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結局だらしな日記

2020.07.28 更新 ツイート

「テキトーでいいよ」の真実を明かそうじゃないか!(7月18日~26日)藤田香織

7月18日(土)

本日はだらしなの更新日(ちなみに月3回、8日18日28日でございます)であるな、と思っていたところ、「俳優の三浦春馬さんが亡くなりました」というニュースが聞こえてきた。あ、聞こえてきたのではなく、ツイッターで流れてきた。
最近は、テレビやラジオよりニュース的なことはツイッターのタイムラインで知ることが多いのだけれど、昼頃に確認されたというのに、夕方の段階でやけに詳しく、そこまで明らかにする必要があるんだろうか、と思うくらい詳細に報じられていて、違和感のようなものが。ざらっとするという感じだ。

 

現役バリバリの人気俳優が亡くなった、というわけで、いろいろな人がいろいろなことを言う。親しく付き合いのあった友人、共演歴のある俳優、同じ事務所の先輩後輩、直接関係があったわけではないけれど同じ俳優仲間の人々、俳優ではないけれど同じ「業界」関係者な人たち。熱心なファン、そこそこのファン。
呟きや、リツイートされた呟きや、そのまたリツイートされた呟きが、どんどん流れてくるのを見ていると、自分も何か呟かなくてはいけないような気がしてくる。でも、同時に何を言っていいのか分からなくなる。正直に書けば「え?」というひと文字になってしまう。そりゃあ驚いたけど、一方で、身内でも関係者でもファンでもない私が、「呟かずにはいられない」ことがあるならともかく、「呟かなければいけないような気がして」言えることなんてないと思うのだ。

と思っていたら、3週間前についに買ったエアコンの取り付け工事のための掃除、に来ていたママリンが、「やだ、この子、人気もあるのに、なにがあったのかしら」と言いながら、テレビのチャンネルをせわしげに変えるので、急にイラついて「なにがあったのかなんて、わかるわけないし、お母さんが知ってどうするの?」と、冷たく言ってしまった。
それでも、ママリンは「だって、どうしたのかなって思うじゃない」と普通に言う。なんで私がイラついているのかも、まったくピンときていないようなので、「それって結局、お母さんがなんとなく納得できる理由が欲しいってだけのことでしょ? 本当かどうかもわからない理由でも。どうして? って思うのはまあわかるけど、それを考えなしに口に出すのはどうなのって話だよ」と詰めてしまった。もちろん、ママリンはこれまた全然ピンときていないので、「えー」と曖昧に応えるだけで、受け流す。

あぁまたやってしまった! と思う。
そうなのだ。「三浦春馬くん亡くなったんだって」「あら、どうしたのかしらね」「ほんと、何があったんだろうねぇ」という会話でいいじゃないか、と頭の片隅ではわかっているのに、私が一歩踏み込んで突っかかるからいけないのだ。どうも私のなかにはママリンに対して「がっかりさせないでよ」という気持ちがあるようで、いつの間にやら勝手に見積もった「母親像」からママリンがずれたり足りなかったりするとイライラする、という傾向があると分かってきた。間違っているのは、むしろ私で、「さもしい」と思う私のほうがいやらしいのに、なんで割り切れないんだろう。

新しくなったリビングのエアコンは、めちゃくちゃ快適で、「28℃」設定でもきっちり涼しい。
工事の人が動きやすいように片付けられた動線にあった本は、和室にきちんと積んである。私が昨日「もっと散らかった部屋にだって工事に行ってるんだから、これくらい大丈夫だろう」、と思って放っておいた本だ。
「片付けてくれたんだ、ありがとう」とママリンに言えばいいのに、言えなかった。
うーん、根深い。

<最近の読書>*下読みモード継続中
『ふるえるからだ』(大西智子/光文社¥1980)……私は幼い息子の性器を可愛くて舐めちゃう&咥えちゃう! 的なことを言ったり書いたりする母親というものに、うへぇと思っていたし、実の娘を性的な目で見る父親というものも、うげぇ、と思っていて、でもそれは私がそうした立場にないからかもな、という気持ちもあった。家族間の性問題に起因する小説はこれまでにも沢山読んできた。で、本書は書き出しの一行目が<早くなんとかしなければ、このままでは息子とセックスしてしまいそうだ。>で、うへえ、で、うげぇ、で、うわぁ、これはきついなぁ、なエピソードが続く。うんざりもするし、気持ちが悪いとさえ感じた。ところが、それが読み進んでいくうちに、「わからなくもない」「ないとは言い切れない」「それはそれでありかもしれない」と気持ちが変化していって、最終的に「よしよし」と主人公を慰め寄り添うような気持ちになってしまった。すごい。これはちょっとかなりすごい。ものすごく書き難い重要で根本的なことが描かれている気がする。
ちょっとみんな、読んでみて!

今年、初のすいか!
すいかって、ひとり暮らしだとほんと買いにくい。
でも、これくらいのサイズでも2切れで十分になってきたなー。

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関連書籍

杉江松恋/藤田香織『東海道でしょう!』

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藤田香織

1968年三重県生まれ。書評家。著書に『だらしな日記 食事と読書と体脂肪の因果関係を考察する』『やっぱりだらしな日記+だらしなマンション購入記』『ホンのお楽しみ』。近著は書評家の杉江松恋氏と1年半かけて東海道を踏破した汗と涙の記録(!?)『東海道でしょう』。

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