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#こんな時だからこそ読みたい本 幻冬舎社員リレー

2020.05.26 更新 ツイート

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恐怖をなくす魔法の正体(専務取締役・石原正康) 幻冬舎編集部

27人目は、専務取締役の石原正康です。

*   *   *

この新型コロナ渦中、心身ともにざわつかせてくれた小説はアルベール・カミュの『ペスト』だった。カミュ34歳の時の作品。で、43歳でノーベル文学賞をとり、46歳でフランス老舗出版社ガリマール社の一員だったミシェル・ガリマールの運転する車に同乗事故死している。けっこう早逝だ。

『ペスト』の中で北アフリカの一都市に住む主人公の医師リウーは、疫病という誰にでも襲いかかる集団不条理のさなかにおいて、日に日に増える感染者を相手に治療に専念していた。

ある朝、彼は「仕事」に真摯に向かっている時こそペストの恐怖を払拭できる時間であることに気づき、驚愕する。彼にとって仕事はパンデミック下で唯一聖なるものだったのだ。

 

確かに、医者の倫理観は特筆すべきものである。

もし戦地で敵国の兵士が瀕死の状態で運ばれてきた場合、それよりも自国の兵士の傷が少しでも軽いものであれば、敵国の兵士の救命が最優先されるものだと言う。それぞれの仕事に掟があればこそ、専心の境地に到るのかもしれない。

有川さんが描く職業小説は、何もできなかった人間が、その手に仕事をつけるところに実に惹きつけられる。『イマジン?』はテレビ番組の製作現場で働き始めた良井良助(いい りょうすけ)が、おっとり刀で駆け回りながら、次第に仕事の本質を我が物にして行く物語だ。仕事を覚える、これは当人にしたら魔法を手に入れたようなもので、世の中に自分の価値を差し出すこともできることだ。その尊い瞬間が見事に描かれている。

僕はまだファックスも一般的でなかったような時代に22才で編集者として仕事を始め、原稿はもらったその場で読んで作家の目を見て感想を言え、と当時の雑誌の編集長(弊社の社長の見城です)に言われていた。

優れた作家は書き上げた瞬間、作品とそれを書き上げた自らへの恍惚とそれと同量の不安を抱えている。そして、言うまでもなく作家にとって作品を子供のように愛おしい。

だが、どんな優れた文学作品も、本になったら一つの商品だ。それも見通した上、目の前の作家に感想を語ると冷や汗がだくだく流れる。

でもそんな体験が糧となったと今思えるなあ、と良助の活躍を『イマジン?』を読みながら痛感した。

 

アルベール・カミュ『ペスト』

アルジェリアのオラン市で、ある朝、医師のリウーは鼠の死体をいくつか発見する。ついで原因不明の熱病者が続出、ペストの発生である。外部と遮断された孤立状態のなかで、必死に「悪」と闘う市民たちの姿を年代記風に淡々と描くことで、人間性を蝕む「不条理」と直面した時に示される人間の諸相や、過ぎ去ったばかりの対ナチス闘争での体験を寓意的に描き込み圧倒的共感を呼んだ長編。

有川ひろ『イマジン?』

想像力は、あるかい? 憧れの映像制作の現場に飛び込んだ、良井良助(27歳)。聞き慣れない業界用語が飛び交う現場に戸惑う日々だが、そこは現実と物語を繋げる、魔法の世界だった。 「必死で知恵絞って想像すんのが俺たちの仕事だ」 やがて良助は、仲間たちが作品に傾ける熱意に、焦がれるような思いを募らせていく——。 走るしか能のない新米、突っ走る! 行き先は、たぶん未来。「有川浩」改め「有川ひろ」の、お仕事小説&ベタ甘ラブコメ。

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