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「令和」の心がわかる万葉集のことば

2019.04.21 更新

さきく――万葉集の「まさきくあれば」は「幸いであれば」上野誠

さきく

「幸い」という言葉は残っていますが、「さきく」という言葉は、現在では使われなくなってしまいました。この「さきく」の「さき」に、「ま」という言葉をつけたのが「まさきく」です。したがって、現代語で「幸いであれば」というべきところを、万葉集では、「まさきくあれば」というのです。

(写真:iStock.com/Irosebrugh)

このように見てゆくと「さき」という言葉に幸いという意味があることがわかるでしょう。「さき」は、現在の「さち」すなわち「幸(こう)」だと思われます。

したがって、「ここにさちあれ」といえばそれは、何かを祝福する意味合いを持つのです。この言いまわしは、案外応用範囲が広いので便利です。たとえば、結婚式でも、新築祝いでも、入学式でも、卒業式でも使えます。古典の言葉の「さきくあれ」「まさきくあれ」も、同じです。私なら新築祝いのパーティーの席で、こんなあいさつをするでしょう。

「新しい家ができ、ここにさらなる幸福な生活がはじまります。ここにさちあれ、さきくあれ、まさきくあれと祝福したいと思います。」

上野誠『「令和」の心がわかる万葉集のことば』

万葉集の巻五から採られた新元号の「令和」。そこに込められた万葉ことばの心、おだやかな日を寿(ことほ)ぐ1300年前の先祖たちの思い……。8世紀のことばの文化財・万葉集に使われている「万葉ことば」(古き日本語)を学び、心を磨く日本語練習帳。

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上野誠

 1960年、福岡県生まれ。國學院大學大学院文学研究科博士課程後期単位取得満期退学。博士(文学)。現在、奈良大学文学部教授(国文学科)。国際日本文化研究センター研究部客員教授。万葉文化論を専攻。第12回日本民俗学会研究奨励賞、第15回上代文学会賞、第7回角川財団文学賞受賞。『万葉びとの宴』(講談社)、『日本人にとって聖なるものとは何か』(中央公論新社)など、著書多数。近年執筆したオペラや小説も好評を博している。

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