発売前の4月に『ロンドンならすぐに恋人ができると思っていた』のゲラを読んで感想を送ってくださる方を募集しました。感想の文字数を(100字以上)としていましたが、みなさん、しっかりとした分量、文章で送ってくださいました。「出国子女」をめぐる思いを綴ってくださったきゃれさんの感想です。
異国の地のどうしようもない孤独
この本で「出国女子」という言葉に初めて出会った。
高学歴で海外でキャリアを積み上げることを決めた、もう日本に住む予定のない女性「出国女子」は私の周りにもたくさんいる。アメリカの大学を卒業した帰国子女ということもあって、私も出国女子になる予定はなかったのか(あるいはこれからなろうと思っているのか)という質問を頻繁にされる。
私は出国女子になり損なったのかもしれない。
日本は綾さんの言う通り、完璧じゃない。伝統や文化、風習による生きにくさは様々な場面に残っていて、私自身、海外の方が生きやすかったかもと思うこともある。でも18歳の時に知り合いゼロのニューヨークで大学生活を始めた私には、海外で一人で生きることの難しさを知っている。言語や文化の壁以上に、友達ができても時々感じる孤独と向き合う大変さがあること。家族のいない地で生きることは自分を強くしてくれるけれど、自分の居場所を異国の地で見つけるのは簡単じゃないということを。そしてどの国にも生きにくさはあることを。
日本を去った多くの友人は異国の地で友人を作り、パートナーを見つけ、徐々にそこを自分の居場所(帰る場所)にしていっている。だからこそ綾さんが「解決策は恋じゃなかった」というエピローグのタイトルをつけていることが、目次で見た時から気になった。そしてエピローグにたどり着いた時、彼女なりの結論に心強さを感じた。自分より少し先を歩む、人生の先輩である綾さんが、前向きにまた進もうとしていることがとても嬉しくてホッとした。
社会人になってから、周りの人が絶えず変化することに悲しく感じたり、焦ったりする。でも私もその変化を楽しみ、その時に自分の周りにいる人と一緒に人生を楽しむことを続けていきたい。
――きゃれ
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ロンドンならすぐに恋人ができると思っていた
大学卒業後、母国を離れ、日本に6年間働いた。そしてロンドンへ――。鈴木綾さんの初めての本『ロンドンならすぐに恋人ができると思っていた』について
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