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本屋の時間

2017.11.01 公開 ツイート

第23回

『365日のほん』が発売になります(1)弊社で辻山さんの本を作らせていただけませんでしょうか! 辻山良雄

写真は束見本(実際の製本時と同じ紙を使った見本)に、カバーと帯の試し刷りを巻いて作った『365日のほん』です。

 どのような本でも、それを本というかたちで世に出したいという人がいなければ、その本は生まれてきません。『365日のほん』の担当編集である河出書房新社の坂上陽子さんは、それ以前にもTitleにお客さまとして何度か来店したことがありました。ある日の開店早々、坂上さんは私の書いた『本屋、はじめました』を買って帰りましたが、その夜パソコンの画面からふと顔を上げると、朝に会ったはずの坂上さんが、なぜだかまたそこにいました。

「辻山さん。本、読み終わりました!すごく面白かったです‼」その本は平易に書いたので、一気に読んだという感想はツイッターなどでもよく目にしましたが、面と向かってわざわざそれを伝えにきた人は初めてです。そうした“勢い”を感じる反応は、書き手からすれば嬉しくて励みになるものです。

「この『2016年の毎日のほん』もとてもよかったです!辻山さんの本の紹介は毎日WEBで見ていますが、こうして紙になるとまた違う説得力があるなと思って……」

『2016年の毎日のほん』(『本屋、はじめました』のTitle購入特典として差し上げていた冊子。2016年1年間の「毎日のほん」をまとめたもの)

「ああ、ありがとうございます」

「それで思ったのですが、これまでにないようなブックガイドがあれば面白いと思います。一つ一つはどこからでも読めるような短い本の紹介ですが、全体を通してみれば一つの大きな流れになっている、読みものとしても読めるような本で……」

 聞きながら「えっと、それは書けということなのでしょうか。一冊書き終って、ほっとしているのですけど……」と、うっすら思っているとダメ押しがやってきました。

「弊社で辻山さんの本を作らせて頂けませんでしょうか!」その声は、静かで狭い店内によく響いていました。

 実はWEBで更新している「毎日のほん」をまとめたいという依頼はそれまでも受けたことがありましたが、本にするには量が足りないと思っていました。しかしこの依頼には、面白い本が作れそうだという予感があったのと、面と向かってストレートに本の感想を言われることでよい気持ちになっていたのだと思います。「〈毎日のほん〉とは別なものを書くことで、とりあえず考えてみます」と、何となく押し切られたような感じになりました。このことが『365日のほん』の最初の一歩であり、そもそもの志でもありました。
 

*今月の本屋の時間は「特別編」として(?)『365日のほん』の舞台裏を4回に渡り追いかけます(毎週水曜日更新予定)。次回は8日更新。どのように『365日のほん』の文章を書いたかについて記しました。一冊の本がどのように出来ていくかをお楽しみください。

 

今回のおすすめ本

 辻山良雄『365日のほん』(河出書房新社)

 全国の書店には11月23日以降に並びはじめますが、TitleのWEBSHOPでもご予約を承っております。ご予約、ご購入のお客さまには特典として「四季のカード」を差し上げます(4枚1セット。1枚はシークレットとして、ある写真家の作品が使われております)。

 

◯連載「本屋の時間」は単行本でもお楽しみいただけます

連載「本屋の時間」に大きく手を加え、再構成したエッセイ集『小さな声、光る棚 新刊書店Titleの日常』は、引き続き絶賛発売中。店が開店して5年のあいだ、その場に立ち会い考えた定点観測的エッセイ。お求めは全国の書店にて。Title WEBSHOPでもどうぞ。

齋藤陽道『齋藤陽道と歩く。荻窪Titleの三日間』

辻山良雄さんの著書『小さな声、光る棚 新刊書店Titleの日常』のために、写真家・齋藤陽道さんが三日間にわたり撮り下ろした“荻窪写真”。本書に掲載しきれなかった未収録作品510枚が今回、待望の写真集になりました。

 

