まさかのベスト8で敗退という結果に、私は大層憤った。
ストロングゼロをがぶ飲みのヤケ酒で、卒倒するように不貞寝して惰眠をむさぼり、仕事にろくに身が入らないのはいつものことで仕方ないが、不貞腐れてるうちに諸々の支払いも滞り、ストレスで肌荒れはひどくなるばかりで、挙句ローンの審査には落ちてしまう有様だ。
もし日本が勝ち進んでいたら、こんなことにはならなかったはずだ。
勝利の美酒に酔いしれながら心地よく快眠、仕事にも身が入ってなにかわからないが成果も出て、支払いも滞りなく行ない、肌は韓流アイドルのように綺麗になり、ローンの審査も余裕で通っていたはずである。と思いたいし、たらればの話をしても仕方がないのは重々承知のうえである。
とにかく今回のアジアカップは、アディショナルタイムに劇的な展開が待ち受けている場面が多かった。
多かったというより、多すぎた。
あの長すぎるアディショナルタイムのおかげで、ドラマチックな展開があちこちの試合で巻き起こっていた。
サッカーというスポーツは、オフサイドとかなかなか細かいルールがあるのに、スローインする場所が曖昧だったり、最近のアディショナルタイムもなかなかアバウトな感じがしたりするさじ加減の不思議さ。
そして試合でドラマチックな逆転劇や勝利を引き寄せるのは、やはり「熱量」「執念」なのだと痛感させられた大会でもあった。
グループステージのときから、他国に比べてなにやら熱量が低いような気配がした日本代表。
この熱量というのは、比較対象があってようやく目に見えてわかるというか、日本の対戦国のみならずアジアカップに参戦しているどこの国もなにかたぎるような剥き出しの野心を見せていた。
その点、日本は「史上最強」「優勝候補筆頭」などともて囃されていたせいか、頂上だけを見ていて道中の足元が危うい感じがしていたところを、文字通り足元をすくわれた恰好となった。
他国の試合を見ていると、1戦必勝の全力をぶつけていて、いまの日本に足りないものを見せつけられた。
得点を挙げて、随喜の涙を流していたり、まるで優勝でもしたのかというくらいに歓喜している場面を見るたびに、日本が同じようにしている姿はどうもイメージできない。
涙を流せばいいというものでもないが、そんな熱量や勝利への執念を生み出す土台となるのは、やはりモチベーションだろう。
今回のアジアカップは、大会前から「格下の国と戦う」といった侮りがあったのは、見ている我々もそうだった。
モチベーションを強く保つことは難しい。
人はなにごとも侮ってしまうのである。
大会前の調整試合で、日本に6−1で負けたヨルダンが決勝までコマを進めるなんて誰が予想できただろうか。
カタールW杯でドイツやスペインは、日本を侮っていたはずで、やはり足元をすくわれたように、今度は日本が手痛いしっぺ返しを食うことになったのだ。
日本の敗戦からすこし時間が経って振り返ってみると、日本代表の連勝を粉々に打ち砕かれたということや、日本の弱点をあぶり出し苦しめた対戦国に拍手を送るべきであり、総括してみると皮肉にも面白かった。
地上波の放送が2回しかなかったアジアカップ。
決勝トーナメントにきて、ようやく満を持してこれから三苫と共に決勝まで活躍の場を得るはずだった松木安太郎も、負け試合2つに顔を出して姿を消してしまったのには、選手以上にストレスがあるだろうと心中お察しする次第である。
サムライブルー 酔いどれ観戦記
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