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人生の目的

2019.03.21 更新

名声、お金、健康、自己実現…人生の目的とは?五木寛之

(写真:iStock.com/mihtiander)

『人生の目的』とは、なんという野暮なタイトルだろう。いまの言葉でいうなら、あまりにもベタ過ぎる表現である。

しかし、それがわかっていても、この本を上梓(じょうし)したときの気持ちは、これしかない、というのが実感だった。

この『人生の目的』は、かなり以前に私がまとめた本である。先日、本棚の隅すみにホコリをかぶっていたその一冊を、なにげなく手に取って読み返す機会があった。そして最初の一ページの記事の引用を読んでいるうちに急に胸が苦しくなった。

そもそも、この本を書くきっかけとなったのは、当時の新聞の片隅にのっていたその小さな記事である。それを目にしたとき、私は胸が締めつけられるような肉体的な痛みをおぼえた。こんなことがあっていいのだろうか、とも感じた。

 

最近、親に虐待(ぎゃくたい)されて亡くなった子供たちの手記や日記をしばしば目にすることがある。「ゆるしてください」という文字に心が痛む。

しかし、「ぼくはおかあさんのことをうらむ」という男の子の書き置きを読んだときの衝撃は、異様なものだった。その言葉は、いつまでたっても私の記憶から去ることはなかった。
 

〈生きるということは、どういうことなのか〉

〈人はなぜこれほど辛つらい思いをしてまで生きなければならないのか〉

 

と、いうのが私の率直な疑問である。『人生の目的』とは、一体なんだろう、とはじめて真剣に考えたのだ。

その結果は? 私にはついにその問いに答えることができなかった。今でもそうである。人生を締めくくる時期に達しても、なお確かな答えはみつからないままである。

そんななかで書かれた本に、気のきいた題名など、どうしてつけることができるだろう。

無理をして結論めいた言葉をつらねてはみたが、正直なところ「わからない」というのが本音である。しかし、私の感じている胸の痛みは、フィクションではない。団地の高所から父親と共に飛びおりた子供の言葉は、いまも固いしこりとなってそのまま残っている。

今は本棚の片隅に立てかけられている色褪あせた本だが、野暮を承知で版を改めて再刊することにした。少くともここには、私の本音が刻まれていると感じたからだ。この本に答えはない。同じ痛みを共有できる読者の存在を願いつつ、この小冊子を世に送ろうと思う。なんという野暮な題名だと笑っていただければ幸いだ。

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関連書籍

五木寛之『人生の目的』

人生に目的はあるのか?あるとしたら、それは何か。 お金も家族も健康も、支えにもなるが苦悩にもなる。人生はそもそもままならぬもの。ならば私たちは何のために生きるのか。 刊行から20年――。人々に寄り添うその深い洞察が大反響を呼んだ衝撃の人生論。 平成という時代が変わる今、再読したい心の羅針盤。大きな文字で再編集した新書オリジナル版。

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人生の目的

人生に目的はあるのか。あるとしたらそれは何か――。お金も家族も健康も、支えにもなるが苦悩にもなる。人生はそもそもままならぬもの。ならば私たちは何のために生きるのか。

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五木寛之

1932年福岡県生まれ。生後まもなく朝鮮にわたり47年引き揚げ。52年早稲田大学露文学科入学。57年中退後、PR誌編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、66年「さらばモスクワ愚連隊」で小説現代新人賞、67年「蒼ざめた馬を見よ」で直木賞、76年『青春の門 筑豊篇』ほかで吉川英治文学賞を受賞。『蓮如』『大河の一滴』『風の王国』『戒厳令の夜』など著書多数。英文版『TARIKI』は2001年度「BOOK OF THE YEAR」(スピリチュアル部門)に選ばれた。2002年に菊池寛賞を受賞。『親鸞』(2010年刊)で毎日出版文化賞を受賞。

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