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「令和」の心がわかる万葉集のことば

2019.05.05 公開 ツイート

あをによし――「〜よし」はめずらしいことを褒める言葉  上野誠

あをによし

「~よし」という言葉はめずらしいことを褒める時に使う言葉です。麻もすばらしいなら「麻もよし」。玉藻がすばらしいのなら「玉藻よし」ということになります。とすると「あをによし」の場合は、「あをに」がすばらしいということになります。

では、「あをに」とは何かというと、青い土のことをいいます。よく「青」と「朱(に)」で、青瓦と朱塗りの柱のことだと解釈している人がいますが、俗説です。おそらく、奈良のどこかで取れる土が青色彩色に使われる土として有名だったのでしょう。

(写真:iStock.com/SuS_878)

土が青といわれると不審に思われる人も多いと思いますが、灰色の土も広くいえば青の範疇(はんちゅう)に入ります。このために、「青土(あおに)よし」は、奈良にかかる枕詞になったのです。

枕詞というと難しいのですが、一つの言葉を引き出すアイコンのようなものです。微笑みの国タイ、灼熱の国インド、フラメンコの国スペインというのと同じです。つまり、一つのイメージなのです。ところが、スペインからやってきた留学生に、「君の国はフラメンコの国だね」といったら、フラメンコなんて今やっている人はほとんどいませんよ、と笑われてしまいました。それは日本人が作り出したイメージのようです。ですから、日本人のイメージと、スペイン人の実態とは異なっているようです。

私は、こうあいさつすることがあります。

「あをによし奈良からやってきた上野誠でございます。本日はよろしくお願いします。」

これも一つの使い方だと思います。

 

(三二八)

あをによし 奈良(なら)の都は

咲く花の 薫(にほ)ふがごとく

今盛りなり

 

あをによし 奈良(なら)の都は

咲く花が 照り輝くように

今が真っ盛り──

上野誠『「令和」の心がわかる万葉集のことば』

万葉集の巻五から採られた新元号の「令和」。そこに込められた万葉ことばの心、おだやかな日を寿(ことほ)ぐ1300年前の先祖たちの思い……。8世紀のことばの文化財・万葉集に使われている「万葉ことば」(古き日本語)を学び、心を磨く日本語練習帳。

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「令和」の心がわかる万葉集のことば

万葉集の巻五から採られた新元号の「令和」。そこに込められた万葉ことばの心、おだやかな日を寿(ことほ)ぐ1300年前の先祖たちの思い……。8世紀のことばの文化財・万葉集に使われている「万葉ことば」(古き日本語)を学び、心を磨く日本語練習帳。

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上野誠

 1960年、福岡県生まれ。國學院大學大学院文学研究科博士課程後期単位取得満期退学。博士(文学)。現在、奈良大学文学部教授(国文学科)。国際日本文化研究センター研究部客員教授。万葉文化論を専攻。第12回日本民俗学会研究奨励賞、第15回上代文学会賞、第7回角川財団文学賞受賞。『万葉びとの宴』(講談社)、『日本人にとって聖なるものとは何か』(中央公論新社)など、著書多数。近年執筆したオペラや小説も好評を博している。

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