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現代アートは本当にわからないのか?

2020.09.26 更新 ツイート

コロナとインターネットと生きる時代のメディアアート――エキソニモ「UN-DEAD-LINK」展 村上由鶴

《UN-DEAD-LINK》2008年[参考図版],(左)photo: Stefan Holenstein, courtesy of [plug.in] , Basel

こんにちは!
東京都写真美術館でエキソニモの展覧会「エキソニモ UN-DEAD-LINK」が開催中です。

 

エキソニモは千房けん輔と赤岩やえによる2人組のアートユニット。本展は、彼らのこれまでの活動を振り返り、新型コロナウイルス感染症の流行のなかで作られた新作を含む世界初の大回顧展となっています。

最近では、「アートといえばメディアアート!」というくらい、デジタル技術を用いたアートはポピュラーになりました(実はこのメディアアートという言葉についてもいろいろな議論がありますが今日は割愛)。

たとえば、エレクトロ・ポップユニットPerfumeの舞台演出やリオオリンピックの閉会式の演出でも話題になったライゾマティクスの仕事や、インスタ映えアートの王座に君臨するチームラボの作品が日本のメディアアートの代表的なところでしょうか。
世界に誇る技術力の高さと美しさが高いレベルで融合したこれらのアートは、いまや日本の文化の中心にあるといえるかもしれません。

「エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク」展より
提供:東京都写真美術館 撮影:丸尾隆一

さて、プロジェクションマッピングやVRといったデジタル技術を使って美しい光景を作り出し、驚きと感動を与えるような視覚表現が一世風靡する一方、エキソニモはインターネットが一般化し始めた1996年に活動を開始しました。

デジタル技術だけでなく、マウスやキーボードといったモノへのアプローチからインターネットならではの特性を浮き彫りにする着眼点によって、インターネットやデジタルと暮らすわたしたちの文明「について」考えるきっかけを与えてくれます。
まさに、「デジタルのデジタルによるデジタル(文明を生きるわたしたち)のためのアート!」というような感じです(言いすぎ?)。

たとえば、会場でも多くの人を惹きつけていた代表作《断末魔ウス》は、マウスを物理的に破壊したときの画面上のカーソルの動きを保存した作品。デジタルについての作品である一方で、マウスを物理的に破壊する行為は非常にアナログ。

本作では、めちゃくちゃに痛めつけられるマウスの断末魔の叫びを表現するように、カーソルが画面のなかで見せるデジタルな動きがアナログな痛みを可視化します。最期にはカーソルがふっと止まり、常にわたしたちの文字通り「右腕」であるマウスの死に様が切なくもかわいく表現されています。デジタル空間において無きものとされてきた「死」を提示した作品ともいえるでしょう。

《断末魔ウス》「エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク」展より
提供:東京都写真美術館 撮影:丸尾隆一

また《ZZZZZZZZapp》は、エキソニモのメールボックスに勝手に送られてくるスパムメールのリンク先の画像を自動的に収集し、その変換行程でデータにずれを発生させた映像作品。音声は、画像の生データを音に変換したものだといいます。

“頼んでもいないのに押し付けられる情報と、それをカスタマイズする為の電波妨害”と作家が語るように、インターネット登場以降、「頼んでもないのに押し付けられる情報」の量はぐぐんと増加しているはず。そんな情報に抵抗するために、そいつらを自らカスタマイズすることで退けていくアティチュードは、ついついネットからの情報に受け身になりがちな現代のわたしたちにこそ必要なのかもしれません。

《ZZZZZZZZapp》「エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク」展より
提供:東京都写真美術館 撮影:丸尾隆一

さて、そんなエキソニモのキャリアのなかでも転換点と感じられるのが、《Fireplace》という2014年の作品。
アメリカには、テレビを擬似的な暖炉とするために、暖炉の映像を24時間流しているチャンネルがあるそう。エキソニモが作った暖炉の映像では、よく見るとキーボードやマウス、モニターなどが燃やされています。

