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「令和」の心がわかる万葉集のことば

2019.04.28 公開 ツイート

東風――「あゆのかぜ」は奈良時代の越中の方言 上野誠

東風(あゆのかぜ)

「あゆのかぜ」などという言葉を日常会話で使うことはまずありません。ですから、一生使うこともないと思いますが、使うことがなくても、知っていると嬉しくなる言葉です。おそらく奈良時代の越中、現在の富山県で使われていた方言です。この地に大伴家持(おおとものやかもち)が赴任していたところから、家持の歌に五例残っています。春先に北東、北西から吹く東風のことです。春をつげる風は、「こち」と呼ぶことが一般的でしたから、家持は越中で「あゆ」という言葉を知って、この詞(ことば)を歌に入れたのだと思います。

(写真:iStock.com/kukai)

風というものは、季節の変わり目を知らせる前ぶれとなるものです。日中はまだ暑いのに朝夕の風がひんやりとしてきたら、もう秋は近いのです。また、東から強い風が吹いてきたら、もう春の到来は近いのです。私が社長なら新入社員に対してこんな訓示をします。

「春風を受けて諸君は今、入社式にのぞんでいる。春風は、古典では“こち”とか“あゆ”とか呼ばれるが、諸君も常に世の中の風を感じる感性を持ってほしい。」

風を感じる気持ちを大切にしたいものですね。

上野誠『「令和」の心がわかる万葉集のことば』

万葉集の巻五から採られた新元号の「令和」。そこに込められた万葉ことばの心、おだやかな日を寿(ことほ)ぐ1300年前の先祖たちの思い……。8世紀のことばの文化財・万葉集に使われている「万葉ことば」(古き日本語)を学び、心を磨く日本語練習帳。

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「令和」の心がわかる万葉集のことば

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上野誠

 1960年、福岡県生まれ。國學院大學大学院文学研究科博士課程後期単位取得満期退学。博士(文学)。現在、奈良大学文学部教授(国文学科)。国際日本文化研究センター研究部客員教授。万葉文化論を専攻。第12回日本民俗学会研究奨励賞、第15回上代文学会賞、第7回角川財団文学賞受賞。『万葉びとの宴』(講談社)、『日本人にとって聖なるものとは何か』(中央公論新社)など、著書多数。近年執筆したオペラや小説も好評を博している。

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