止まっていた時間が、ようやく動き出した。
3週間ぶりに、私の日曜日に『VIVANT』が帰ってきた。
そんな待ちに待った後半戦の幕開け。
さぞかし派手な一発をぶち込んでくるのだろうと思っていた。
しかし、第19話が見せたのは少し違った。
物語を大きく動かすというよりも、これから物語を大きく動かすために、必要な情報をひとつずつ丁寧に並べていく。
別班員救出に向けて動き出す乃木(堺雅人)たち。
そして、少しずつ輪郭を現し始めたエリシャを巡る過去。
後半戦という巨大な物語を走らせるため、その足元を固めるような1時間だった。
中でも一気に情報量が増えたのが、エリシャにまつわる物語だ。
これまで「核融合技術を握る人物」として物語の中心にいたエリシャに、ベキ(役所広司)、テント、そして“プリシャ”という新たな線がつながった。

情報が増えれば、普通なら少しずつ謎は減っていく。
しかし『VIVANT』は違う。
エリシャの過去が明らかになればなるほど、今度は「なぜベキはプリシャを連れ去ったのか」という新たな疑問が生まれ、その答えを探そうとすれば、シーズン1から見てきたテントという組織や、ジャミーンという少女の存在、そのジャミーンに付きっきりの柚木薫(二階堂ふみ)の素性まで、改めて振り返りたくなってくる。
前へ進んでいるはずなのに、気づけば物語の始まりへと連れ戻されている。第19話を見ながら、そんな不思議な感覚に陥った。
考えてみれば、『VIVANT』はずっとそういう作品だった。
その瞬間には何気なく見えた言葉や行動が、数話後に新たな情報を与えられたことで、まったく違う意味を持ち始める。
例えば、シーズン1の第1話。
ベキはジャミーンについて、「また1人にさせてしまった」と口にしていた。
当時はその言葉をそのまま受け取っていたが、第19話でエリシャの娘“プリシャ”の存在が明らかになった今、もしプリシャとジャミーンが同一人物だとしたら、この言葉の意味まで変わってくる。
たった1つ新しい情報が加わるだけで、何年も前に見た場面にまで新たな意味が生まれてしまう。
だから、このドラマは油断できない。
そして今回もまた、私たちがすでに知っていると思っていた物語の景色が、少しずつ変わり始めている。
ただ1つだけ確かなのは、第19話で置かれた情報の数々が、単なる過去の説明だけで終わるとは思えないということだ。
後半戦が始まったというのに、『VIVANT』は急いでゴールへ向かおうとはしない。
むしろ一度立ち止まり、これから起こる出来事に意味を持たせるための土台を、恐ろしいほど丁寧に作っている。
だからこそ思う。この第19話は、派手ではなかったのかもしれない。
だが、“何かが起こりそうな匂い”は、これまで以上に濃かった。
3週間、止まっていた時間は動き出した。
けれど『VIVANT』が最初に動かしたのは、物語そのものだけではない。
私たちの中で一度は止まっていた、シーズン1からの「なぜ?」まで動かし始めたのだ。
そう考えると、第19話は後半戦の“始まり”であると同時に、これまでの『VIVANT』をもう一度見つめ直すための回だったのかもしれない。
再び『VIVANT』に振り回される日曜日が始まる。
エリシャとベキの知られざる繋がりとは……そしてプリシャ=ジャミーンなら柚木薫のある疑惑が急浮上!
さて、ここからは第19話で一気に増えたエリシャ周辺の情報について考えていきたい。

前半でも少し触れたが、今回の情報を整理していくと、どうしても1人の少女にたどり着く。
ジャミーンだ。
第19話では、エリシャに“プリシャ”という娘がいたこと、そしてそのプリシャをベキと思われる人物が連れ去ったことが明らかになった。
では、そのプリシャは今どこにいるのか。
ここで浮かび上がってくるのが、「プリシャ=ジャミーン」という可能性である。
だが、もしこの仮説が正しいのなら、第19話で明らかになったのは単なるエリシャの過去ではなくなる。
テントがエリシャの元に行ったのは偶然なのか。またそこでプリシャを連れ去った意図はなんなのか。そしてシーズン1からジャミーンのそばにいた、柚木薫という人物。
これまで別々に存在していたはずの謎が、“プリシャ”という1人の少女を中心に、つながり始めるのだ。
まず気になるのは、エリシャとテントの関係である。
劇中では、タイランと敵対する組織から依頼を受け、テントがエリシャの元へ向かったことが語られている。
ならば、これは単なる「仕事」だったのか。私は、そこに少し引っかかっている。
なぜなら、現場にいたと思われる人物が、ノゴーン・ベキだからだ。
巨大な組織の頂点に立つベキが、自らエリシャの元へ向かった。
もちろん、依頼の重要度がそれだけ高かった可能性もある。
しかしエリシャが、世界の勢力図すら変えかねない核融合技術を握る人物であることまで考えると、ベキとエリシャの間には、この一件以前から何らかの接点があったのではないかとも思えてくる。
核融合技術者・エリシャ。
そして、テントの“偉大なる指導者”ノゴーン・ベキ。
この2人は、本当にあの日初めて出会ったのだろうか。
例えば、エリシャの研究やその思想をベキが以前から知っていた。
あるいはエリシャ自身とベキが、何らかの形で交流していた。
そう考えるともう1つの不可解な行動にも意味が生まれてくる。
プリシャを“連れ去った”ことだ。
なぜ依頼を遂行するために現れたテントが、エリシャの幼い娘を連れていく必要があったのか。
これは“誘拐”ではなく、タイランたちからプリシャを助け出したと考えていいだろう。重要なのは、その先だ。
私はここにも、エリシャが持つ“核融合技術”が関係していると考えている。
ベキはエリシャとプリシャを守ることで、同時に核融合技術そのものを守ろうとしたのではないか。
世界の勢力図さえ変えかねない技術だからこそ、1つの国や組織の手に渡してはならない。
そして、ベキがプリシャまで守ったことを考えると、プリシャ自身が核融合技術を巡る“何か”の鍵を握っている可能性もある。
さらに、もし、そのプリシャがジャミーンなのだとしたら……。どうしても気になる人物が1人いる。
シーズン1から、そのジャミーンのすぐそばにいる人物。柚木薫だ。
プリシャを救ったのがベキなら、今ジャミーンを守っている薫は、一体何者なのだろうか。
シーズン1から、その素性にはどこか謎が残されていた薫。
もし彼女がジャミーンの“本当の素性”を知ったうえでそばにいるのだとすれば、薫自身もテントと何らかの関係を持つ人物である可能性が浮かび上がってくる。
もちろん、現時点ではまだ推測に過ぎない。
ただ、第19話によってエリシャ、ベキ、プリシャ、そしてジャミーンが1本の線でつながり始めた今、そのすぐそばにいる薫を無視することはできない。
後半戦、柚木薫がどんな動きを見せるのか。再び、この人物から目が離せなくなってきた。
••┈┈┈┈•• ドラマ情報 ••┈┈┈┈••
TBSテレビ『VIVANT』(毎週日曜夜9時~)
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、二宮和也、竜星涼、山中崇、富栄ドラム、濱田岳、小日向文世、松坂桃李
原作・演出・プロデュース:福澤克雄
演出:宮崎陽平、加藤亜季子
脚本:宮本勇人、李 正美、山本奈奈、土井笑生
著者:ペチ
イメージイラスト:サク
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