かつて家庭の中心にあった暖炉、テレビ、そして旧型のデスクトップパソコン(とマウスやキーボード)は、いまや一家に一台ではなく一人一台のスマートフォンやタブレットに取って代わられました。わたしたちはついついデジタル/アナログの対比のなかで思考しがちですが、実はデジタルも連続的に進化を続けているんですよね。
それを象徴するように、彼らの作品でもマウスやコンピューターを対象としたものは徐々に見られなくなり、作品が展開されるフィールドも、現代アートの方向に広がっているように感じます。

それはまるで、デジタル「について」というより、デジタル「のなか」で生きるわたしたちのコミュニケーションの問題に踏み込んでいるみたい。むしろ、ネットやデジタルの領域にコミュニケーションという現実的な問題が流れ込んできたということなのかもしれないけれど……!

《Fireplace》「エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク」展より
提供:東京都写真美術館 撮影:丸尾隆一

また、本展はコロナ禍の社会状況を反映しているところも魅力のひとつです。

《The Kiss》は以前、あいちトリエンナーレについて書いた記事でも扱った、コロナ以前の作品。
ですが、みんながマスクで口を隠して生活をするようになった2020年に見ると、新しい響き方をするように思います。「人に会うこと」にリスクが生まれてしまったいま、「キス」は超濃厚接触。以前は、口元で重ね合わされたモニターがキスを想起させてしまうことにこの作品の楽しみがありましたが、いまではこの「キス」こそが、ニューノーマルの理想的な愛し合い方なのか……?と感じられるほど。もしかして予言?

《The Kiss》「エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク」展より
提供:東京都写真美術館 撮影:丸尾隆一

最後にご紹介する新作《Realm》は、エキソニモが新型コロナウイルス感染症に応答するかたちで制作されました。スマートフォンとウェブブラウザの2つの方法で接続できるオンライン作品。展覧会ではウェブブラウザの画面が展示されていて、鑑賞者は自分のスマートフォンから同じURLにアクセスします。

本作は、これまでのエキソニモっぽい「オンラインでのコミュニケーションの不完全さをちょっと皮肉るムード」が軽減され、やや感傷的なムード。
本当に「人に会えない」「触れられない」という事実や、インターネットを介することでしか「触れ合えない」ことへの切実な感情を、ネット上で吐露したような作品になっています。デバイスを2つ用意すれば、ご自宅からでも作品の全貌がつかめるはず。ぜひアクセスしてみてください。

《Realm》「エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク」展より
提供:東京都写真美術館 撮影:丸尾隆一

本展覧会は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で休館を余儀なくされ、オンラインでの開催になるかも?という可能性があったため、展覧会のウェブサイトがめちゃくちゃ充実しているのも魅力。展覧会場に足を運べない方は、オンライン会場で楽しんでみるのもおすすめです。

《HEAVY BODY PAINT》「エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク」展より
提供:東京都写真美術館 撮影:丸尾隆一

個人的には、デジタル技術を使って絵画の支持体やリアリティを意識させる《HEAVY BODY PAINT》や、Googleのウェブページを描いた絵画作品が物質として、そしてデジタル画像として流転しているプロセスを提示した《Natural Process》が好き!(《HEAVY BODY PAINT》のおもしろさはやはり実際に見たほうが伝わるかも……。)感染症対策のもと、足を運んでみてください!

《Natural Process》「エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク」展より
提供:東京都写真美術館 撮影:丸尾隆一

展覧会は10月11日まで! 急いで! ではまた!

 

エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク インターネットアートへの再接続
exonemo: UN-DEAD-LINK; Reconnecting with Internet Art

会期:2020年8月18日(火)- 10月11日(日)
開館時間:10:00-18:00(入館は閉館 30分前まで)
休館日:月曜日
観覧料:一般700円/大学・専門学校生560円/中高生・ 65歳以上350円
会場:東京都写真美術館 地下1階展示室、2階ロビー(東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内)
インターネット会場:https://un-dead-link.topmuseum.jp/
電話:03-3280-0099
web:http://www.topmuseum.jp/

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