心は鍛えるものではなく、「整える」もの。
着実に成長するサッカー日本代表をコーチとして支える長谷部誠が編み出した不朽のメンタル論『心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』。
累計160万部を突破したこの書籍から、一部を抜粋してお届けします。
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母に嘘をついてでも、1時間早くグラウンドに行き続けた理由
子どものときから現在まで、サッカーに関しては僕だけの集合時間がある。常に1時間前に着くようにしているのだ。たとえば、「15時集合」だったら14時に着くように家を出ていた。
なぜ、そんなことを始めたのか自分でもよく覚えていないけれど、おそらく単純にサッカーが好きで、誰よりもボールを触っていたかったからだと思う。練習のあとだと遅くなって帰らなければならないから……。

高校時代はあまり早く家を出ると親が心配すると思ったので、嘘をついて、サッカー部の正式な集合時間の「1時間前」を集合時間として伝えていた。しかし、あるとき母が同級生の父母と話しているときに、僕が言う時間と他の人が言う時間が合わないことに気がついてしまった。嘘がばれたのだ。まあ、悪いことをしていたわけではないし、きっちりした性格は母親譲りなので、母は苦笑いしただけで何も怒らなかったけれど。
1時間前に部室に到着すると、僕はまずカバンから練習着とスパイクを取り出し、長椅子の上に並べていく。自分の脱いだ服をきれいにたたみ、ゆっくり着替えていく。部室は決して広くないけれど、自分しかいないので何をするにしてもスペースは十分だ。誰に気遣うこともなくストレッチをして身体をほぐす。このとき前日までの課題を頭のなかで整理して、今日はこんなところに取り組んでみようとポイントを絞る。ひとりだけの贅沢な時間。練習という限られた時間を無駄にしないために、僕にはこういう自分なりの心と身体を準備する時間が必要なのだ。
モウリーニョが選手を自宅に追い返した理由
ゴルフをしている人から聞いたことがあるのだけれど、ゴルフというのは朝が早い。前日、遅くまで飲んで、朝ギリギリまで寝て、あわてて出かけていくと最初のホールのティーショットはまず失敗するのだそうだ。ゴルフは特に最初が肝心で、心がザワザワしたままだと満足したティーショットは打てないし、「今日は調子が悪い」と思い込んでしまい、その日一日スコアがまとめられなかったりする。そういう話を聞くと僕の方針もあながち間違っていないんだと思う。
当然ながら遅刻もしない。
サッカー部だけでなく学校生活でも、病院に行くといった特別な理由がない限り、遅刻をしたことは一度もなかった。プロになってからも遅刻はゼロ。誰かとの約束でも遅れることはない。

遅刻というのは、まわりにとっても、自分にとっても何もプラスを生み出さない。まず、遅刻というのは相手の時間を奪うことにつながる。20人で集まるとする。そこに僕が5分遅れたら、5分×20人で100分待たせることになる。それに「彼は遅れるから、集合時間を(あらかじめ)早く設定しよう」ということにもなりかねない。そんな駆け引きはすごく不毛だ。だから僕は遅刻をする人を信頼できない。
練習中に声を出して、真面目に取り組んでいる選手がいても、一度でも遅刻したら、「あいつの意気込みは、その程度のものだったのか」と、信頼のレベルは落ちるだろう。積み上げてきたものが、たったひとつのミスで無駄になる。
ある雑誌の記事によると、レアル・マドリードのジョゼ・モウリーニョ監督(現在はチェルシーの監督)は遅刻にすごく厳しい監督で、シーズン前の合宿である選手が寝坊したとき、バスに乗せず練習に参加させなかったそうだ。インテル・ミラノの監督時代には、遅刻した選手を自宅に追い返したこともあった。さらに、たとえ時間を守ったとしても、寝ぼけた状態で練習場に来ることも許さない。彼が2度もチャンピオンズリーグの優勝監督(2004年にFCポルト、'10年にインテル・ミラノ)になれたのは、こういう厳格な規律と無縁ではないだろう。
時間に遅れるのはどこかに甘さがあり、本気で取り組んでいないという証拠だ。きつい言い方をすれば、まわりに対する尊敬の念が薄いと思われても仕方ない。
また、そういう準備不足の人間がひとりでもいると組織の士気にも悪影響を及ぼす。ドイツには、「箱のなかに腐ったリンゴがひとつでもあると、全部が腐ってしまう」ということわざがある。腐るとまでは言わないが、ひとりでも遅刻する人間がいると、組織としての集中力に雑音が生じると思う。
逆に時間より早く来て、すでに100%の状態で準備している人間がいたら、他の人たちも「怠けていられない」と気が引き締まるはずだ。時間前に余裕を持って行くのはあくまで自分のためだが、組織にポジティブな空気を生むことにもつながる。
普段の頑張りを無駄にしないためにも、時間については絶対にルーズにならない方がいい。これからも僕は、時間に正確に、そして自分だけの集合時間を守り続ける。
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この続きは幻冬舎文庫『心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』でお楽しみください。
心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣

心は鍛えるものではなく、「整える」もの。
着実に成長するサッカー日本代表をコーチとして支える長谷部誠が編み出した不朽のメンタル論『心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』。
累計160万部を突破したこの書籍から、一部を抜粋してお届けします。











