
仙台にはこれまで、三度訪れたことがある。最初は震災前の二〇〇八年に当時勤めていた会社の研修で、あとの二回は震災後の二〇一三年と一四年にそれぞれ。特に震災で区切る必要はないし、それは住んでいる人にとっても迷惑なことかもしれないが、あの街に暮らす友人には東日本大震災をきっかけに知り合った人もいて、どうしてもそのように区切って考えざるをえない。
二〇一三年六月、その夜は仙台の出版社・荒蝦夷(あらえみし)の土方正志さんと千葉由香さんの二人に、地元の居酒屋を案内いただいた。二軒目の立ち飲み屋にいたときに、どういうきっかけでそうなったのかは覚えていないが「ではこれから、閖上(ゆりあげ)に行きましょう」ということになった(恐らくわたしがまだ行ったことがないと言ったからだろう)。太平洋沿岸の閖上地区は漁港として栄え、住宅も立ち並ぶ地域だったが、あの日9メートルを超える津波により、町のほとんどが壊滅的な被害を受けた。
夜の十二時前、仙台の中心部でタクシーを拾い(運転手も「これからですか?」と怪訝そうな声で答えた)、三十分ほど走ってここだと降ろされたところは、何もない、ただ地面が広がるだけの場所であった。
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◯連載「本屋の時間」は単行本でもお楽しみいただけます

連載「本屋の時間」に大きく手を加え、再構成したエッセイ集『小さな声、光る棚 新刊書店Titleの日常』は、引き続き絶賛発売中。店が開店して5年のあいだ、その場に立ち会い考えた定点観測的エッセイ。お求めは全国の書店にて。Title WEBS
◯2026年6月5日(金)~ 2026年6月23日(火) 本屋Title2階ギャラリー
伊津野果地 展「GET LOOSE」
髪を切ったラプンツェルと長靴をぬいだ猫などのこと
伊津野果地(いづのかじ)さんの新刊『GET LOOSE』(URESICA ・6月刊)発売にあわせ、原画と関連作品などを展示、販売いたします。
ここ数年、現在地点を相対化する存在としての「ゴースト」や「脱走」「逃走」などをテーマに作品制作を続けてきた伊津野さん。本作でも誰もがよく知る物語から、登場人物たちがこっそりと「get loose(脱出)」する様子が描かれます。
本展では新刊の原画とともに、「get loose」に関連する絵画・彫刻作品も展示販売します。かわいらしくて洒脱なタッチの中に、エスプリとユーモアがピリッと効いた、自由な世界をお楽しみください。
◯2026年6月26日(金)~ 2026年7月13日(月) 本屋Title2階ギャラリー
坂口恭平さんがはじめて描いた漫画『赤松』(palmbooks)の原画展を開催します。
鉛筆と水彩で描かれた漫画は、さながら一枚の絵の連なりからなるようで、自由なコマ割りのなかに広がる、みずみずしくも深遠なこの世界をぜひ原画でじかに味わっていただけたら、うれしいです。
◯【お知らせ】
旅のことば|〈わたし〉になるための読書(9)
「MySCUE(マイスキュー)」 辻山良雄
今回は、記憶のポケットに残る、たよりなくも美しい「旅のことば」をたどってゆきます。素敵な2冊をご紹介。
NHKラジオ第1で放送中の「ラジオ深夜便」にて本を紹介しています。
偶数月の第四土曜日、23時8分頃から約2時間、店主・辻山が出演しています。コーナータイトルは「本の国から」。ミニコーナーが二つとおすすめ新刊4冊。1週間の聴き逃し配信もございますので、ぜひお聞きくださいませ。
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本屋の時間

東京・荻窪にある新刊書店「Title(タイトル)」店主の日々。好きな本のこと、本屋について、お店で起こった様々な出来事などを綴ります。「本屋」という、国境も時空も自由に超えられるものたちが集まる空間から見えるものとは。

『赤松』刊行記念 坂口恭平原画展











