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「令和」の心がわかる万葉集のことば

2019.05.03 公開 ポスト

かはたれ時――なぜ「白みかけた夜明け前」上野誠

かはたれ、かはたれ時

今では、小説以外で、「かはたれ時」などと使うことはなくなりました。「か」は彼のことで、「たれ」は「誰」です。ですから、人が、そこにいることはわかっているのだが、それが誰かわからないという状態をいう言葉です。したがって、夜明けのほんのり白しらみかけた時といってよいでしょう。日の出前の時間ですね。

(写真:iStock.com/kellymarken)

彼は誰か、よくわからない明るさというところから、その明るさの時間を表す言葉になっているのです。

「かはたれ」は、使用されなくなりましたが、「誰(た)そがれ」は今でも使われます。これは「誰ですか、彼は?」と聞かなくてはならないほどに、暗い状態をいいます。夕暮時のことです。

今日、私たちは、薄暗闇のなかで人を見るということが少なくなりました。それは、街灯ができたからです。しかし、それでも、暗くて誰かわからない時があります。

私なら早朝、こんなあいさつをします。

「朝が早くなったといっても、こんなかはたれ時から家の前のそうじをされるなんて、頭が下がります。」

おそらく、早朝、家の前の道を掃くような人なら、「かはたれ」といっても、わかるのではないでしょうか。

(四三八四)

暁(あか)ときの かはたれ時(どき)に

島陰(しまかぎ)を 漕(こ)ぎにし船の

たづき知らずも

 

明け方の ほの暗い時に……

島陰を 漕(こ)いで行ったあの船は

今頃いったいどうしているのやら

上野誠『「令和」の心がわかる万葉集のことば』

万葉集の巻五から採られた新元号の「令和」。そこに込められた万葉ことばの心、おだやかな日を寿(ことほ)ぐ1300年前の先祖たちの思い……。8世紀のことばの文化財・万葉集に使われている「万葉ことば」(古き日本語)を学び、心を磨く日本語練習帳。

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「令和」の心がわかる万葉集のことば

万葉集の巻五から採られた新元号の「令和」。そこに込められた万葉ことばの心、おだやかな日を寿(ことほ)ぐ1300年前の先祖たちの思い……。8世紀のことばの文化財・万葉集に使われている「万葉ことば」(古き日本語)を学び、心を磨く日本語練習帳。

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上野誠

 1960年、福岡県生まれ。國學院大學大学院文学研究科博士課程後期単位取得満期退学。博士(文学)。現在、奈良大学文学部教授(国文学科)。国際日本文化研究センター研究部客員教授。万葉文化論を専攻。第12回日本民俗学会研究奨励賞、第15回上代文学会賞、第7回角川財団文学賞受賞。『万葉びとの宴』(講談社)、『日本人にとって聖なるものとは何か』(中央公論新社)など、著書多数。近年執筆したオペラや小説も好評を博している。

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