乃木憂助(堺雅人)と柚木薫(二階堂ふみ)の愛は本物だった。
ついに、乃木が「別班」であることを知ってしまった柚木薫。
これまで愛してきた男が、自分の知らない世界で命を懸けて戦っていた。
しかも、その正体をずっと隠されていたのだから、薫が簡単に受け入れられなかったのも無理はないだろう。そして薫は、乃木との今後について考える時間が欲しいと告げた。
だが、2人の愛は、それほど簡単に崩れるものではなかった。
出雲大社で乃木のもとに届いた、薫からのメール。
そこには、彼女の愛が詰まっていた。
「終わりにしようと何度も決心しても、あなたへの気持ちが邪魔します。よくわかりました、私はあなたを愛しています」
なんて素敵なラブレターなのだろうか……。
愛の戦士こと長野(小日向文世)も安心したことだろう。
そして、そのメールを読んで涙を流す乃木の姿が、何とも愛おしかった。
世界を股にかけ、どんな危機にも冷静に立ち向かってきた男が、愛する人からのメール一通で泣き崩れている。
だが、そんな姿こそ、私が好きな乃木憂助なのだと思う。
人知れず国家を守る男にも、誰かに愛されたいという、ごく普通の願いがある。
そして今回、その願いがようやく報われた。
恋愛面でも心躍らせてくれるのは、さすが『VIVANT』だ。
そんな乃木の恋愛を、普段は真面目に任務を遂行するノコル(二宮和也)とチンギスがニヤニヤしながら気にかけていたのも、なんとも尊い光景だった。
そこには、任務や組織の立場を超えた、確かな友情があった。
そして、そんな温かな光景は奥出雲でも変わらなかった。
かつて世界を震撼させたテントの指導者が、今度は息子の恋愛を応援しているではないか。
前回は老眼鏡姿で読書をするベキに驚かされたが、今回は父親としての優しさに驚かされた。あの威厳に満ちた男が、息子の幸せを願う、ごく普通の父親になっている。
これもまた微笑ましい。
考えてみれば、ベキもまた、長い年月を息子と離れて過ごしてきた男なのだ。
息子がどんな人生を歩み、どんな人を愛し、どんな幸せを夢見ているのか。
本来なら父親として見守ることができたはずの時間を、彼は失ってきた。
そんなベキが今、乃木の恋愛を応援している。
そこには、失われた親子の時間を少しずつ埋めていくような、温かな愛情を感じた。
『VIVANT』はこれまで、国家の命運を懸けた壮大な戦いを描いてきた。
しかし今回、私の心を最も動かしたのは、そんな大きな出来事ではなかった。
恋人から届いた一通のメール。
仲間や家族との何気ない会話。
世界を救うために戦ってきた男が、ようやく自分自身の幸せを手に入れようとしている。
そんな姿を見られただけでも、第23話には十分すぎるほどの価値があったと思う。
しかし、ここで終わらないのが『VIVANT』である。
そんな温かな時間に浸っていた私たちに、今度はエリシャが、とんでもなく壮大な話を始めたのだ。

核融合技術のデータを手に入れるために必要なもの。
それは、直感、知力、精神力、そして苦境を共にする仲間。さらには時間との戦いを乗り越え、その先に待つ真実に辿り着かなければならないという。
まるで壮大な冒険の始まりを告げる言葉ではないか。
ただ忘れてはいけない。『VIVANT』は、もう最終回直前である。
普通なら、これまで散りばめてきた伏線を回収し、物語を結末へと向かわせる頃だろう。
ようやく謎の答えが見えてきたと思ったら、その向こうに、さらに大きな物語を用意しているのだ。
しかも、今度は世界の未来を左右しかねない核融合技術をめぐる冒険である。一体、どこまで話を広げるつもりなのだろうか。
だが、これこそが『VIVANT』の恐ろしいところであり、何より素晴らしいところなのだと思う。
終わりが近づくほど、物語の全貌が見えてくる。そのはずなのに、『VIVANT』は終わりが近づくほど、まだ見ぬ世界の存在を感じさせてくる。
つい先ほどまで、乃木の恋愛や家族の幸せに胸を温められていたというのに、気づけば再び、世界規模の謎に心を奪われている。
こんなにも小さな幸せと、こんなにも大きな物語が、同じ作品の中に共存している。
これぞ、『VIVANT』だ。
終わりが見えてきたはずなのに、その先には、まだ見たことのない景色が広がっている。
『VIVANT』は、最終回を目前にしてなお、私たちに新たな冒険を期待させてくれるのだ。
核融合ディスクは羊のぬいぐるみの中に? そして最後の鍵を開けるのはジャミーンの声……!?
