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日本野球よ、それは間違っている!

2020.10.17 更新 ツイート

揚塩球団社長の引責辞任は阪神だけの問題ではない 広岡達朗

阪神タイガースの揚塩(あげしお)健治球団社長が選手の新型コロナウイルス集団感染の責任を取って辞任することになった。

辞任会見で揚塩社長は「2度にわたって球界全体にご迷惑をおかけした。最終的な責任者の私の一存でシーズン終了をもって社長を辞する」と語ったが、阪神の集団感染は3月下旬、投手の藤浪晋太郎ら3選手がファンとの食事会で感染したのが始まりだった。

私は選手が外出先で感染するのはもらい事故のようなもので、マスコミが一方的に選手や球団の責任を追及するのはおかしいと思っている。アメリカ合衆国大統領ですら防ぎきれない新型コロナウイルスは一筋縄ではいかない。各国の政府や医学者が競って研究してもワクチンや特効薬が見つからないのだから、感染した人間や球団の責任と決めつけるのはおかしい。

 

私にいわせれば、世界規模で広がるコロナ禍には、飲食を含む日常生活の激変などで近代人のウイルスに対する抵抗力、つまり免疫力が弱くなったという大きな背景がある。

しかしここでは、プロ野球界の責任の取り方に絞って考えたい。

本社から素人幹部が出向する球団フロントの無責任体制

10月3日の当コラム「エプラーGMの解任で大谷翔平の将来はどうなる?」で触れたように、米大リーグでは資本家であるオーナーは球団経営に事業生命をかけ、監督人事をはじめ戦力強化と現場運営の権限と責任は専任のGM(ゼネラルマネジャー)に一任する。そのかわり、成績不振の原因がGMの能力不足と見られたらGMは解任・更迭される。

私があの記事を書いた1週間後に日本で起きたのが、阪神球団社長の引責辞任だった。阪神はかつて、早稲田大学野球部の後輩・中村勝広が監督を経てGMを務めたが、彼が急逝してからはGM職を置いていない。現在は揚塩社長が実質GM兼務の球団トップだから、選手やスタッフの相次ぐ集団感染の責任を取って辞職するのだ。

だが大リーグのGMと日本の球団社長やGMでは、責任の取り方がまったく違う。メジャーの場合、文字通り解雇されて球団を去る。しかし企業の宣伝媒体である日本の球団では、親会社(本社)の役員や幹部が社内異動で子会社の球団に出向してくるから、更迭されても本社や関連会社に戻るのが一般的だ。

背景に宣伝媒体プロ野球の構造欠陥

阪神の揚塩球団社長も大学を卒業後、阪神電鉄に入社し、阪神甲子園球場長、球団役員、グループ企業の不動産会社社長兼阪神電鉄本社役員を経て球団社長に就任した。

こうした経歴は読売新聞の子会社である巨人をはじめ、多くの球団人事も大同小異である。だから阪神に限らず、成績不振や賭博容疑などの不祥事でフロント幹部が辞任・更迭されても、彼らには帰るところがあるのだ。

これまでも球界は、2015年の巨人の野球賭博事件など不祥事があるたびに球団代表ら責任者が引責辞任し、調査委員会を立ち上げて再発防止策を作った。今年のコロナ禍でも、プロ野球はJリーグと連携して「新型コロナウイルス対策連絡会議」を設置し、感染症の専門家チームから提言を受けて全選手を対象にPCR検査を毎月行っている。

命がけで仕事をしない球団幹部が問題解決できるのか

また、各チームでも内規を設けて感染防止に努めてきたという。たとえば阪神も「外部での会食は4人まで」と決まっていたが、9月19日に遠征先の名古屋市内では内規を超える8人が飲食店で会食していた。

もともと阪神は選手管理が甘い球団だが、野球を知らない、やったこともない人間が、肩書きだけでGMの役目を務めるのがおかしいのだ。いくら厳しい内規を決めても、球団トップが本社から来て、問題が起きたら「私の責任です」と頭を下げて本社に帰る。それで問題の本質が解決するのか。命がけで野球という仕事をしていないではないか。日本は全部そうだ。

球団社長の引責辞任は、阪神だけの問題ではない。

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広岡達朗

1932年、広島県呉市生まれ。早稲田大学教育学部卒業。学生野球全盛時代に早大の名ショートとして活躍。54年、巨人に入団。1年目から正遊撃手を務め、打率.314で新人王とベストナインに輝いた。引退後は評論家活動を経て、広島とヤクルトでコーチを務めた。監督としてヤクルトと西武で日本シリーズに優勝し、セ・パ両リーグで日本一を達成。指導者としての手腕が高く評価された。92年、野球殿堂入り。『動じない。』(王貞治氏・藤平信一氏との共著)、『巨人への遺言』『中村天風 悲運に心悩ますな』『日本野球よ、それは間違っている!』『言わなきゃいけないプロ野球の大問題』(すべて幻冬舎)など著書多数。新刊『プロ野球激闘史』(幻冬舎)が好評発売中。

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