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阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし

2018.07.27 公開 ポスト

IKEA放浪記【書籍発売記念リバイバル掲載】阿佐ヶ谷姉妹

この度、阿佐ヶ谷姉妹の初書籍『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』が発売になりました!本サイトの連載エッセイはもちろん、書き下ろしのエッセイと小説も加わった盛りだくさんな内容。こちらのリバイバル掲載をお楽しみ頂きつつ、ぜひ書店でお探し頂けたら幸いです。

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二人暮しで、何もかもを共有していた暮らしから一転、何もかもがない暮らしになりました。
みほさんは、何か必要なら持って行ってと言ってくれましたが、新しい部屋に見合ったものを少しずつ揃えて行きたいと思い、ほとんどのものをみほさん宅に残して、隣の部屋に移りました。

私が引越したお部屋は、小さなロフト付きタイプ。
お若い方、もしくは登山隊や消防団の方など日々昇降の訓練を積んでいらっしゃる方ならまだしも、お肌の曲がり角ならぬ、おひざの曲がり角に差しかかった私が、一日何回も十段のハシゴを使ってものを上げ下げする事は今後ますます厳しくなりそう。なので、ロフトは主に季節のものの収納場所にし、あらたな収納棚をまずは購入しようと思いました。

真っ先に頭に浮かんだのが、IKEAです。
少し前のお仕事でIKEAに伺い「姉妹が新生活を始めるとしたら」
という設定で、色んな商品を見せていただいた事がありました。
トータルコーディネートがしっかりされ、洗練と調和とお洒落が同居する様々なディスプレイを拝見し、恋愛漫画の登場人物ばりに、目がハートに。
私もいつか引越したら、IKEAの素敵インテリアに囲まれた、素敵ライフを実現してみせるわ!
そう決意して、その日はふきん五枚組セットやら、取り皿など細々したものだけ買って帰ってきたものでした。
そんな私に、時は来ました。ついにIKEAライフを迎える時が!

みほさんにも付き合ってもらい、阿佐ヶ谷から一番最寄りの立川店へ。
ビビビと来るものがあれば、即買いしちゃうんだからと鼻息荒く店内をめぐりました。

白いクロスの部屋なので、ロフト下の壁にピタッとはまるようなユニット家具希望。それも、衣装をかける部分と、収納と、テレビ台がひと続きになっているようなものがあればと探すと、ちょうど用途に合いそうなものが一つありました。

「あとはサイズが合えばよね。」とみほさんに言われて、そこではじめて、大型家具を買う時にはきちんと採寸してこなければいけない、という初歩中の初歩の事に気がつきました。エリコミステイク!
今まで、押し入れと、カラーボックスと、クリアボックスに頼りっぱなしの人生だったのが、バレバレです。

結局その日は、お目当ての家具のパンフレットだけもらい、IKEA内のカフェでみほさんとソフトクリームとホットドッグをもそもそ食べて、帰宅しました。

その後、みほさんから借りたスチール製の巻き尺でいそいそと部屋を採寸。採寸中、エアコンの電源の差込口に巻き尺が接触し、ちょっと感電しかけたりもしましたが、なんとか測り終え、数日後、二度目の立川IKEAへと向かいました。

今回私が買おうとしている家具は、パーツを購入して組み立てる、IKEAならではのシステム製品。以前いただいたパンフレットを参考に、どのパーツがいくつ必要か何度も計算して、今度こそ決めようと思っていました。

優しそうなスタッフの方に在庫確認していただくと、な、なんと棚の大元となる両サイドの柱が在庫切れ。スウェーデンから取り寄せになるが、船便になるので次いつ入荷するか分からないとの事。
夢のIKEAライフが、早速ガラガラと音を立てて崩れて行くようでした。

他店を調べてもらうと、在庫はあるようだけれど、店舗間での取り寄せは出来ないとの事。
いつ来航するか分からないスウェーデン船を待つか、在庫のあるお店に自分で行ってそちらで購入するか。その時の私にはシェイクスピアの登場人物並みの、苦渋の選択。

結局、少しでも早く夢に近づきたいと、次のお休みの日に、船橋のIKEAに行く事にしました。

某日、ディズニーランドに向かうご家族やカップルと同じ電車で、ディズニーランドへの期待に勝るとも劣らぬテンションを胸に秘めながら、船橋IKEAに乗り込みました。
アンニュイな雰囲気が、オシャレIKEAにぴったりな男性スタッフさんに、経緯を話すと、早速在庫確認。
お目当ての柱部分はありました。しかし今度は、引き出しの引き出しを支えるための部分が在庫切れ。
引き出しの引き出しを、ああ、もうっ!
前回の立川から日にちが経っていたので、不思議でも何でもない、よくある事ではあるのですが、その時の私には信じられない事でした。

ここで、一切のIKEAを断ち切って、別の家具を探す事にするか。
今までの私ならそうしたかもしれない、でも、今の私は違う、ここでIKEAと別れたら、一生オシャレな人生なんて来やしない。諦めたら負けだわ!
今、冷静にみれば、単なる頭に血の昇ったおばさんです。

結果、船橋で揃えられるだけのパーツを購入し自宅配送を依頼、足りないものを買い付けに、再び電車で立川に向かう事になりました。

三度目の来店ともなるとすべてがデジャブの様でしたが、恐怖の在庫確認タイムも今度こそクリアして、ようやく、全パーツ購入できました。

組み立ての難易度を聞いた所、二人いれば女性でも組み立てている方多いですよ、もしトライして難しければ、その時点で組み立て依頼も可能です、と聞き、組み立てサービスは頼みませんでした。
100均やスーパーではムダ遣いを平気でするくせに、こういったお金は少しでもケチりたい、小さい人間の私です。

