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日本野球よ、それは間違っている!

2019.05.11 更新

巨人の4番は阿部に任せろ広岡達朗

令和の時代を迎えて、セ・リーグが混戦を続けている。

そんななかで気になるのは、巨人の目まぐるしい打順変更である。巨人が1番・坂本勇、2番・丸の打順変更を断行したのは4月16日の広島戦だった。

今季は(1)吉川尚、(2)坂本、(3)丸、(4)岡本で開幕を迎えたが、吉川が腰痛で4月14日に戦列を離れると、突然打順を組み替えたのだ。

原監督は「やっぱりフロントページだよ、大事な」と語り、「切磋琢磨(せっさたくま)しながら近い領域でやっている。それをうまく他の選手に伝えてくれている」と、サカマルコンビを崩さずに頭に据えた理由を説明した。その結果、4番に岡本を据えたまま、3番と5番はビヤヌエバやゲレーロ、陽、亀井らを調子次第でやりくりしてきた。

坂本・丸の1、2番は大リーグの猿まねだ

サカマルコンビの1、2番が象徴しているように、巨人は誰がどこに座ろうが、他チームや外国から金とネームバリューで集めた“オールスター打線”だから、作戦も何もない。4番バッターがズラリと並んでいるようなもので、ベンチは楽なものだ。しかし野球の本質として、こんな打順とチーム編成は間違っている。

たしかに5月10日現在のチーム打率はリーグのトップクラスだが、打撃は水物である。主力打者や全体の調子が落ちたときに得点をもぎ取るには、1、2番がなんとか出塁して打力のあるクリンナップに回さなければならない。

だから1、2番は選球眼がよく、打てないときでもファウルで粘って相手投手に1球でも多く投げさせ、バントもできる細かい技が必要になる。もちろん、出塁したら盗塁でチャンスを広げる走力も求められる。野球は1、2番にそういう役目をこなせる選手を置くほうが効率がいいし、相手にプレッシャーをかけることができる。

ところが最近の日本は、1、2番に長打力のあるパワーヒッターを置いてクリンナップにつなぐ大リーグのまねをしている。

しかし、選手の30%近くを中南米出身者が占めるメジャーは、打順に関係なく、当たれば誰でもホームランが打てる体とパワーを持っているし、ファンもホームランを喜び尊敬する国である。身体能力に劣る日本人が、同じようにパワーヒッターをそろえて空中戦で勝負する必要はない。日本は100年の歴史がはぐくんだ、日本人の体にふさわしい野球を追求すればいいのだ。

4月21日に首位に浮上したものの苦戦が続く原巨人も、5月4日の広島戦からようやく気づいたように2番に小技ができる選手を入れて丸を3番に戻した。その後も打順は猫の目のように変わっているが、5年ぶりのリーグ優勝を目指すなら日替わりの思いつきではなく、長いペナントレースを見据えて腰を据えた野球を続けることだ。

岡本は5番か6番でのびのび打たせろ

打順といえば、4番の岡本も5番か6番でのびのびと打たせたほうがいい。私は岡本が初めて巨人の4番として3割・30本塁打・100打点を達成した昨年から「そのほうがヒットもホームランも、もっと増える」といい続けている。

理由の一つは「4番の資質」である。私にいわせれば、4番はベテランで、相手に睨(にら)みがきく選手であるべきだ。

昔はどのチームにも、そんな4番打者がいた。

たとえば私が巨人の新人ショートだったころ、4番の川上哲治さんは試合前、打撃練習で納得がいくまで打った。練習時間の7割ぐらいを独り占めしたので、最後の私が打つ時間はほとんどなかった。

またスランプになると、若い投手を2、3人連れて多摩川の巨人球場(当時)に行き、「ボールが止まって見える」まで打ち続けた。

こんなこともあった。夏の遠征先で夕食のとき、あまりの暑さに川上さんが「ビールを1本」と仲居さんに頼むと、若い選手が便乗して「俺にも1本」と声をかけた。このとき、上座の川上さんが声のほうをジロッとにらむと、その選手は「俺はいいや」と声を落としてキャンセルした。

川上さんはそれほど4番としての責任感が強く、威厳もあった。

私が「岡本に4番はまだ早い」と思うのは、出塁すると相手チームの先輩一塁手に頭を下げて挨拶するところだ。これでは打率がよくても4番としての風格がない。プロ5年目で22歳の岡本は昨年りっぱな成績を収めたが、今季は5月10日現在、ホームランこそ7本打っているものの打率は2割4分台と低迷している。

これは2年目のスランプで、原巨人の主砲としてプレッシャーに苦しんでいるのではないか。そのうち調子も上がるだろうが、近い将来、巨人再興の主役として威厳と風格のある4番になるためにも、いまは5番か6番で大きく伸ばしたほうがいい。

阿部に4番が務まらなければ引退させればいい

では誰が4番を打つのかというと、阿部がいるではないか。

たしかに阿部は40歳になった。2016年を最後に打率は3割を切り続け、出場試合も減っている。年俸も2014年の6億円から今季は1億6000万円(推定)まで落ち込み、昨年からはもっぱら代打生活だ。

しかし打つことでは一つの形を持っているし、勝負強さと長打力では実績がある。今季は志願して一塁から捕手に登録を変更したが、一塁手として常時出場させるべきだ。いくら実績と人気があるといっても、年俸1億6000万円の代打は許されない。

今季の巨人を見ても、岡本、ビヤヌエバ、ゲレーロ、陽らのクリンナップは打率2割5分にも届いていない。

それなら仮に2割2、3分でも、阿部に4番を任せればいい。それでも巨人の4番が務まらなければ引退させればいい。そして一塁と三塁を掛け持ちしている岡本をサードに定着させれば、ミスター長嶋の後継者として大型三塁手に育てあげることができるし、本人にも真の4番打者としての責任感が生まれるだろう。

責任感で、人は変わる。

*   *   *

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広岡達朗

1932年、広島県呉市生まれ。早稲田大学教育学部卒業。学生野球全盛時代に早大の名ショートとして活躍。54年に巨人に入団、1年目から正遊撃手を務め、打率.314で新人王とベストナインに輝いた。引退後は評論家活動を経て、広島とヤクルトでコーチを務めた。監督としてヤクルトと西武で日本シリーズに優勝し、セ・パ両リーグで日本一を達成。指導者としての手腕が高く評価された。92年に野球殿堂入り。『動じない。』(王貞治氏・藤平信一氏との共著、幻冬舎)、『巨人への遺言』『中村天風 悲運に心悩ますな』『日本野球よ、それは間違っている!』(すべて幻冬舎)など著書多数。新刊『言わなきゃいけないプロ野球の大問題 巨人はなぜ勝てなくなったのか?』(幻冬舎)が発売中。

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