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#こんな時だからこそ読みたい本 幻冬舎社員リレー

2020.05.05 公開 ツイート

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自転車で旅する日を楽しみに(第2編集局・片野貴司) 幻冬舎編集部

10人目は、第2編集局、片野貴司です。

* * *

新型コロナの影響でいま、世界中で自転車が人気だそうです(ニューヨークで自転車がトレンドに、空いている車道をスイスイ/ロイター)。

幻冬舎も基本は在宅勤務なんですが、わたしもどうしても会社に行かねばならないときは自転車で。リフレッシュになるし、公共交通機関を使わなくていいので気分がラクです。ただしヘルメットをかぶり、前後灯もしっかり点けて。

とはいえ、もっと遠くまで行きたいし、自転車レースファンのわたしは、通常ならヨーロッパで開催されるはずのレースがすべて中止でさびしくてしょうがない。いつか自由に外を走れる日に向けて、ノンフィクションを中心に自転車本を読んで気分を高めています。

シークレット・レース』が描くのは自転車レースの光と闇。ドーピング問題でツール・ド・フランス7連覇のタイトルを剥奪されたランス・アームストロングの相棒が、その不正のすべてを語ります。(文字通り)肉を削り骨を折りながらも勝利を求める選手の姿、驚きの方法で行われるドーピングやその隠し方など、児島修さんの翻訳がすばらしくて、読むだけで心拍数がぐんぐん上がります。

日本最高峰の闘い「全日本自転車ロードレース(2014年、in岩手県八幡平)」をつづったのが佐藤喬さんの逃げ』。下馬評をひっくり返して意外な選手が勝ったレースで、わたしも現地で観戦していたのですが「えっ! この選手が勝つの!?」と大興奮しました。震えたのがこの一節。

八幡平で勝つために必要ではない種類のトレーニングはほとんど捨て、半年かけて体を八幡平に特化させた。清水は、大きな犠牲を払って手に入れた体が、彼の選手人生において最強の状態に達したことを確信していた(中略)緊張は限界に達していて、ほとんど何も考えられない。レース開始を待つ清水の自転車に別の選手の自転車がわずかに触れたとき、清水は叫びそうになった。清水は、おそらく選手生命ではじめて、完全無欠の状態でレースに臨んでいるのだ。つまらない機材トラブルは避けなければいけない。

極限まで鍛えぬき勝負に臨んでも、勝つのは1人。しかも強い選手が勝つとは限らない。ロードレースの残酷さと美しさが凝縮されています。

自転車を楽しむ達人といえば石田ゆうすけさん。「動けば、いくらでも世界は広がっていくのだ」の言葉がじ〜んと沁みる『道の先まで行ってやれ!』と続編の『地図を破って行ってやれ!』は何度読んでも心躍ります。石田さんは、7年半かけて自転車で世界一周したツワモノ。この2作では日本中津々浦々を自転車で旅します。

北から南までつれづれに、飲んで食べて、笑って泣いて。出会う風景、人、食、そのすべてがキラキラと輝いていとおしく思えます。

あぁ、はやく自転車でどこか遠くへ行きたいな。

#こんな時だからこそ読みたい本

タイラー・ハミルトン(著),ダニエル・コイル(著),児島修(翻訳)『シークレット・レース』(小学館文庫)

ドーピング、隠ぺい、手段を選ばぬ勝利の追求―自転車レースを支配するシリアスな闇の世界に、ランス・アームストロングのマイヨジョーヌに貢献した元プロ自転車選手のタイラー・ハミルトンとノンフィクション作家のダニエル・コイルがメスを入れる。煌びやかなプロ自転車競技界の裏側にある幾重にもつらなった腐敗を暴き、かつ恐ろしいまでに不穏な世界を暴きだす。元プロ自転車選手ならではの心理を克明に描いた傑作ノンフィクション。

佐藤喬『逃げ』(小学館文庫)

強い者が勝つとは限らない。気候、展開、チームの作戦、選手個人の思惑など、複雑な要素が絡まり、実力通りに順位が決まるわけではないロードレースは、ときに人生にたとえられる。本書は、2014年6月、岩手県八幡平で開催された全日本選手権を詳細に追ったノンフィクションだ。200キロ超、5時間41分、悪天候の中で激闘を制したのは、意外な男だった。出場選手をつぶさに取材。年に一度、日本一を決定するレースで勝つことが、いかに難しいか、いかに勝つことが素晴らしいかを体感できる感動の記録。

石田ゆうすけ『道の先まで行ってやれ! 自転車で、飲んで笑って、涙する旅』(幻冬舎文庫)

自転車世界一周記『行かずに死ねるか!』の著者が、国内各地をひた走る。宮崎地鶏に悶絶し、積丹のウニに驚愕。そば街道とうどんの聖地で食べ歩き、色街の面影が残る島に鼻息荒く上陸。見知らぬ街の見知らぬ人と、語り、飲み、歌い、踊り、ときに涙する。世界を見た後に再発見した日本のすごさ、おもしろさ。心と胃袋が揺さぶられる国内紀行。

石田ゆうすけ『地図を破って行ってやれ! 自転車で、食って笑って、涙する旅』(幻冬舎文庫)

自転車で世界一周した著者が、日本国内を駆けめぐる!東京一周では怪しい宿の“夜の騒音”に悶絶し、甲賀の里では忍者になりきって写真撮影。北海道の名物宿で歌い踊り、屋久島の深い森で恍惚となる。そして震災前後の三陸では、忘れられない再会が―。全国各地で食、酒、自然、温かい人々に触れ、縦横無尽に走った旅をつづる紀行エッセイ。

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