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日本野球よ、それは間違っている!

2019.12.14 更新 ツイート

西武・松坂の不可解な“縁故採用”広岡達朗

どこに行くのかと思っていたら、松坂大輔(39)が14年ぶりに古巣の西武に復帰した。

彼が横浜高校から西武に入団したのは、私が西武の監督を辞めてから14年後のことだ。1年目に16勝を挙げて新人王になってから、3年連続で最多勝のタイトルを獲得した。2007年に米大リーグに移籍するまでの9年間に108勝を挙げた、すばらしい投手だった。

名前と過去の実績だけで12億円をドブに捨てたソフトバンク

 

大リーグでの8年間にも56勝したが、右ヒジのトミー・ジョン手術(側副靭帯再建手術)を受けてからはマイナー生活が長かった。私は松坂が手術を受けた時点で投手生命は終わったと思っていたが、2014年オフにソフトバンクが「3年総額12億円+出来高払い」(推定、以下同)の大甘契約で迎えたときは、あきれてものがいえなかった。

私は当時から投手の手術には反対で、この連載や著書で「利き腕を手術した投手は完全復活できない。指導者になって、後輩たちにケガをしないためにはどうしたらいいかを教えてやれ」と再三書いてきた。そして同時に「プロ野球界のどんぶり勘定契約」を批判し、球団経営の改善、改革を訴えた。

ところが2015年オフにもソフトバンクは、やはりアメリカでトミー・ジョン手術を受けて帰国した左腕・和田毅と、松坂と同じ条件で複数年契約を交わした。

その結果、2人はどうなったか。松坂はソフトバンクで3年間に1イニング投げただけ。和田も、1年目は15勝したが、その後は肩の故障で2年目に4勝、3年目の昨年は二軍生活だった。

「怪物」の幻想からさめない渡辺GMの温情人事

昨季、西武の先輩・森繁和監督に拾われて中日に移った松坂は6勝して年俸が1500万円から8000万円に上がったが、今季は肩痛で0勝。松坂は新たな環境を求めて退団し、古巣・西武で再スタートを切ることになった。

年俸3000万円、1年契約で入団を発表した西武の渡辺久信GM(ゼネラルマネジャー)は「若い頃と投球スタイルは変わっているが、ボールを動かす投手で、パ・リーグにはあまりいないし、戦力になってくれる。若い選手に手本を見せてくれとは言わない。現役選手として勝負してほしい」と語った(SANSPO.COM 2019.12.3)。

選手時代の渡辺が西武からヤクルトに移った翌年、西武に入団した新人が松坂だった。今回の松坂復帰も、グッズ販売による経済効果と、渡辺GMが後輩の最後の花道を作る一石二鳥の“縁故採用”だったのだろう。そうでなければ、パ・リーグV2の西武がいまの松坂に手を出すはずがない。

渡辺は私が西武の監督時代にドラフト指名した投手だが、「(松坂は)戦力になってくれる」というコメントが本音なら、渡辺は自然の法則を知らない。松坂はたしかに優れた能力のある投手だったが、人間は歳とともに力が落ちる。

中日時代の松坂を見ても、勝てる相手に変化球をフラフラ投げていただけで、リーグV3をめざす西武の戦力になるとは思えない。そんな投手を補強するくらいなら、西武のコーチは若い有能な投手の指導にもっとエネルギーを使えばいい。

いまさら松坂に期待するGMの発言は、西武のコーチに教える能力がないことを証明している。そしていまの松坂に手を出すのは、それだけ西武の投手力が弱いということでもある。

西武は過去の松坂の幻想に頼るより、生え抜きの若い投手を新戦力に育てあげることにエネルギーを注ぐべきだ。

最低条件や罰則規定を盛り込んだ契約を

最後に松坂の契約条件だが、私にいわせれば年俸3000万円でも高すぎる。ソフトバンクが故障や手術でボロボロの右腕と3年総額12億円で契約したのが間違いで、いまの松坂は一軍の最低年俸である1600万円でもいいくらいだ。

ただ、「登板回数や勝ち星、防御率の最低ラインを定めたうえで、この基本条件を上回れば満額支給し、自己責任のケガや自己都合で休んだり、成績が最低条件を下回ったら減俸」という罰則規定を盛り込んだ契約なら、3000万円でも納得できる。

これは松坂に限らず、続出している億単位の高額年俸契約にも通じるが、プロ野球は情やどんぶり勘定の契約をやめるべきだ。短い現役時代に人生をかける選手のためにも、能力や成績の中身を正当に評価する、根拠のある契約でなければならない。

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広岡達朗

1932年、広島県呉市生まれ。早稲田大学教育学部卒業。学生野球全盛時代に早大の名ショートとして活躍。54年に巨人に入団、1年目から正遊撃手を務め、打率.314で新人王とベストナインに輝いた。引退後は評論家活動を経て、広島とヤクルトでコーチを務めた。監督としてヤクルトと西武で日本シリーズに優勝し、セ・パ両リーグで日本一を達成。指導者としての手腕が高く評価された。92年に野球殿堂入り。『動じない。』(王貞治氏・藤平信一氏との共著、幻冬舎)、『巨人への遺言』『中村天風 悲運に心悩ますな』『日本野球よ、それは間違っている!』(すべて幻冬舎)など著書多数。新刊『言わなきゃいけないプロ野球の大問題 巨人はなぜ勝てなくなったのか?』(幻冬舎)が発売中。

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