さて、ここからは考察に移りたい。
第23話で明らかになった、核融合技術をめぐる新たな真実。
エリシャは7年前、その技術データを記録したディスクを、娘であるプリシャ、つまりジャミーンの体内に埋め込んでいた。
しかし、現在のジャミーンの体内にディスクは存在しない。
では、アディエルは一体どこに隠したのだろうか。

ここで私が注目したいのは、ジャミーンが大切にしている「羊のぬいぐるみ」である。
もし、あのぬいぐるみの中にディスクが隠されていたとしたらどうだろうか。
世界中の人間が血眼になって探しているものが、実は小さな少女の腕の中にあった。
何とも『VIVANT』らしい展開ではないか。
もちろん、常に持ち歩く大事なぬいぐるみであれば、紛失したり、誰かに見つかったりする危険もあるだろう。しかし、あえてそんな日常の中に秘密を隠すことこそ、最も大胆な選択なのかもしれない。
小さな少女が何気なく抱きしめてきたぬいぐるみ。少女にとっては、ただの大切な宝物。
しかし、もしその中に、大人たちが命を懸けて追い求める秘密が眠っていたとしたら。
あまりにも身近で、あまりにも壮大な隠し場所ではないか。
そして、この考察をさらに面白くするのが、エリシャの意味深な発言である。
彼はデータに辿り着くためには、直感、知力、精神力、そして苦境を共にする仲間が必要だと語った。さらには時間との戦いを乗り越え、最後の鍵を開けるのはプリシャだという。
ここで私は、ある可能性を考えた。
最後の鍵とは、ジャミーン自身の「声」なのではないだろうか。
例えば、ディスクの情報を取り出すために、本人の声を使った生体認証が必要だったとしたらどうだろう。
つまり、ジャミーンが口を開き、自らの声で言葉を発することが、秘密を解き明かす条件になっているのかもしれない。
もちろん、そんな仕組みが存在するかどうかは分からない。
しかし、もし本当ならば、これほどドラマチックな仕掛けがあるだろうか。
これまで大人たちに守られ、数々の困難を乗り越えてきたジャミーン。
その少女が、自らの声によって世界の未来を切り開く。
何とも美しい物語ではないか。
ただ、エリシャの言葉には、まだ分からないことが多すぎる。
なぜ直感や知力だけでなく、精神力や仲間の存在まで必要なのか。
そして、なぜ時間との戦いが待っているのか。
今の私には、まだ答えが見つからない。
だが、もし本当に羊のぬいぐるみにディスクが隠されているのだとしたら。
ずっと抱きしめてきた宝物の中に、世界を変える秘密が眠っている。そして、その秘密を解き明かすのは、ジャミーン自身の声なのかもしれない。
大人たちがどれほど世界を揺るがそうとも、最後に未来の扉を開くのは、小さな少女の声なのだとしたら。
そんな『VIVANT』らしい奇跡を、私は期待している。
••┈┈┈┈•• ドラマ情報 ••┈┈┈┈••
TBSテレビ『VIVANT』(毎週日曜夜9時~)
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、二宮和也、竜星涼、山中崇、富栄ドラム、濱田岳、小日向文世、松坂桃李
原作・演出・プロデュース:福澤克雄
演出:宮崎陽平、加藤亜季子
脚本:宮本勇人、李 正美、山本奈奈、土井笑生
著者:ペチ
イメージイラスト:サク
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