
作家、そして生活史研究家として精力的に活動している阿古真理さん。しかし、30代半ばにうつ病を発症しています。それまでは料理を、特に苦もなく行っていたにも関わらず、まったくできなくなる事態に。料理は家事の中でも特にクリエイティブな作業。できなくなってはじめて、食材をそろえたり調理の段取りを整えたり、食材の使い回しを考えたりといったことが、とても高度な技能を要するという点に気づいたといいます。
闘病生活を通じて感じた料理の特殊性、そして料理によってうつ病から少しずつ脱却していく様を描いた実体験ノンフィクション連載、スタートです。大反響の第1回もあわせてお楽しみください。
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自慢ではないが、私は食いしん坊である。子どもの頃は、食べることが何よりの楽しみだったし、本やアニメ番組は、いつまでも食べるシーンばかり覚えている。
よく知られているアニメの場面と言えば、『アルプスの少女ハイジ』の、おじいさんが火に当ててとろけさせるチーズのかかったパン、ペーターのおばあさんにハイジが食べさせたがった白パン。『はじめ人間ギャートルズ』に、しょっちゅう出てくるマンモスの肉などがある。昭和の子どもで、これらが好きだった人はたくさんいる。でも私の記憶に残る食べものの場面は、ほかにもたくさんある。
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料理ができない!うつ病が教えてくれた家事の意味

うつ病になったら、料理がまったく出来なくなってしまったー。食をテーマに執筆活動を続ける著者が、闘病生活を経て感じた「料理」の大変さと特異性、そして「料理」によって心が救われていく過程を描いた実体験ノンフィクション。
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