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サムライブルー 酔いどれ観戦記

2019.09.17 更新 ツイート

FIFAワールドカップ・アジア予選2次予選 VSミャンマーヤシキケンジ

「久保くんさん」が、A代表最年少得点記録を数十年ぶりに塗り替えそうだとか、そういうことをマスコミはやたらと気にして取り上げていた。

 

 また、クラブチームにも話が及び、レンタル移籍先での出場がどうとか報じられるが、それもどうでもいいと考える。
 彼のクレバーな言動にも注目はしているが、本当に気になることはそうじゃない。

 彼が、童貞か否かである。

 余計なお世話だし下世話だということは重々承知の上である。
 彼は高校3年生であるというのに、18歳の夏はレアルマドリーの一員としてトップチームの世界のスーパースターたちとプレーをしてした。

 日本人の高校3年生ならば、本来なら夏休み期間中である。
 部活も引退して、アルバイトを始めてみたはいいけども、冴えないアルバイトの先輩にこっぴどく叱られながら汗水流して時給ン百円で頑張ってみたり、夜遊びをして知り合った悪いパイセンから煙草や酒など悪いことを教え込まれて自分を見失ったりするのが正しい高校生最後の夏休みであるはずが、彼はその時期をスペインやアメリカへと飛行機で世界中を飛び回り、アザールと仲良く話したり、紅白試合で外したシュートが至近距離で見ているジダンにブチ当たったけど謝りもしなかったりと、異次元の夏を送っていたのだ。

 レアル童貞な我々日本人は、彼を見てただただ興奮する。夢を託す。
 しかし、彼が本来の意味で童貞なのかどうなのか、考えざるを得ないのである。
 スペイン語や英語も話せるのだから、外国人の彼女がいたって驚きではない。
 ただただ、羨ましいだけだ。
 
 思い返せば、私の高校生3年生の2学期。9月になった始業式。
 同じクラスに「デブ」と呼ばれている奴がいた。
 東京に出てきていろんな本域のデブを知ったいまになって思い返してみると、彼はそれほどデブではなかったが、そのときは、とりあえずみんなからデブと呼ばれていた。

 私とそのデブは友だちで、1学期のときはあれほど一緒に遊んでいたのにも関わらず、夏休み期間中に何度遊びに誘ってもそのデブは誘いを拒み続けてきたのである。
 あまりに何度も断るので、理由をたずねるのだが理由を言いたがらない。
 生意気なデブだなと思い、始業式のその日、理由を問いただそうと久しぶりに会ったデブを問い詰めてやろうと思っていた。

 教室に入りデブの姿を見たとき、私は得体の知れないものを感じたのである。
 夏休みの間中、トマトダイエットをして激やせして誰か分からなくなっていたとかではなく、髪型が急にモヒカンや金髪に変わったとかでもない。刺青を入れたわけでもなければ、顔をイジッたわけでもなく相変わらずの朗らかなデブ顔である。

 しかし、デブの醸し出すオーラのようなものが明らかに違っていたのである。
 別にスカした態度を取っていたりしたわけじゃない。しかし、明らかに「オトナの雰囲気」をまとっていたのである。

 私は慌ててデブに駆け寄って、いつもの挨拶代りに白いカッターシャツの上からお腹の過剰な肉を鷲掴みにしてたずねた。

「おまえ、さては……卒業したな?」

 そのときのデブの驚いた顔は、あれから20年以上経ったいまも鮮明に覚えている。

 顔からは一気にラードのような肉汁を噴き出して顔が脂光りしていた。「動揺を隠し切れないデブ」そのものといった顔だった。

「な、なんでや……誰にも言うてへんのに……なんでお前、そのことを知ってるんや。お願いやから誰にも言わんといてや!」
「ああ、分かった。男の約束だ。必ずみんなに言いふらすからっ!!」

 夏休み中の誘いをすべて断られたのと、私よりも先にデブが童貞を卒業したことに対する腹いせに言いふらしてやったのは言うまでもない。

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