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阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし

2018.08.22 更新 ツイート

阿佐ヶ谷姉妹が小説執筆!「3月のハシビロコウ」(妹・木村美穂)第一回。 阿佐ヶ谷姉妹

この度、阿佐ヶ谷姉妹の初書籍『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』が発売となりました。「面白い」「癒される」「2人の関係が羨ましい」「文才がすごい」と多方面で話題になっています。そして、実は本書には「私の落とし方」をテーマにしたお二人の短編恋愛小説も掲載になっています。もちろん小説執筆は初の試み。実は、これがものすごく面白いんですよ…! 少しずつですが、まずは妹・美穂さんの小説からお楽しみください。

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「あ~暇だわ~」
 窓から物干し竿越しに、電線に仲良く並んでとまっているスズメたちを見ていたら、思わず心の声が漏れてしまった。

 阿佐ヶ谷姉妹として活動を始めてから早11年。最近はそれぞれの仕事も増えてきて、特に姉は深夜ドラマで弟の嫁をいじめる小姑をノリノリで演じたのがきっかけで、役者仕事がちょこちょこ入るようになってきている。最近も浅草で人気の大衆演劇「7人の鬼婆~生き血をすすってエジプトで大暴れ!」の7人の鬼婆の1人に大抜擢され、2月中は稽古、3月は公演という長い仕事に入る事になった。

 今までは姉に仕事が入ると、いい具合にみほピン仕事が舞い込んできたりしていたのだけれど、今回は全く仕事が入らない。3月も初旬、うっすら春の陽気になってきたというのに、昼間から薄暗い部屋でダラダラする私。

「こんな暇な時こそ、一発ギャグでも考えておいたらいいのかしらね~」
 そんな事を思いながらも、ついついYouTubeで巨大なカエルの動画やら、紙パックジュースをかためてまるごとゼリーを作る動画を延々と見てしまう自堕落さなのだった。

 ふいに冷蔵庫の中を覗いてみたけど何もない。引きこもってばかりいて家の食料が底をついたので、仕方なくスーパーへ行こうと決心する。西友に行こうかしら? それともヨーカドー? いやいや今月はお給料が少なそうだから、エブリデイロープライス西友にしよう。豆乳が安いし、ウズラの卵の串フライや黒豆せんべいも食べたい。外に出るのは3日ぶり? いや4日ぶり? 玄関を恐る恐る開けると外は良いお天気で、ご近所のお店の皆様が働いている姿を見て、こんなダメ人間ですみませんと申し訳ない気持ちになってしまう。

 さっきまで見ていたゼリーの動画を思い返しながら、駅までの緩やかな坂道を下って行く。こんにゃく屋さんの前ではおばさま方の井戸端会議に花が咲き、お向かいの墓地の塀にとまったカラスがジッと話に聞き入っている風だった。
 しばらく行くと日本茶のお店のご主人がほうじ茶を煎っていた。ご主人に軽く会釈しながら、肺活量めいっぱいにこっそりほうじ茶の香りを吸い込む。最高にいい香り。

 それにしても私はなぜゼリーが好きなのだろう? 思い返すと、子供の頃からゼリーやら寒天やらが好きだった。たとえばハウス食品のゼリエース。イチゴ味もメロン味も色がきれいで固めの食感が好きだったし、母がお正月に作る、卵寒天やコーヒー寒天も楽しみにしていた。食べるだけでは飽き足らず、理科の教科書に載っていた微生物を培養するために使われる「寒天培地」も音の感じが良くて、心の中で何度もかんてんばいち、かんてんばいちと繰り返していたし、実家にあったトイレの芳香剤「さわやかサワデー」も縦型のプラスチック容器にゼリー状の芳香剤が入っていて、トイレに行くたび蓋を開けて中のゼリーをじっと見ていた。ブルブルする様子を見るとワクワクするのだ。何かのきっかけで好きになった訳ではないので、私のDNAがゼリーや寒天が好きな気がする。きっと前世は寒天作りが盛んな長野県諏訪市の家の子供だったに違いない。

 そんな事をつらつら考えていたけれど西友に着いてはっと我に返った。寒天やらゼリーはどうでもいいのよ、みほ! 1ヶ月も暇なんだから、スーパーで品出しのアルバイトでもしようかしら? 漫才のネタが見つかるかも……などと思いながら気になる食材を購入していく。

 来た道を戻りながら、こんな距離で息が上がるなんて救心飲んだ方がいいかしらと思っていると、十数メートル先からママチャリに乗った男がこっちに向かってやってくるのが見えた。

関連書籍

阿佐ヶ谷姉妹『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』

40代・独身・女芸人の同居生活はちょっとした 小競合いと人情味溢れるご近所づきあいが満 載。エアコンの設定温度や布団の陣地で揉め る一方、ご近所からの手作り餃子おすそわけ に舌鼓。白髪染めや運動不足等の加齢事情を 抱えつつもマイペースな日々が続くと思いき や――。地味な暮らしと不思議な家族愛漂う 往復エッセイ。「その後の姉妹」対談も収録。

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阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし

40代、独身、女芸人ふたりの地味おもしろい同居生活エッセイ。

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阿佐ヶ谷姉妹

ASH&Dコーポレーション所属
高い歌唱力で歌って踊れるピンクのドレスの二人組。
劇団東京乾電池研究所にて知り合い、以来親交を深める。
本当の姉妹ではないけれど、顔が似ているということでコンビを組むことに。
2016年フジテレビ「とんねるずのみなさんのおかげでした」『第22回細かすぎて伝わらない モノマネ選手権』優勝。現在、数々のバラエティ番組で活躍中。

渡辺 江里子(わたなべ えりこ・写真右)
1972年7月15日生 栃木県出身 特技:ハモり 趣味:カラオケ

木村 美穂(きむら みほ・写真左)
1973年11月15日生 神奈川県出身 特技:ゼリー作り 趣味:仏像鑑賞

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