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日本野球よ、それは間違っている!

2019.06.29 更新

最短KOの巨人・菅野は重傷か広岡達朗

巨人のエース・菅野智之が、プロ最短の1回0/3でKO降板した。6月23日のソフトバンク戦。勝ったほうが交流戦優勝という大一番だが、マウンドの菅野はウォーミングアップから様子がおかしかった。手投げばかりで、投げ終わったら右足が一塁側に出て、上体のねじれ(ひねり)がなく、体が左側に倒れている。

「これは腰か腕が相当悪いな。こんなんじゃ打ち込まれるぞ」と思っていたら、案の定だ。先頭打者ホームランなど3安打と2四球に、セーフティースクイズであっという間に4点を先制された。

2回表、先頭の投手・和田を歩かせたところで原監督がサッとベンチを出たのは正解だった。立ち上がりに打たれても優れた修正能力で立ち直る菅野だが、この日はその時間もなかった。原の素早い判断に驚いたファンも多かったようだが、この日ばかりは続投しても立ち直れなかっただろう。この乱調では、菅野の故障は重傷の可能性が高い。

宮本投手総合コーチの判断と責任

私は後出しジャンケンの結果論をいっているのではない。前々回に菅野の登録抹消を取り上げたとき、「コーチやトレーナーは責任を果たしているのか」と指摘した。

そのうえで「コーチはエースのコンディションに気を配り、戦列を離れるほど悪化する前に十分な指導と対策を講じていたのか。(中略)二軍での調整中に腰痛の原因を究明できたのか(中略)人間には誰でも自然治癒力がある。病気やケガで痛みが出たときは、休んでいれば自然に痛みが消えるが、原因を突き止め、適切な治療をしておかなければ再発する」と警告した。

報道によれば二軍での休養・調整後、「もう大丈夫」と自己申告したことで一軍に再登録されたという。つまり、宮本投手総合コーチは菅野の判断を信用して監督に報告したわけで、担当コーチとしての専門的な知識や判断で調整・指導をしたうえでゴーサインを出したわけではないようだ。

だとすれば、私が新刊『言わなきゃいけないプロ野球の大問題 巨人はなぜ勝てなくなったのか?』(幻冬舎)で、長年巨人を離れて芸能活動に励んできた宮本と内野守備兼打撃コーチの元木について「芸能人コーチ陣は大丈夫か」と問いかけた危惧が、早くも的中したことになる。

繰り返すまでもなく、監督・コーチはなにごとも選手任せにせず、自分で責任を持って判断し、指示するだけの見識と自信を持っていなければならない。

たとえば菅野が、エースの責任を感じて「もう大丈夫です」といっても、コーチがまだ完治していないと思えば「他の選手がしっかり投げるから、無理をせずにゆっくり治せ」とストップをかけるべきだ。それが選手を守り、チームを守ることではないのか。

交流戦優勝を逃した坂本のバックトス

この交流戦最終戦では、もうひとつ重大なプレーがあった。菅野が打ち込まれた1回表、0-1の一死満塁で出た坂本勇人の凡ミスである。

ソフトバンク・松田宣浩の緩いゴロを捕った坂本は、二塁走者のデスパイネを封殺しようと三塁にバックトスしたが、指に引っかかった送球は三遊間からあわてて戻った岡本の頭を越え、2走者の生還を許した。

この場合、坂本は捕球後、足を運んでサードに正対して投げれば間に合ったし、仮に二塁走者のデスパイネがセーフになっても内野安打の1点ですんだはずだ。

それを坂本は、三塁・岡本のベースカバーを確認せずにバックトスし、ボールが指に引っかかった。

私がこのプレーを重視するのは、坂本がよく三遊間のゴロをバックハンドで軽々とさばくからである。坂本に限らず最近の内野手が安易に逆シングルで捕球するのには理由がある。ひとつは人工芝の球場が多く、イレギュラーバウンドがないこと。もうひとつは、三遊間や二遊間のゴロを回り込んで正面で捕るより、打球に合わせてバックハンドで捕ったほうが楽だからだ。

常に正面で捕ろうと努めれば自然と守備範囲が広くなるが、手抜きのバックハンドのクセがつくと逆に守備範囲はだんだん狭くなる。

二遊間でよく見られるバックトスも、切羽詰まったギリギリの送球というより、華やかなファインプレーをめざすことが多い。

ここで忘れてならないのは、投手はヒット性の打球を捕ってくれるファインプレーなど望んでいないということだ。私は何人もの投手に聞いたが、彼らが喜び、求めているのは、投手が打ち取った平凡な打球を確実にアウトにしてくれることである。

そして華やかに見える逆シングルやバックトスは、ボールがグラブの網や指に引っかかって、重大なエラーになることが多い。坂本の日ごろから続けていた雑なプレーが、巨人にとっては5年ぶりの交流戦優勝がかかった大一番に大きな穴を開けた。

 

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広岡達朗

1932年、広島県呉市生まれ。早稲田大学教育学部卒業。学生野球全盛時代に早大の名ショートとして活躍。54年に巨人に入団、1年目から正遊撃手を務め、打率.314で新人王とベストナインに輝いた。引退後は評論家活動を経て、広島とヤクルトでコーチを務めた。監督としてヤクルトと西武で日本シリーズに優勝し、セ・パ両リーグで日本一を達成。指導者としての手腕が高く評価された。92年に野球殿堂入り。『動じない。』(王貞治氏・藤平信一氏との共著、幻冬舎)、『巨人への遺言』『中村天風 悲運に心悩ますな』『日本野球よ、それは間違っている!』(すべて幻冬舎)など著書多数。新刊『言わなきゃいけないプロ野球の大問題 巨人はなぜ勝てなくなったのか?』(幻冬舎)が発売中。

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