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日本野球よ、それは間違っている!

2018.12.22 更新

大谷は二刀流をやめて外野手になれ【プロ野球2018総括】広岡達朗

 私は2018年3月、『日本野球よ、それは間違っている!』(幻冬舎)を上梓した。崩れゆく日本の野球界を改革し、正しい野球を将来に語り継ぐためである。

 そのなかで私は、日本野球を滅ぼすポスティング制度に反対し、日本ハムから大リーグのエンゼルスに移籍した大谷翔平の優れた才能を評価しながらも、「二刀流はメジャーで通用しない」と断言した。

 またポスティング移籍の日本人第1号で、45歳になってなお現役にこだわるイチローについては、「現役をやめても第2の人生がある。引退して指導者になれ」と進言した。

 早稲田実業から日本ハムにドラフト1位で入団した清宮幸太郎についても、以前からこの連載や著書で「早稲田大学で野球の基礎と人間力を身につけてからプロに行くべきだ」とすすめたうえで、「清宮は即戦力にならない」と書いた。

大リーグの平等主義に反する二刀流

 あれから9か月が過ぎて、彼らはどうなったか。日米の野球ファンを熱狂させたスーパールーキー・大谷は、打者としては104試合で打率.285、22本塁打、61打点の記録を残してア・リーグの新人王に輝いた。

 しかし本業の投手では、6月に右ひじの靭帯損傷で戦列を離れ、9月に復帰登板した直後に新たな右ひじの損傷が見つかって、シーズン終了直後に靭帯再建手術(トミー・ジョン手術)を受けた。1年目の投手成績は10試合に先発登板して4勝2敗、防御率3.31だった。

 私は大谷の日本ハム時代から投打の二刀流に反対してきたが、大リーグに移ってからも反対し続けた基本的な理由は、二刀流が多民族国家の根本原則である平等性を欠いているからだ。

 大リーグでは、5人の先発投手が原則中4日のローテーションで回っている。これは「1試合の投球数100球で中4日が最も効率がいい」という理由の他に、先発投手陣の仕事を平等に回すためでもある。

 監督がこのローテーションを無視して、好調で勝てる確率が高い投手を優先的に起用したら、他の投手から「俺たちの仕事と勝つチャンスを奪われた」とクレームがつき、後ろについている選手の代理人が黙っていない。

 そんな大リーグで、日本から来たばかりの大谷だけが「打者との二刀流だから」という理由で中5日とか中1週の特別扱いをされたらおかしいだろう。大谷の人柄がファンやチームメイトに愛されている間は波風が立たなくても、不調が続き、チームに貢献できなくなったらきっとナインの反発が表面化する。中南米出身の選手がメジャー全体の約3割を占めるといわれる多国籍社会では、大谷の二刀流は基本的によくないのである。

 こうした原則論の他にも、毎日DHで打ったり走ったりしながら、本業の投手としての鍛錬や調整ができるのか、という問題もある。この1年を見ても、まだ若い大谷が、日本ハム時代からの古傷である右ひじの靭帯を2度も損傷し、下半身にも故障が多いのは、これまでのトレーニングが足りないからだ。

靭帯再建手術で完全復活は無理

 私は、故障した選手がすぐ手術を受ける風潮に疑問を持っている。

 ひじの靭帯損傷も、手術後のリスクを考えると、手術をしなくても時間をかけて適切な休養と治療をすれば治るとさえ思っている。

 近代医学では「靭帯断裂は手術しか治らない」と言われているが、では手術したら投手として完全復活できるのか。以前の球威を取り戻して復活できた選手はいないではないか。

 大谷も、手術で完全復活できる保証はない。手術を信用しない私は、残念ながら大谷も、最速162km/hのスピードを取り戻すのは難しいと思う。術後いったんはマウンドに復帰できても、彼が尊敬する先輩・ダルビッシュ有のように、ケガの再発や手術の後遺症に悩む可能性は高い。

 しかし大谷が、勝負強さと長打力で新人王に輝いたのは立派だった。1年目から打撃フォームの改善に成功したように、研究熱心で適応能力の高い選手だから、打席に復帰したらまだまだ成長するだろう。リスクの高い大手術を受けたいまとなっては二刀流にこだわらず、快足を生かせる外野手一本で再出発したほうがいい。

 DHでは、よほど優れた打力を身につけなければレギュラーの座を守り続けるのは難しいからだ。

 ただし、大リーグで外野の一角を占めるには、右ひじを治して遠投できることが必須条件になる。

イチローはマイナーリーグの指導者になれ

 5月にマリナーズがイチローと再契約を結んだとき、私は「変な契約をするなあ」と眉をひそめた。

 3月にFA(フリーエージェント)で古巣に復帰したばかりのイチローを5月3日(現地時間)、ベンチ入り枠25人から突然外し、球団会長付特別補佐(アドバイザー)に就任させた。開幕から29試合で事実上の戦力外である。

 ところがマリナーズはイチローとあらためて生涯契約を結び、チームに同行して練習しながらチームや選手をサポートするという。しかも、来季は現役復帰して試合に出ることも可能だという。

 このニュースを聞いて、「マリナーズはイチローを、2019年3月に東京ドームで行うアスレチックスとのメジャー開幕戦の人寄せパンダにするつもりだな」と思ったのは、私だけではないだろう。そうでなければ、あのイチローをこれまで試合前だけの練習生として飼い殺しにするはずがない。

 その開幕戦は3か月後に迫っているが、イチローがその後のシーズンも現役として試合に出ることはないだろう。

 私はこの連載や拙著で「イチローは早くバットを置いて指導者になれ」と書いてきた。

 だが最近は、それでも引退しないイチローを見て「まだアメリカで勉強するつもりだな」と思うようになった。古巣・オリックスが熱望している帰国即監督になるには、指導者としての経験と勉強ができていないからだ。

 もしイチローがそう考えているなら立派だが、これ以上マリナーズのビジネス戦略に利用される必要はない。早く引退してマイナーリーグで指導者の経験を積み、教え子たちをメジャーに昇格させる実績を挙げてから日本の監督になってくれたら、と願っている。

 そうでなければ、指導者経験がないまま監督に抜擢され、結果が出ずにすぐクビになった阪神の金本知憲や巨人の高橋由伸のようになるのは目に見えている。

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広岡達朗『日本野球よ、それは間違っている!』

「清宮は即戦力にならない」「大谷の二刀流はメジャーで通用しない」「イチローは引退して指導者になれ」――セ・パ日本一の名将が大胆予言! 球界大改革のすすめ

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広岡達朗

1932年、広島県呉市生まれ。早稲田大学教育学部卒業。学生野球全盛時代に早大の名ショートとして活躍。1954年に巨人に入団、1年目から正遊撃手を務め、打率.314で新人王とベストナインに輝いた。引退後は評論家活動を経て、広島とヤクルトでコーチを務めた。監督としてヤクルトと西武で日本シリーズに優勝し、セ・パ両リーグで日本一を達成。指導者としての手腕が高く評価された。1992年に野球殿堂入り。『動じない。』(王貞治氏・藤平信一氏との共著、幻冬舎)、『巨人への遺言』『中村天風 悲運に心悩ますな』(ともに幻冬舎)など著書多数。新刊『日本野球よ、それは間違っている!』(幻冬舎)が発売中。

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