第20話、ついにその時が来た。
別班員奪還作戦、開始。
ここまで何話もかけて準備してきた作戦が、ようやく実行に移される。待たされた分だけ、見ているこちらの期待も自然と高まっていた。
そして始まってみれば、その期待を裏切らない派手さだった。
赤外線センサーをかいくぐり、敵地へ潜入していく乃木たち。
次々と繰り出される突破策。
極めつけは、ゲルンの手裏剣だ。

思わず笑ってしまうほど漫画的なのに、ちゃんと『VIVANT』の世界に馴染んでいる。
緊張感は確かにある。でも、それ以上に見ていて楽しい。
『VIVANT』はこれまでも、緻密な作戦や情報戦を積み重ねた先で、突然こちらの想像を飛び越えるような一手を放り込んできた。
今回の奪還作戦も、まさにそうだった。
リアリティーだけに寄せるのではなく、ここぞという場面では「そんなことまでやるのか」と笑ってしまうほど大胆に振り切る。
それでも緊張感が崩れないのは、それまでの準備を丁寧に積み重ねてきたからなのだと思う。
何話もかけて情報を集め、救出方法を探り、何度も作戦を練り直してきた。
だからこそ、シャキ城へ突入するひとつひとつの行動に、それまで積み上げてきた時間の重みがあった。だからこそ、その先に置かれた“現実”が重く響く。
待っていたのは、決して綺麗な結末ではなかったのだ。
和田の死。
前回、あれほど壮絶な拷問を受けた姿を見ても、私はどこかでわずかな希望を捨てきれずにいた。
何しろ『VIVANT』だ。
一度は死んだと思った人間が、平然と帰ってくることだってある。だから最後の最後まで、ほんの少しだけ期待していた。
だが今回は、その期待を救ってはくれなかった。全員が無事に帰れるという“綺麗な成功”にはしない。
その事実を誤魔化さなかったことに、『VIVANT』という作品の厳しさを感じた。
漫画のような手裏剣が飛び交い、映画のような潜入劇が繰り広げられる。それでも今回は、人の死まで都合よくひっくり返すことはしなかった。
派手なフィクションの中に、どうしようもなく現実的な喪失が置かれている。その落差こそが、和田の死をより強く印象づけていたように思う。
そして印象的だったのが、そんな和田を前にしたFだ。
いつもは合理的な判断を下すFにも、仲間の死を前にしては割り切れない感情がある。そのことが伝わる場面だった。
あのFの姿を見ていると、別班という存在もまた、任務だけでつながった集団ではないのだと改めて感じる。
派手な奪還劇の中に、決して綺麗事だけでは終わらない現実を残す。第20話は、そんな『VIVANT』の両面を見せてくれた回だった。
だが、まだ喜ぶには早い。
別班員を“奪還”することには成功した。しかし、彼らを無事に日本へ連れて帰ることができるのか。
黒須たちを、そして和田を、日本へ連れ帰って初めて、この作戦は本当の意味で終わる。そう考えると、第20話で成し遂げたのはゴールではなく、ようやく“帰還”へのスタートラインに立っただけなのかもしれない。
本当の意味での作戦成功は、まだ先にある。
ブルーウォーカー太田梨歩はなぜ現地語が分かった? 何気ない一言に隠された違和感……。
一方で、第20話にはもうひとつ、どうしても引っかかる場面があった。
ブルーウォーカーこと太田梨歩だ。

別班員奪還作戦の最中、雷の影響で停電が発生。それまで使用していた同時通訳システムも使えなくなった。
そんな中、フィルザが現地の言葉で予備電源について伝える。当然、東条はその言葉を理解できない。
しかし、太田は、分かっていた。
そして何事もなかったかのように、フィルザの言葉を東条へ伝えている。
ほんの数秒の場面だ。物語全体で見れば、そのまま通り過ぎてもおかしくない。
だが、『VIVANT』でこういう“小さな違和感”を見せられると、どうしても疑いたくなってしまう。
なぜ、太田梨歩は現地の言葉を理解できたのか。
もちろん、一番素直に考えれば、今回の作戦に備えて事前に勉強していた可能性はある。
何より太田にとって、この作戦は黒須を救い出すための戦いでもある。黒須を救いたい一心で必要な知識を身につけていた。それだけなら、むしろ太田らしい理由だ。
ただ、本当にそれだけなのだろうか。
シーズン1から“ブルーウォーカー”という圧倒的なハッキング能力を見せながらも、太田自身の過去について、私たちはそれほど多くを知らない。
だからこそ今回の何気ない一言が、妙に引っかかる。
単なる語学力なのか。
黒須を救うために身につけたものなのか。
それとも、太田にはまだ明かされていない過去があるのか。
現時点では、これ以上のことは分からない。
ただ『VIVANT』という作品が、わざわざ見せた“小さな違和感”を、そのまま何もなかったことにするとも思えない。
別班員奪還作戦は、まだ終わっていない。
そして同時に、ブルーウォーカー・太田梨歩という人物の物語も、まだ私たちが知っている顔だけでは終わらないのかもしれない。
次に太田が何を見せるのか。
しばらく、この“小さな違和感”を頭の片隅に残しておきたい。
••┈┈┈┈•• ドラマ情報 ••┈┈┈┈••
TBSテレビ『VIVANT』(毎週日曜夜9時~)
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、二宮和也、竜星涼、山中崇、富栄ドラム、濱田岳、小日向文世、松坂桃李
原作・演出・プロデュース:福澤克雄
演出:宮崎陽平、加藤亜季子
脚本:宮本勇人、李 正美、山本奈奈、土井笑生
著者:ペチ
イメージイラスト:サク
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