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本屋の時間

2017.08.01 更新 ツイート

第17回

本と賞辻山良雄

 つい先日、出版界における年に二回の大型イベント、「芥川賞」「直木賞」の発表が行われ、芥川賞は沼田真佑さんの『影裏』(文學界5月号)、直木賞には佐藤正午さんの『月の満ち欠け』(岩波書店)がそれぞれ選ばれました。


 毎回、受賞作が決まるひと月前には候補作が発表されますが、個人的にどの作家が取ってほしいという思いとともに、本屋としてはどの作品が受賞すれば売り上げが一番上がるのかを、ひそかに考えています。大型書店では、どの作品が受賞しても良いように、事前に少しずつ在庫を持っておくこともあり、発表前からその準備は着々と行われています。

 

 本の世界では芥川賞・直木賞以外にも、〇〇賞と名のつくものは、各ジャンルにあります。文豪の名を冠したものなら三島由紀夫賞、谷崎潤一郎賞、山本周五郎賞など、学術書なら、サントリー学芸賞、えほんならMOE絵本屋さん大賞、コミックならマンガ大賞や手塚治虫文化賞……。最近では全国の書店員が選ぶ本屋大賞が有名です。

 Titleでは受賞がそのまま売上に結びつくことはあまりないので、熱心に賞を追いかけることはありませんが、本屋としては、様々な場所で本が注目されることは大歓迎です。本を書く行為は、基本的に孤独なものだと思いますし、そうした賞が物心両面で作家を支えることは良いことだと思います。

 三省堂書店の書店員、新井見枝香さんが始めた「新井賞」という賞があります。

写真提供:新井見枝香さん

 惚れ込んだ作家に個人で賞を差し上げ、専用の帯も作り、大きく展開もしていますが、これは本屋として大切な試みだと思います。そこまでしてもらった作家は幸せを感じるでしょうし、何よりよいと思った本を売りこむという、本屋の原点を感じます。こうした賞がどんどん増えてくると、本を売る現場も面白くなると思います。

 Titleで賞を作るとしたらどんな賞になるのでしょうか。とてもまだ賞を考えるような立場の店ではありませんが、いつかそのようなことも行えればと妄想しました。

 

 今回のおすすめ本

『幸福はどこにある』フランソワ・ルロール著 高橋啓訳(伽鹿舎)

 伽鹿舎は熊本の出版社。面白いのは作った本を「九州以外では売らない」と決めていることです。それは、「九州に訪れてでも、伽鹿舎の本を買いに行きたい」と思ってもらえる本を作り、九州を本の島にしたいという思いから。いまは全国どこいっても、大体同じ本が並んでいますが、この試みは自分の暮らす場所に根ざした、素晴らしい考えだと思います。

『幸福はどこにある』は初版を売り切り重版したので、「九州には行き渡った」と考え全国でも発売可能になった、一冊目の本になります。

 

 

◯Titleからのお知らせ
6月1日(月)から、書店・カフェともに店頭での営業を行います。短縮営業です。詳細はこちらをご覧ください。

◯2020年7月9日(木)19時30分~ オンライントーク 参加費無料

本の世界をめぐる夜会
『学びのきほん 本の世界をめぐる冒険』刊行記念 オンライントーク

「学びのきほん」シリーズと連動するイベント、今回は『本の世界をめぐる冒険』の刊行記念。登壇者は、著者のナカムラクニオさん、この本の校正を担当した牟田都子さん、店主辻山良雄の3人。司会進行は「学びのきほん」編集担当の白川貴浩さん。各々が経験してきた「本をめぐる冒険」をざっくばらんに語り合います。オンラインのアドレス等、詳細はTitleホームページへ。

◯2020年7月2日(木)~ 2020年7月27日(月) Title2階ギャラリー

OTHERS
中山信一個展

コロナウィルスの影響により延期となった中山信一個展「OTHERS」を、7月2日より開催。新作『OTHERS』に収録されている原画30点を展示販売する他、Titleでの展示のために制作した、店主・辻山との合作短編小説「ねこのひかり」(文・辻山良雄 絵・中山信一)の原画も合わせて展示します。


 

◯朝日新聞(耕論)2020.6.18
自粛要請と自由 新型コロナ 辻山良雄さん、戸羽太さん、青井未帆さん

◯nippon.com インタビュー 2020.5.4
たたかう「ニッポンの書店」を探して
本を自分で紹介し、売ることに賭ける-東京荻窪「Title」


◯『本屋、はじめました』増補版がちくま文庫から発売、たちまち重版!!

文庫版のための一章「その後のTitle」(「五年目のTitle」「売上と利益のこと」「Titleがある街」「本屋ブーム(?)に思うこと」「ひとりのbooksellerとして」「後悔してますか?」などなど)を書きおろしました。解説は若松英輔さん。
 


 

 

◯辻山良雄・文/nakaban・絵『ことばの生まれる景色』ナナロク社

店主・辻山が選んだ古典名作から現代作品まで40冊の紹介文と、画家nakaban氏が本の魂をすくいとって描いた絵が同時に楽しめる新しいブックガイド。贅沢なオールカラー。

 

 ◯辻山良雄『365日のほん』河出書房新社

春、夏、秋、冬……日々に1冊の本を。書店「Title」の店主が紹介する、暮らしを彩るこれからのスタンダードな本365冊。

 

 ◯辻山良雄『本屋、はじめました―新刊書店Title開業の記録』苦楽堂 ※5刷、ロングセラー!! 単行本

「自分の店」をはじめるときに、大切なことはなんだろう?物件探し、店舗デザイン、カフェのメニュー、イベント、ウェブ、そして「棚づくり」の実際。

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本屋の時間

東京・荻窪にある新刊書店「Title(タイトル)」店主の日々。好きな本のこと、本屋について、お店で起こった様々な出来事などを綴ります。「本屋」という、国境も時空も自由に超えられるものたちが集まる空間から見えるものとは。

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辻山良雄

Title店主。神戸生まれ。書店勤務ののち独立し、2016年1月荻窪に本屋とカフェとギャラリーの店 「Title」を開く。書評やブックセレクションの仕事も行う。著作に『本屋、はじめました』(苦楽堂)、『365日のほん』(河出書房新社)がある。

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