野崎(阿部寛)は裏切っていない。これは考察でなく「願い」だ。
第1シーズンから乃木(堺雅人)たちと共に数々の危機を乗り越え、裏の組織「別班」と表の組織「公安」という関係でありながら、いつしか立場を超えた信頼関係を築いてきた乃木と野崎。
立場も違えば、持っている情報も違う。
乃木は全てを話せないし、野崎も全てを知ることはできない。
それでも二人は、何度も相手の行動からその真意を読み取り、ときには疑いながらも、最後には相手を信じることで数々の危機を乗り越えてきた。
言葉で確認し合ったから生まれた信頼ではない。
言葉にできないものがあるからこそ、相手が何を考え、何を伝えようとしているのかを読み解いて深まっていった絆だ。
そんな2人の少し不思議で、だからこそ尊い信頼関係に、私はずっと惹かれてきた。
だからこそ疑いたくないのだ。
そんな野崎に突如として突きつけられた「裏切り」の可能性。

何より巧妙だったのは、野崎へ辿り着くまでの流れである。
これまで追い続けてきた新庄(竜星涼)とチョッキー。
ようやく2人を確保し、別班員拉致事件の真相へ大きく近づいた……そう思った。
しかし、2人は別班員たちの行方を知らなかった。
またしても振り出しに戻されたかと思えば、今度は疑惑が日本国内へと向けられていく。
そこで浮上したのが東条(濱田岳)。さらに調査を進めると和久井(田中俊介)へ。
そして、その先で待っていた人物こそが、野崎だった。
1つの疑惑を追うたび、また次の人物へ。
まるで1本の糸を手繰り寄せるように真相へ近づいていき、その糸の先にいたのが、誰よりも疑いたくない男だった。
「なんで野崎さんが!」

涙を浮かべながらそう叫んだ乃木の姿は、私たち視聴者の気持ちそのものだったように思う。
第1シーズンを通して、視聴者が時間をかけて信頼してきた人物を、続編で再び疑わせる。
積み重ねてきた信頼が大きければ大きいほど、それが崩れかけた瞬間の衝撃も大きくなる。
そこまで計算したうえで野崎守という男を「最大の裏切り者」と疑われる立場まで追いやるところに、『VIVANT』という脚本の恐ろしさと覚悟を感じずにはいられなかった。
そして考察において「この人だけは裏切っていてほしくない」という感情ほど危険なものはないと分かっている。
それでも、私は野崎だけは疑うことができない。
そう思わせるほど、いつの間にか私は野崎守という男が好きになっていたのだ。
だからこそ、ここで考察を終わらせるわけにはいかない。
記事の冒頭で「野崎は裏切っていない」と書いた。
今はまだ、それは願いに過ぎない。
では、その願いを「考察」に変えることはできるのだろうか。
第13話に残された手掛かりから、野崎守の真意を探っていきたい。
野崎が裏切っていない証拠がここにある。「最大の裏切り者の存在」を徹底考察!
ここからは「願い」ではなく「考察」の時間だ。
第13話で野崎に疑惑が向けられた理由は、大きく2つある。
1つは、野崎が拉致された別班員5人の所在を知り得た11人のうちの1人だったこと。そしてもう1つが、ベキたちが脱走した2023年3月21日に野崎が和久井の携帯電話を使ってクーダンの飛行訓練所へ電話をかけていたことだ。
さらに、新庄の逃亡を追う過程では、東条が空港の映像に不自然なノイズを入れていたことも判明した。しかし、東条は別班員5人の所在を知り得た11人には含まれていない。
つまり東条の工作だけでは、別班員5人の情報が漏れたことまでは説明できない。そこで、別班員5人の所在を知る11人に含まれていた野崎に疑惑が向けられた訳だ。
ここまでを見ると、野崎が「裏切り者」と疑われるのも無理はない。
しかし私は、むしろここまでの“裏切り”そのものが、野崎の作戦なのではないかと考えている。
つまり野崎は、本当に裏切ったのではなく「あえて裏切り者を演じている」のではないだろうか。その理由として私が疑っているのが、別班内部に潜んでいる“本当の敵”の存在である。
そして現時点で、その人物として私が最も疑っているのが長野(小日向文世)だ。

第13話によって、長野が東南アジア方面を統括する「別班」であることが明らかになった。
しかし「長野が別班であること」と「長野が乃木たちの味方であること」は、必ずしもイコールではないからだ。
長野は別班でありながら、別班を狙っている人物なのかもしれない。
もし野崎もまた、別班内部に潜む敵の存在を疑っているのだとしたら……。
今回の不可解な行動にも、1つの可能性が浮かび上がってくる。
野崎は“本当の敵”を欺くために、あえて裏切り者を演じているのではないだろうか。そして、その作戦を成立させるために、乃木にすら真実を明かしていない。全ては、別班内部に潜む“本当の敵”を欺くため。
ここからさらに、もう一歩踏み込んでみたい。
野崎は、本当に乃木まで騙せているのだろうか。
もしかすると乃木は、すでに野崎の真意を読み解いているのではないだろうか。
つまり、野崎は乃木を騙している。
しかし乃木は、野崎に騙された“フリ”をしている。
そんな二重構造である。
もし乃木自身も長野を疑っているのであれば、野崎の真意に気づいたとしても、それを表に出すことはできない。野崎の作戦に気づいたことを“本当の敵”に悟られてしまえば、全てが水の泡だからだ。
野崎は「裏切り者」を演じ、乃木は「裏切られた男」を演じる。
もし2人が言葉を交わすことなく、互いの真意を読み合いながら同じ敵を欺いているのだとしたら、私が魅了されてやまない、あの尊い関係性は今も続いていることになるのだ。
第1シーズンでは、「裏切ったフリをする乃木」と「その真意を読み解く野崎」という構図が描かれていた。
ならば、第2シーズンでは関係そのものが反転し「裏切ったフリをする野崎」と「その真意を読み解く乃木」という構図を私は期待してしまう。
振り返ると、長野には怪しく見える言動もあった。
それが乃木に語った「愛する人がいるなら大事にしなさい」という言葉である。
一見すれば、会社の部下であり、別班の後輩でもある乃木を思っての言葉に聞こえる。
しかし、もし長野が乃木を狙う側の人物なのだとしたら、全く違う意味にも見えてくる。
乃木にとって「愛する人」は、同時に「守らなければならない人」でもある。
つまり、最強とも言える乃木憂助に生まれる数少ない弱点になり得るのだ。
長野は、薫という存在を乃木自身の口から改めて確認したかったのではないだろうか。(薫に電話させたのも、居場所をハッキングするため? )
もちろん、現時点ではこれ以上のことは分からない。
ただ、何気ない人生のアドバイスに見えた“あの会話”まで怪しく見えてしまうあたり、私の中で長野への疑いはまだ晴れていない。
長野には申し訳ないが、私は第1シーズンで特に何もしなかった貴方より野崎を信じたい。
••┈┈┈┈•• ドラマ情報 ••┈┈┈┈••
TBSテレビ『VIVANT』( 毎週日曜夜9時~)
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、二宮和也、竜星涼、山中崇、富栄ドラム、濱田岳、小日向文世、松坂桃李
原作・演出・プロデュース:福澤克雄
演出:宮崎陽平、加藤亜季子
脚本:宮本勇人、李 正美、山本奈奈、土井笑生
著者:ペチ
イメージイラスト:サク
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