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その悩み、ハイパフォーマーならこうするね

2026.05.28 公開 ポスト

「やる気を出せ」という上司が嫌いだったZ世代社員に仕事の面白さを教えてくれた新上司相原孝夫

ハイパフォーマーとは、一時的に成果を出した人ではなく、環境や状況が変わっても、一定以上の成果をあげ続けている人。「ハイパフォーマー研究」をライフワークとし、これまで3000人以上のハイパフォーマーにインタビューを重ねてきた、人事・組織コンサルタントの相原孝夫氏が、ハイパフォーマーの悩み方をまとめた、『その悩み、ハイパフォーマーならこうするね』を発売しました。 困難に直面したとき、ハイパフォーマーならではの考え方の軸とは何なのでしょうか? 「やる気」の捉え方をお届けします。

エピソード:やる気を出せと言われても

入社3年目のKさんは、12名からなる営業一課の一員だ。業績は課内でも比較的上位の方だが、目立つほどではない。半年ほど前に課長が替わり、それをきっかけに職場の雰囲気も営業スタイルも一変した。

以前の課長は、営業にありがちな、いわゆる〝根性論〟の人だった。課の業績が思わしくないと、「モチベーションを上げろ!」、「やる気を出せ!」とよく言っていた。確かに本人がいちばん元気ではあった。勢いでそこそこの数字もあげていたが、課全体の目標は3年連続で未達だった。皆はなんとなく、「目標が高過ぎるんだ」と半ば諦めていて、10%程度の目標未達が既定路線となっていた。

Kさんは、評価のフィードバック面談の時にも、課長から「業績はまあまあだが、やる気が見えない」と言われた。やる気がないわけではないが、自分たちZ世代は、やる気をあえて前面に出さないし、「やるべきことはやっていて、個人目標は達成しているのだから、やる気の面を指摘されるのは違うのではないか」と思った。

そんな折、課長が他部署へ異動となり、新しい課長がやってきた。見た目も振る舞いも、営業らしさはあまり感じない人だった。口数も多くはなく、「モチベーション」や「やる気」なんて言葉は口にしたことがない。「営業管理職にもいろんなタイプの人がいるんだなあ」と自社の人材の多様性に妙に感心した。

新課長が着任早々始めたのは、営業活動の分析ミーティングだった。全員を集め、うまくいったケースとうまくいかなかったケースを取り上げ、その要因について話し合った。また、誰かが悩んでいる案件があると、その顧客の内部環境や外部環境、競合企業の戦略、商品特性等を分析し、皆で知恵を出し合い、巻き返しの作戦を練っていった。

最初は少し面倒だと思ったが、次第に面白くなっていった。一つひとつの案件について、攻略法を考えるのがゲーム感覚で楽しくなっていったのだ。そこで話し合ったことが自分の営業活動の役に立つことも徐々に増えていった。営業活動上の諸問題を打開するための引き出しが多くなっていくのがわかった。このやり方はZ世代の自分にとっても無理がなく、受け入れやすいものだった。

営業は〝やる気〟で数字をあげていく仕事であると捉えていた時はただ苦しかったが、情報をもとに論理的に考えを進めていく仕事であると捉えられるようになってからは、日々誇りをもって仕事に向き合うことができるようになった。

論理的に攻略法を解き明かしていく習慣が課全体に根付いた頃、課の数字は明らかに上向いた。そのような仕事の仕方をしていく中で、この仕事の面白さに気づき、モチベーションも高い状態が続いていた。これまで以上にチームメンバー間の対話も多くなり、有用な情報が即座に共有されるようになった。何よりもすべてをひとりで抱え込んで活動していた時に比べて気持ちが楽になり、どんな状況でもなんとかなると思えるようになった。

いまは仕事に興味が持てて、コミュニケーションも活発になり、業績も上向き、さらに仕事が面白くなるといった好循環が回っているように思う。先月、一課は久しぶりに半期目標を達成した。このままいけば通期目標の数年ぶりの達成も間違いないだろう。

