ハイパフォーマーとは、一時的に成果を出した人ではなく、環境や状況が変わっても、一定以上の成果をあげ続けている人。「ハイパフォーマー研究」をライフワークとし、これまで3000人以上のハイパフォーマーにインタビューを重ねてきた、人事・組織コンサルタントの相原孝夫氏が、ハイパフォーマーの悩み方をまとめた、『その悩み、ハイパフォーマーならこうするね』を発売しました。 困難に直面したとき、ハイパフォーマーならではの考え方の軸とは何なのでしょうか? 「失敗」をめぐっての行動原理をお届けします。
失敗を自分事として受け止めることによる好循環
「失敗を自分事として受け止める」という行動は、ハイパフォーマーに共通に見られる特性の一つであり、それが次のように好循環の起点となっているのです。拙著『ハイパフォーマー 彼らの法則』(日本経済新聞出版)の中で次のように述べました。
失敗を自分事として受け止め、失敗から学ぶことで、行動は改善される。同じ状況が起きた場合に、二度と同じ失敗は繰り返さず、適切に対処できるようになる。それにより自信が形成され、さらに困難な課題にチャレンジできる。失敗しても、再度失敗から学べる。そのようにして経験値はどんどん高まり、実力はレベルアップしていく。また、責任逃れをしないそのような態度は周囲から好感を持たれ、上からの信頼につながり、重要な仕事を任されるチャンスにも恵まれるようになる。
一方、失敗した時に逆の対応をしてしまう場合、次のように悪循環をつくり出してしまうことになりかねません。
失敗した時に受け止めずに流してしまったり、他人のせいにしたりする場合、そこからの学びは何ら得られず、自分の行動はいっこうに改善されない。同じ状況が起きた場合、また同じ失敗を繰り返すこととなる。受け止めずにスルーすることで精神的なダメージを回避してはいるものの、失敗への恐怖心は増すことになり、チャレンジすることができなくなる。周囲から、責任感のない者として信頼を損なうこととなり、重要な仕事を任されるようなチャンスに恵まれなくなる。
「同じ失敗を繰り返す」という言葉は、デキない人の代名詞的な言葉ですが、失敗を自分事として受け止めないという行為から始まり、そのような事態へと至るのです。飛躍を遂げた企業を詳細に比較・分析した名著『ビジョナリーカンパニー2』(ジェームズ・C・コリンズ著、山岡洋一訳、日経BP社)の中で、会社を飛躍的に伸ばしたリーダーの特色の一つとして、次のような言葉が紹介されています。
「うまくいったときには窓の外を見て、失敗したときには鏡を見る」
うまくいった時には自分以外に成功要因を求めるために「窓の外」を見て、失敗した時には自分のどこが足りなかったかを発見するために「鏡」を見ることのできる人が成功する人だというわけです。他人のせいにばかりしている人はその逆をやっていることになります。逆をやっていては成功しないばかりか、悪循環に陥ってしまうことになるのです。

「自己正当化」は意味がない
チャレンジするためには、失敗に対する考え方を変えなければならないのですが、手痛い経験であるだけに、つい自己正当化などをしてしまいがちです。実際、失敗後の「自己正当化」という反応は実に多く見られます。
かつて同じ職場にも自己正当化の権化のような人がいました。そのFさんは普段から少々横柄な態度をとりがちであり、周囲の評価が決して高くないチームリーダーでした。顧客に対しても少々ビッグマウスなところがあり、期待を大きく膨らませてしまうので、仕事を割り当てられたメンバーたちはその大きな期待に沿えるように案件を進めることを常に強いられていました。時には、顧客の期待とのズレが生じ、クレームに発展してしまうこともままありました。
そんな時、メンバーたちがその対応に追われて大わらわの状況にあっても、Fさんは平然とした素振りをし、口をついて出てくるのは、「大したことではない」、「想定内のことだ、おおよそ思った通りに進んでいる」、「そうそううまくいくものではない、やっていることはそんな簡単なことではない」等々の言葉であり、自己正当化に終始したのです。
矛先を他人に向けることもありました。「他人のせい」にするという自己正当化手段です。「自分はうまく進めたが、○○君がしくじってこういう結果になった」、「自分がすべて一人でやっていればこんなことにはならなかったが、チームでやっている以上仕方がない」。顧客のせいにすることすらありました。「顧客企業の担当者の△△さんは変わり者で有名で、他社との間でも問題を起こしてきたトラブルメーカーなんですよ」などと言うこともありました。
そもそも、なぜ、「想定内」などと言いたがるのでしょうか。失敗した時の気持ちとしては、立場がないとか、面目丸つぶれだなどといった体面的なことが大きいかもしれません。恥ずかしいとか、悔しいという感情が先に立つ。それゆえ、強がりを言いたくなる。弱さゆえにそれを認めることができない。端から見れば明らかな失敗でも、なんとか取り繕おうとするのです。
しかし、取り繕えば取り繕うほど、周囲の信頼を損ねるし、自分自身でも失敗のイメージが色濃く残ってしまいます。次に同様の状況に直面した時も、失敗のイメージしかないので、真正面から立ち向かえなくなります。失敗から逃げてしまったことで、似通った状況からことごとく逃げてしまうことになるのです。そのFさんも、プロジェクトが暗礁に乗り上げるような状況になると、少しずつフェードアウトしていくといった傾向がありました。
こうした反応を繰り返していては、当人としても決して前進することはありません。他人のせいにするなど、自己正当化をして自らの心理的ダメージを軽減することができたとしても、そこからの学びは何一つありません。周囲や顧客の信頼を損ねるだけに終わってしまいます。
* * *
続きは、相原孝夫著『その悩み、ハイパフォーマーならこうするね』をご覧ください。
その悩み、ハイパフォーマーならこうするね

2026年5月13日発売『その悩み、ハイパフォーマーならこうするね』(相原孝夫著)について