○2024年4月12日(金)~ 2024年5月6日(月)Title2階ギャラリー

『彼女たちの戦争 嵐の中のささやきよ!』小林エリカ原画展

科学者、詩人、活動家、作家、スパイ、彫刻家etc.「歴史上」おおく不当に不遇であった彼女たちの横顔(プロフィール)を拾い上げ、未来へとつないでいく、やさしくたけだけしい闘いの記録、『彼女たちの戦争 嵐の中のささやきよ!』が筑摩書房より刊行されました。同書の刊行を記念して、原画展を開催。本に描かれましたたリーゼ・マイトナー、長谷川テル、ミレヴァ・マリッチ、ラジウム・ガールズ、エミリー・デイヴィソンの葬列を組む女たちの肖像画をはじめ、エミリー・ディキンスンの庭の植物ドローイングなど、原画を展示・販売いたします。
 

 

【書評】New!!

『涙にも国籍はあるのでしょうか―津波で亡くなった外国人をたどって―』(新潮社)[評]辻山良雄
ーー震災で3人の子供を失い、絶望した男性の心を救った米国人女性の遺志 津波で亡くなった外国人と日本人の絆を取材した一冊
 

【お知らせ】New!!

「読むことと〈わたし〉」マイスキュー 

店主・辻山の新連載が新たにスタート!! 本、そして読書という行為を通して自分を問い直す──いくつになっても自分をアップデートしていける手段としての「読書」を掘り下げる企画です。三ヶ月に1回更新。
 

NHKラジオ第1で放送中の「ラジオ深夜便」にて毎月本を紹介します。

毎月第三日曜日、23時8分頃から約1時間、店主・辻山が毎月3冊、紹介します。コーナータイトルは「本の国から」。4月16日(日)から待望のスタート。1週間の聴き逃し配信もございますので、ぜひお聞きくださいませ。
 

黒鳥社の本屋探訪シリーズ <第7回>
柴崎友香さんと荻窪の本屋Titleへ
おしゃべり編  / お買いもの編
 

◯【店主・辻山による<日本の「地の塩」を巡る旅>書籍化決定!!】

スタジオジブリの小冊子『熱風』2024年3月号

『熱風』(毎月10日頃発売)にてスタートした「日本の「地の塩」をめぐる旅」が無事終了。Title店主・辻山が日本各地の本屋を訪ね、生き方や仕事に対する考え方をインタビューした旅の記録が、5月末頃の予定で単行本化されます。発売までどうぞお楽しみに。

関連書籍

辻山良雄『小さな声、光る棚 新刊書店Titleの日常』

まともに思えることだけやればいい。 荻窪の書店店主が考えた、よく働き、よく生きること。 「一冊ずつ手がかけられた書棚には光が宿る。 それは本に託した、われわれ自身の小さな声だ――」 本を媒介とし、私たちがよりよい世界に向かうには、その可能性とは。 効率、拡大、利便性……いまだ高速回転し続ける世界へ響く抵抗宣言エッセイ。

齋藤陽道『齋藤陽道と歩く。荻窪Titleの三日間』

新刊書店Titleのある東京荻窪。「ある日のTitleまわりをイメージしながら撮影していただくといいかもしれません」。店主辻山のひと言から『小さな声、光る棚』のために撮影された510枚。齋藤陽道が見た街の息づかい、光、時間のすべてが体感できる電子写真集。

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本屋の時間

東京・荻窪にある新刊書店「Title(タイトル)」店主の日々。好きな本のこと、本屋について、お店で起こった様々な出来事などを綴ります。「本屋」という、国境も時空も自由に超えられるものたちが集まる空間から見えるものとは。

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辻山良雄

Title店主。神戸生まれ。書店勤務ののち独立し、2016年1月荻窪に本屋とカフェとギャラリーの店 「Title」を開く。書評やブックセレクションの仕事も行う。著作に『本屋、はじめました』(苦楽堂・ちくま文庫)、『365日のほん』(河出書房新社)、『小さな声、光る棚』(幻冬舎)、画家のnakabanとの共著に『ことばの生まれる景色』(ナナロク社)がある。

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