さて、いよいよ新居に家具パーツが届き
組み立て開始です。
みほさんに協力してもらって、慣れない手つきで組み立て始めました。
すっと行けた所も勿論あるのですが、私が持っていた100均のメガネのネジなど締めるやわなドライバーセットでは、1ミリともネジが回らない所もありました。
みほさんに試してもらうも、やはり無理。
ご近所の先輩芸人、流れ星瀧上さん宅から、大きめのドライバーをお借りして再びチャレンジするも、歯が立たず。

それでも大枠ができ、立ててみようしたら、水平が取れず、バターン。ほぼバラバラに。
組み立て直すも、グラグラ、バターン。
みほさんからも「なんじゃこりゃァ」と、名優 松田優作さんばりのセリフが飛び出すほど。
何度目かでようやく形になり、いよいよ天板を取り付けようとした時。
手元が狂って天板が、私の頭にドリフのコントのようにドガーン。
みほさん、ちょっと笑ってました。
みほさんから「ネジも入らないし、グラグラするし。これはもう、諦めてすべて返品した方がいいんじなゃい?」と言われたのですが、今までのおしゃれ部屋を目指しての苦労が水の泡になるかと思うと、思い切れませんでした。

みほさんが部屋に帰って、一人になり、
ふと壁際に目をやると、途中まで組み立てられた白い棚。こんな状態でも、やはり素敵に見えるニクいやつです。
私の部屋でのオシャレライフはどだい無理なのかしら。こんな感じで、これからの人生もずっと上手くいかないんじゃないかしら。
部屋にオシャレ家具一つを設置するのに、人生全体にまで憂う事になろうとは思いませんでした。ひとり暮らしって大変です。
落ちてきていた天板をもう一度設置しようと、少し背伸びして一番上の溝へ。天板、ぐらついて顔にドガーン。
メガネが顔に埋まるかと思いました。

棚もしばらく放置の状態が続いた頃。事務所で一連の棚騒動の話をしていたら、きたろうさんのマネージャーでもあるIさんが「温泉おごってくれたら、その後、阿佐ヶ谷に見に行ってあげますよ」と。車を買ったばかりで、ドライブがてら温泉に行きたいけど、誰も行ってくれないから仲間を探していた、との事。
私達もちょうど温泉にでも行きたいと思っていたし、Iさんには私たちのライブの制作スタッフとしても随分お世話になったので、二千五百円ほどおごる事で、手を打ちました。
姉妹と、Iマネジャーと、作家のTさんとお独り様四人で山梨の日帰り温泉を満喫し、帰りに阿佐ヶ谷の我が家へ。
着いて早々に作業開始すると、不良だと思っていたネジが、スッと穴に入ったのです。私達ではビクともしなかったのに!舞台を裏側から知り尽くした男I氏、恐るべしです!!
温泉帰りもあって、汗だくになりながらみんなで二時間ほど棚のパーツと格闘。二千五百円の温泉代のおごりくらいなら安すぎるほどのお働きでした。

そして返品話まで出ていた棚が、まさかの完成の運びとなりました。IKEAさんすみません。私たちの力不足、経験不足でした。男性陣は温泉で疲れを取ったのが嘘のように、グッタリして帰って行きました。本当にありがたかったです。

出来上がった棚は憧れ通りスタイリッシュ!
みほさんも、最初この棚を見るたび「返品、返品」とオウムのように言っていましたが、最近は「オシャレに見えるわね」と優しい感想も言ってくれるようになりました。

この棚のおかげで、新生活早々、色んな思い出ができました。
二人暮しの時もそうだったけれど、それぞれ暮らしになっても、また色んな思い出を紡いでいけたらと思います。(姉・江里子)

いびつな角度の写真ですが、ようやく安定した形で立つようになった、マイフェイバリット棚です。白壁に白棚。 みほさんにしては珍しい自発的なガッツポーズ、棚完成までの険しい道のりが見て取れます。

関連書籍

阿佐ヶ谷姉妹『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』

40代・独身・女芸人の同居生活はちょっとした 小競合いと人情味溢れるご近所づきあいが満 載。エアコンの設定温度や布団の陣地で揉め る一方、ご近所からの手作り餃子おすそわけ に舌鼓。白髪染めや運動不足等の加齢事情を 抱えつつもマイペースな日々が続くと思いき や――。地味な暮らしと不思議な家族愛漂う 往復エッセイ。「その後の姉妹」対談も収録。

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阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし

40代、独身、女芸人ふたりの地味おもしろい同居生活エッセイ。

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阿佐ヶ谷姉妹

ASH&Dコーポレーション所属
高い歌唱力で歌って踊れるピンクのドレスの二人組。
劇団東京乾電池研究所にて知り合い、以来親交を深める。
本当の姉妹ではないけれど、顔が似ているということでコンビを組むことに。
2016年フジテレビ「とんねるずのみなさんのおかげでした」『第22回細かすぎて伝わらない モノマネ選手権』優勝。現在、数々のバラエティ番組で活躍中。

渡辺 江里子(わたなべ えりこ・写真右)
1972年7月15日生 栃木県出身 特技:ハモり 趣味:カラオケ

木村 美穂(きむら みほ・写真左)
1973年11月15日生 神奈川県出身 特技:ゼリー作り 趣味:仏像鑑賞

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