「モチベーション」は思考停止のキーワード

「モチベーション」という言葉は不思議です。ポジティブな言葉のようではありますが、状況の良い時にはあまり使われることはありません。状況が悪くなると途端に使われ始めるのです

悪い状況に対する責任転嫁の可能性が高いと思われます。なぜ、状況が悪くなると、モチベーションという言葉を思い浮かべるのでしょうか。悪い状況に対して、考えを巡らすことなく、最も簡単に回答を導き出そうとした場合、「やる気だ、モチベーションだ」となるからです。「やる気がないからうまくいっていないのだ」と。

冒頭エピソードの例でも、営業成績があがっていなかった原因はいろいろと考えられます。自社商品の強みを十分に打ち出せていないとか、顧客企業の事情を理解していないとか、競合他社の商品や戦略を知らないとか、あるいは、そもそも顧客ターゲットを間違っている等々。

そこで具体的なアドバイスをしてあげる上司がいると、結果が出やすくなります。一方、ただ「やる気だ、やる気を出せ!」と連呼するような人が上司である場合は状況は変わらないばかりか、各メンバーは精神的に追い込まれていくことになります。つまり、「モチベーション」という言葉は、〝思考停止のキーワード〟とも言えます。便利な言葉なので、安易にその言葉に飛びつきがちなのです。

一方、状況が良い時は、モチベーションという言葉は出てきません。持ち出す必要がないからです。そう考えると、モチベーション向上ということを至上命題として、モチベーションを高めることに腐心することよりも、むしろモチベーションという概念を無くすことこそが、モチベーションマネジメントのゴールともいえるのではないでしょうか

つまり、モチベーションなどを意識させずに成果をあげる方法です。先のエピソードでの新しい課長はそれを実践しました。気がついてみれば、仕事に一層の興味が湧き、やる気に満ちてやっているという状態をつくったのです。決して、各人がやる気を出そうと思ってやってきた結果ではありません。

*   *   *

続きは、相原孝夫著『その悩み、ハイパフォーマーならこうするね』をご覧ください。

関連書籍

相原孝夫『その悩み、ハイパフォーマーならこうするね』

悩むのは、能力不足のせいではない。 より良い状態へ移ろうとしているサインだ ハイパフォーマー=仕事で成果を出し続ける人 3000人以上のインタビューから見えた 仕事の壁をキャリアのステップに変える思考法 3000人以上のハイパフォーマー=成果を出し続ける人にインタビューを重ねてきた、人事・組織コンサルタントが明かす、共通する「悩みの乗り越え方」。 それは、自分を責めず、焦らず、淡々と続けること。 なぜそれができるのか。 彼らは悩みを能力不足のせいにせず、 状況が変わり始めているサインとして受け止めているからだ。 「成長」「人間関係」「職場環境」「自信」―― 16の悩みに、ハイパフォーマーならどう向き合うのか。 仕事人生は、「悩み方」で大きく変わる。

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その悩み、ハイパフォーマーならこうするね

2026年5月13日発売『その悩み、ハイパフォーマーならこうするね』(相原孝夫著)について

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相原孝夫

人事・組織コンサルタント。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科特任教授。株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長。早稲田大学大学院社会科学研究科博士前期課程修了。マーサージャパン株式会社代表取締役副社長を経て現職。人材の評価・選抜・育成および組織開発に関わる企業支援を専門とする。旧労働省大臣官房政策調査部研究会委員、総務省研究会委員、日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。経営アカデミー(日本生産性本部)、日経ビジネススクールほかでの講演等多数。著書に、『なぜ私たちは、仕事が嫌いになるのか。ハイパフォーマーの隠された真実 』『職場の「感情」論』『バブル入社組の憂鬱』『ハイパフォーマー 彼らの法則』『会社人生は「評判」で決まる』『コンピテンシー活用の実際』(以上、日本経済新聞出版)、『仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか 』(幻冬舎)、『図解 競争優位を生み出す戦略人材マネジメント』(東洋経済新報社)ほか多数。

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