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現代アートは本当にわからないのか?

2020.04.25 更新 ツイート

この日常をいつか味わえますように!「記録のアート」の世界村上由鶴

「外に出る」こと、「通う」ことを前提にした生き方が一変して、はや数週間。
わたしたちの脅威であるウイルスは目に見えないものですが、日が経つにつれて、それは目に見えるかたちで日常に影響を与えています。

いまわたしたちが生きるのは、歴史がえらい速度で転がる大災害のなか。
そんな日々を記録することはきっと、今日わたしたちが感じていることを、チーズやワインのように熟成させて未来で味わえるものにしてくれるはず。
その日まで、みんなで生き延びる!
というわけで、今回のテーマは「記録のアート」です!

 

先日、小池都知事が4月25日から5月6日までの12日間を「ステイホーム週間」とするよう呼びかけました。
とはいえ、ずっと家にいると息が詰まる…! ということで、十分に対策してお散歩するのを日課にしている人もいると思います。

そこでまずご紹介したいのは、ニューヨークの国際写真センター(ICP)の取り組み。
Instagram上で、 #ICPConcerned というハッシュタグをつけてパンデミックの影響を示す写真を募集し、そのなかから優れたものを選んでICPの公式アカウントに投稿しています。

 

 

世界的に「移動」が制限されているいま、わたしたちにできる移動はすごくこぢんまりとしていて、お散歩や必需品の買い物程度。しかし、そんな日常のなかにも確かに新型コロナウイルスの影響があることを、これらの投稿は教えてくれます。
お散歩の際には、ソーシャル・ディスタンスをしっかりとりつつ、カメラを片手に街の変化を記録してみてはいかがでしょうか。

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

⁣“Pandemic Portraits” #ICPConcerned⠀ ⠀ ?: @ludakiewicz, Lambertville, New Jersey.⠀

Int'l Center of Photography(@icp)がシェアした投稿 -

 

「記録」のアートにまつわる、最も重要なアーティストのひとりが河原温(かわら・おん)です。
河原温の作品はニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵されているので、MoMAのウェブサイトで見ることができます。

On Kawara | MoMA

注目は、河原温の絵画《Today》シリーズ。
「日付絵画」とも呼ばれるこのシリーズは、描かれた日付の当日に制作をはじめ、未完成のまま次の日になってしまった場合は破棄する、といったルールのもとで作られています(詳しいルールはWikipediaに)。 

 

MoMA.org より

制作の様子や展示風景は、ニューヨークのグッゲンハイム美術館のYouTubeでも紹介されています(解説は英語です)。

1966 年1月からはじめられたこのシリーズは、河原が亡くなる1か月前の2014年3月まで続けられています。シリーズの初期には、キャンバスの裏側のステッカーにひとこと日記がサブタイトルとして記入されていました。

ぱっと見た感じ、絵とは思えないような本作ですが、この作品はコンセプチュアル・アートのなかでも最も重要な絵画のひとつです。なぜなら、この絵画の前に立つ鑑賞者は、普段は意識しづらい「時間」に自動的に意識がいくから。この作品は作家の存在や生命や生活を、「日付を描く」というシンプルな行為によって強く感じさせます。

 

さて、河原温は絵画を通して「時間」を感じさせましたが、写真家・土田ヒロミは、長い「時間」の流れを自身の老いをもって可視化しています。

土田ヒロミの《Aging》は、1986年から毎日1枚のセルフポートレートを日課として自身の顔を撮影したもの。
YouTubeでは、その一部となる1986年から2006年までのセルフポートレートを、4分に圧縮したものを見ることができます。

今年の2月から3月にかけてギャラリー「ふげん社」で行われていた展示では、1986年から2018年までのセルフポートレートをまとめた作品が展示されていました。

土田ヒロミ写真展「Aging 1986-2018」

事態の収束まで3か月か、はたまた半年か1年か、3年か、もっともっともっと時間がかかるのか。先が読めないなかでも、自分の時間は平等です。自分を見つめる方法として、わたしたちもスマホ片手にチャレンジできそうですね。

 

記録といえば、ソフィ・カルの大作「限局性激痛」も、記録のアートです。
本作は、失恋までの前半と、失恋後の後半の二部に分かれた大作。
前半は、ようやくの思いで手に入れた恋人をパリにのこして、日本に3か月留学することになったカルが留学中に彼を想ってつづった手紙や、日本で過ごした日常の記録からなる「不幸までのカウントダウン」。
そして後半は、彼に会うはずの日に起きた史上最悪の失恋について繰り返し他人に語り、それと引き換えに相手の不幸の経験を聞いて自分の傷を癒やしていきます。

他者の不幸に誠実に向き合うことは可能か?――「ソフィ カル―限局性激痛」原美術館コレクションより

失恋を予期しながら作品を眺め、作者とともにそれを経験し、他人の不幸話で気付けば傷が癒やされていく…という重めの作品ですが、「日記とインタビュー」という構成は、Zoomを駆使すればおうち時間で真似できるかも…!

「最も個人的なことが、最もクリエイティブなことである」――これは今年の米アカデミー賞授賞式で、マーティン・スコセッシ監督の言葉を引用して『パラサイト』のポン・ジュノ監督が述べた言葉です。
この言葉は、各々が工夫してサバイブしようとする今の状況でこそ、響いてきます。土田やソフィ・カルにならってアート・プロジェクトにチャレンジして、自分のクリエイティブをひっそりと磨いてみてはいかがでしょうか。

 

新型コロナウイルスの流行以前には考えられなかったほど、否が応でも「時間」について思いをめぐらせてしまう今日この頃。
優れた作品に触れて時間について考えるもよし、せっかくだから自ら記録にチャレンジしてみるもよし。
いつか振り返って、この日々をしみじみと味わえるようにしたいものです。

ではまた!

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