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日本野球よ、それは間違っている!

2020.05.09 更新 ツイート

阿部慎之助の二軍改革で巨人は再生できるか広岡達朗

例年なら風薫る球春真っ盛りの季節だが、今年はプロ野球も開幕のメドさえたっていない。毎日、公式戦やアメリカ大リーグの中継をしているはずのテレビも、いまは「MLB2018投手・大谷翔平プレーバック」(NHK BS1)、「2019CSファイナル 巨人×阪神」(BS日テレ)など過去の試合でお茶をにごしている。

書き入れ時に再放送や企画もので穴埋めするテレビ番組のなかで最近面白かったのは、テレビ東京系「SPORTSウォッチャー」の阿部慎之助・巨人二軍監督の特集(4月25日放送)だった。

 

2月のキャンプから阿部を取材してきたこの特集によると、昨年10月に巨人の二軍監督に就任した阿部は、「二軍は毎日がキャンプ」「試合が続くと練習量が落ちるので、試合後も全体練習」を今年の基本方針とした。

そして(1)質と量を追求した練習、(2)効率を追求した練習、(3)一軍を意識した練習、の3本柱で二軍の意識改革をめざすという。

「毎日がキャンプ」で意識改革

まず「質と量を追求した練習」では、人数の多い二軍で選手たちの練習量を確保するため春のキャンプで早朝練習を取り入れ、朝7時に宿舎を出発して一軍より2時間早く練習を始めた。また、雨の日には夜7時から室内練習場で夜間練習を行い、バッティングなどの練習不足を補った。

「効率を追求した練習」では、打撃練習を行うメイン球場をはじめ、隣接の軟式野球場で守備練習、室内練習場では特打練習、陸上競技場ではランニングなど、4班に分かれてのローテーションメニューを実行。それぞれの班のコーチたちはインカムをつけ、お互いの練習状況を連絡しあって移動や練習の効率化を図った。

そして「一軍を意識した練習」としては、一軍投手のブルペンの端に二軍専用のレーンを確保し、日替わりで二軍の投手に投げさせて一軍の緊張感と技術を体感させた。原監督と相談して取り入れたこの練習について、阿部は「選手にその気にさせてやるのが僕らの仕事なんで、選手のモチベーションを上げられるようにしたいと思って」と語っている。

阿部はこの番組で昨年引退した上原浩治と対談したが、そこで次のように語っている。

「自分もファームにいたからわかる。なんでこいつら、こういうことしないんだろうなと思うことがたくさんあった。(10月から二軍監督になったが)納会で『ぬるい』って4回いっちゃいました。(二軍の練習を見て)学校の授業みたいにしか感じないので。そういうのをガラッと全部変えようかなと思った」

「『こっちから強制することはないから、自分たちで考えて。どうしたらうまくなるのか考えなさい』というのもいった。やっぱり若いから『こうしちゃいけないんじゃないか』みたいな遠慮が多い。殻を破らせることが巨人の底上げになるんじゃないかなと考えている」

試合より練習重視は正しい

この番組は、「巨人はこれからどう変わるのか」と思わせてくれるような内容だった。阿部が二軍監督になってから、新聞やテレビの報道でその言動に注目していたが、この番組で阿部の考えていることがわかり、「少しは野球らしい野球をやり出したな」と感じた。

阿部は「二軍の練習を見て、学校の授業としか感じなかった」と語っていたが、これまでの二軍は「練習のための練習」をやっていたのだろう。これでは巨人らしい雰囲気は出ない。阿部がいっている通りなら、これからは二軍も巨人らしくなるかなと思う。

番組によると、今年の二軍は「試合後も全体練習をやる」そうだが、その通りだ。私も以前、巨人の育成組の練習を見に行ったことがあるが、彼らのスケジュールを見て試合が多いのに驚いた。

育成選手は素質には恵まれているが、一軍で戦うには何かが足りないから支配下選手になれない。そんな選手には、楽な試合より厳しい練習こそ必要なのだ。阿部は二軍でも試合より練習を重視するという。巨人は二軍でも各地でファンが集まるので多くの試合が組まれるから、「試合後も練習」はぜひ続けたほうがいい。

一軍に行ける技術を教えろ

だが私にいわせれば、阿部のやり方もまだぬるい。阿部は選手に「どうしたらうまくなるのか考えなさい」といっている。選手が自分たちで考えるのは当然だが、指導者としては「どうしたら一軍に行けるか」「こうしたら試合に勝てる」というhow to doを教えなければいけない。

巨人は二軍キャンプで4つのグラウンドを使ったそうだが、問題は練習の質と効率を追求するために、コーチたちが恵まれた環境で選手に何を教えたかだ。たとえば守備で一番大事なのは、球が来る前に十分な準備(構え)をすることだが、コーチは守備の何を教えたのだろうか。

二軍改革を巨人再生につなげるには、監督の阿部とコーチの知識と能力も問われることになる。

 

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広岡達朗

1932年、広島県呉市生まれ。早稲田大学教育学部卒業。学生野球全盛時代に早大の名ショートとして活躍。54年、巨人に入団。1年目から正遊撃手を務め、打率.314で新人王とベストナインに輝いた。引退後は評論家活動を経て、広島とヤクルトでコーチを務めた。監督としてヤクルトと西武で日本シリーズに優勝し、セ・パ両リーグで日本一を達成。指導者としての手腕が高く評価された。92年、野球殿堂入り。『動じない。』(王貞治氏・藤平信一氏との共著)、『巨人への遺言』『中村天風 悲運に心悩ますな』『日本野球よ、それは間違っている!』『言わなきゃいけないプロ野球の大問題』(すべて幻冬舎)など著書多数。新刊『プロ野球激闘史』(幻冬舎)が好評発売中。

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