なら、技術論に執着せず、頭を空っぽにするだけですぐ復活するだろう。

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広岡達朗

1932年、広島県呉市生まれ。早稲田大学教育学部卒業。学生野球全盛時代に早大の名ショートとして活躍。54年、巨人に入団。1年目から正遊撃手を務め、打率.314で新人王とベストナインに輝いた。引退後は評論家活動を経て、広島とヤクルトでコーチを務めた。監督としてヤクルトと西武で日本シリーズに優勝し、セ・パ両リーグで日本一を達成。指導者としての手腕が高く評価された。92年、野球殿堂入り。『動じない。』(王貞治氏・藤平信一氏との共著)、『巨人への遺言』『中村天風 悲運に心悩ますな』『日本野球よ、それは間違っている!』『言わなきゃいけないプロ野球の大問題』(すべて幻冬舎)など著書多数。新刊『プロ野球激闘史』(幻冬舎)が好評発売中。

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