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日本野球よ、それは間違っている!

2019.11.02 更新 ツイート

ソフトバンク3連覇、真のMVPは甲斐拓也だ広岡達朗

日本シリーズは巨人の4連敗であっけなく終わった。MVPは4試合で3本のホームランを飛ばしたソフトバンクのグラシアルだったが、真のMVPは捕手として巨人の生命線である坂本勇人と丸佳浩を抑え込んだ甲斐拓也だ。

 

この超短期決戦で、巨人の2番・坂本と3番・丸はともに打率.077で、ホームランは1本もなかった。しかしあらためていうまでもなく、原巨人が5年ぶりにリーグ優勝し、6年ぶり35度目の日本シリーズに進出できたのは、このサカマルが打線を牽引したからだ。

ところが日本シリーズでは、ソフトバンクのバッテリーがこの2人を徹底的に抑え込み、分断した。なかでも見事だったのは、捕手の甲斐が坂本の得意とする内角を攻め抜き、エース・千賀をはじめ投手陣がそのサインに応えたことだ。だから私は、司令塔の甲斐に、昨年に続いて2年連続のMVPを与えたい。

工藤ソフトバンクは真のV3ではない

しかしソフトバンクは、真のV3ではない。2017年にリーグ優勝と日本シリーズ優勝を勝ち取ったあと、2年連続で辻監督の西武にリーグ優勝を許し、CS(クライマックスシリーズ)と日本シリーズを勝ち抜いて日本一になった。

いつもいうように、私は長いペナントレースを勝ち抜いたチームがリーグ代表であり、“敗者復活戦”のCSには反対してきた。だから、1年前にもこの連載で「工藤・ソフトバンクは来シーズン、『パ・リーグの優勝チーム』として真の日本一をめざせ!」と書いている。

だが、私が西武監督時代にルーキーだった工藤は、今年も私の期待に応えられなかった。優れた投手陣を育成し、選手層の厚いチームを作り上げた球団、監督の努力と成果は評価するが、短期決戦に強いだけの日本一は認めない。

やるべきことをやらなかった巨人

そのソフトバンクに1勝もできないまま完敗した巨人には、もっと大きな問題があった。一言でいえば、「それぞれが、それぞれのやるべきことをやれ」ということだ。チームの編成をつかさどるフロントは、今年も年中行事のように巨額の投資をして内外の選手を補強した。FA(フリーエージェント)の丸と炭谷銀仁朗捕手は働いたが、現役大リーガーだった内野手・ビヤヌエバや投手のクックはいつのまにか二軍落ちして、解雇されるという。

マリナーズから復帰した岩隈久志投手は一軍登板がなかったし、オリックスから自由契約で獲得した中島宏之内野手は代打で三振や凡退を繰り返した。総額約50億円といわれる巨額補強の責任は誰がとるのか。

「勝敗の70%以上を占める」といわれる投手陣では、絶対エースの菅野智之が腰痛で再三戦列を離脱し、日本シリーズの開幕先発にも間に合わなかった。そのアクシデントを補うように新人左腕の高橋優貴を先発ローテーションに入れたが5勝7敗で終わり、日本シリーズでは新人・戸郷翔征を第3戦で登板させたが3安打2四球4失点で炎上した。

この2人の起用は新人育成というより、巨人投手陣の惨状を露呈したものだ。長い間テレビで芸能活動をしていた宮本和知を投手総合コーチに起用した原辰徳監督の任命責任は大きい。

原の“便利屋采配”でエラー続出

また、大事な局面で岡本和真がサードで、山本泰寛がサードとセカンドで勝敗に直結するエラーをしたのも、シーズンを通じて選手のポジションを便利屋のようにくるくる変え、レギュラーポジションを固定させなかった原采配の責任だ。

私は結果論をいっているのではない。岡本は第4戦の7回にサードゴロを安易な逆シングルでエラーしたあと、走者一、二塁で送りバントとわかっていながらスタートが遅れて内野安打にした。三塁のベースカバーが気になったためだが、少年野球でもやらないようなこのミスは、シーズンを通して原が岡本の4番育成にこだわった反面、長嶋二世として三塁に定着させる指導をしなかった結果である。

巨人再建は「育てて勝つ」基本から

つまり巨人の敗因は、フロント、監督・コーチ、そして選手がそれぞれの「やるべきこと」をやらなかったからだ。

初代オーナーの正力松太郎さんは、リーグ優勝しても日本シリーズで負けたら「よくやった」とはいわなかった。巨人が創立以来の絶対条件だった日本一を取り戻すためには、それぞれが「やるべきことをやる」しかない。

まずはフロントとは何か、監督とは何か、コーチとは何かを根本から考え直すこと。たとえばフロントも、これまでのように監督の希望通りに莫大な資金を使って他チームの有力選手を集めるだけでなく、巨人の選手を育てて勝つことを再建の基本にすべきだ。

そして現場は、巨人の指導と練習は正しいのか再検証し、そのうえで選手に正しい基本を教えなければならない。今後も「投手力で負けたから有力な投手がほしい」とカネで選手を集めるようでは、巨人の再建はできないだろう。

 

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広岡達朗

1932年、広島県呉市生まれ。早稲田大学教育学部卒業。学生野球全盛時代に早大の名ショートとして活躍。54年に巨人に入団、1年目から正遊撃手を務め、打率.314で新人王とベストナインに輝いた。引退後は評論家活動を経て、広島とヤクルトでコーチを務めた。監督としてヤクルトと西武で日本シリーズに優勝し、セ・パ両リーグで日本一を達成。指導者としての手腕が高く評価された。92年に野球殿堂入り。『動じない。』(王貞治氏・藤平信一氏との共著、幻冬舎)、『巨人への遺言』『中村天風 悲運に心悩ますな』『日本野球よ、それは間違っている!』(すべて幻冬舎)など著書多数。新刊『言わなきゃいけないプロ野球の大問題 巨人はなぜ勝てなくなったのか?』(幻冬舎)が発売中。

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