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あぁ、だから一人はいやなんだ。

2026.10.30 公開 ポスト

第280回 続・めぐり合わせいとうあさこ

前回、『あさこ・梨乃の5万円旅』で起きたいろんな“めぐり合わせ”を書きましたが、なんだか考えてみると、まだまだあるな、ということで“続き”をば。

 

今年も『世界の果てまでイッテQ!』でまいりましたお遍路。“温泉同好会 お遍路ツアー”と題しまして、昨年から始まりましたこの企画。昨年は徳島県の第1~23番札所をまわり、今年はその続き。高知県の第24~39番札所へ。高知は箇所数で言ったら徳島より少ないですが、四国で一番広い県で一番少ない箇所、ということは? そうです、それぞれが離れている、ということです。特に最後の方の第38番札所・金剛福寺は足摺岬にあり、その前の第37番札所・岩本寺から歩くと27~30時間くらいかかると。まあ我々は車で移動しておりますから全然なのですが。あとはずいぶん階段をのぼるお寺が多かった印象。なかなかハードな道のりなのです。でもね、海沿いが多くて。だって今回お遍路ツアーのスタートになった室戸岬にある御厨人窟(みくろど)という洞窟から見える空と海から“空海”の名が生まれたくらいですもの。海が大好きな私としてはかなり好きな場所でした。お遍路をしている人が少ない夏を選んで伺っておりますが、そんな暑い時期でも、いや、暑いですよ。かなり暑く、汗ダラダラかきましたけれども、何かが爽快と言うか。どこか心地よさを感じて歩いておりました。

そんな旅の最後の方で出会った一人の中学生?くらいの男の子。家族でお遍路にいらしてまして。聞くところによると、なんと我々のお遍路のファンだと。昨年1回放送しただけなのに、また次のお遍路を楽しみに1年間『イッテQ!』を録画していてくれた、と。ああ、ウソみたい。だって前回のスタジオでは「おじさんおばさん世代しか観ないのでは?」と心配されていたほどのこのコーナー。そんな稀有な方と、しかもたまたま、ピンポイントにお互いお遍路中にすれ違えるなんて。本当にご縁、です。

他にも今、大学4年生で就職も決まっていて。就職したらこんな時間とれないだろうから、と一人でレンタカーして、お遍路の旅をしている、という方。一度お遍路はやったことがある方で、しかもちゃんと歩いて一周したそうで「高知は“ご接待”文化がかなり強くて。食べ物もくれたり、泊まるとこ提供してくれたり。ただ、一回『これ持ってけ』って一升瓶渡されて。『これ持ちながら歩けません』って申し訳ないけどお返ししたんですよ」なんて笑いながら教えてくれた30歳前後くらいの男性。「あ、桂浜の方に山里さんいましたよ」と、どうやらライブか何かでいらしてた山里さん情報をくださった方も。いろんな出会いの中、四万十川で水中禅をしたり、宿坊に泊まった時にそのお寺のご子息が見事なよさこいを披露してくださったり、今年もやっぱり一人で5カ所まわったり。途中、カツオのたたきをはじめ、バーガーや焼肉食べ放題などの“煩悩”も混ぜ込みながら、無事に高知県もまわることができました。次回は愛媛県。また元気にまわれるよう、健康に留意せねば、ですね。

そしてもう一つ“めぐり合わせ”を。実は先日、伯父が亡くなりまして。94歳。伯父の息子であるいとこによると、本当に自分の好きに生きた、と。伯父は本当にオシャレで社交的で、何か人の色気、みたいなものを感じる、大好きな人だった。昔は猟もしていて、時折、獲った鴨を帰り際、ウチに寄って届けてくれて。それをお肉屋さんにさばいてもらい、その日の晩は鴨鍋になるのですが、小さな弾が出て来たりして。ドキドキしたのを覚えています。あと4年前『ファミリーヒストリー』のインタビューにも答えてくれて。祖父や、妹である母の話なんかをたくさんしてくれた。今回、葬儀は神式で執り行われまして。祭司さまが読み上げる祭詞の中に伯父の歴史が書かれていて。ヨットで海に出た、だの、カラオケやゴルフも好き、だの。でも一方で仕事には厳しく、など、細かく、そしてたっぷりと、独特な節回しで読み上げられていく。伯父の人生を、豪快に笑った顔を思い出しながら、しみいるように聞いた。

さて、“めぐり合わせ”ですが、それはその祭司さまで。葬儀の前に祭司さまが母と何か喋っているのを見かけまして。聞くところによると、私が中学1年生の頃から飼っていたビーグル犬のビー。一度お父ちゃんになりまして。その時の子どもたちは、何かしらのご縁あるところにそれぞれもらわれていったのですが、そのうちの一匹が作家の平岩弓枝さんのお宅へ。実はこの祭司さま、平岩弓枝さんのお嬢さんだったのです。子どもの頃やってきたそのビーグル犬の様子や、お母さまである弓枝さんのクッキー(ビーグルの名前)への溺愛っぷりなど、いろんなお話をしてくださいました。一番楽しかったのは、弓枝さんが随筆などでお子様のことをネタになさることがよくあり。ただその祭司さま含め、子どもたちは就職のタイミングで「もう自分たちのことを書くのは辞めてほしい」とおっしゃったそうで。すると弓枝さん、子どもたちのことを書くのを一切やめ、クッキーのことを書き始めて。でクッキーのことを書いた原稿で入ったお金はちゃんとクッキーの貯金としてとっておいたそう。ビーの子どももめちゃくちゃ愛されて、幸せに暮らしていたんだなぁ。まさかのもらわれていった後日談を聞く日がくるなんて。なんだかすごく優しい、幸せな気持ちになりました。いやはや、こんなご縁、あるものなんですね。時を越えて、伯父がめぐり合わせてくれたご縁。あとこないだ久しぶりにビーとコー(ビーの後に飼ったコーギー。伊藤家の命名のシンプルさがバレますね。)のお墓参りに行ったのもあるのかしら。とにもかくにも不思議な、そしてすてきなめぐり合わせでありました。

あ、最近なんだかお線香の匂いが好きで。家でもお線香、焚いたりしております。きっと今、誰かウチに来たら「おばあちゃんちのにおい」とか言われるかも。今回のお遍路の際、金剛福寺で頂戴したお線香を焚きながら、伯父の思い出でも思い返してみましょうか。じょーじ伯父ちゃん、本当にありがとうございました。

【本日の乾杯】目玉焼き。こんな“朝食”感溢るる“おつまみ”。結構よくします。これにサラッとしたウスターソースをかけて。あ、ベーコンは伊藤ハムですよ、もちろん。

関連書籍

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。4』

震えながら歩いた、高さ180メートルの吊り橋のケーブル。座薬にすがった入院生活。中2で転校した親友との再会。台湾でなぜか私だけ、100カ所以上の虫刺され。強風に泣いた初ソロキャン。目玉焼きを食べただけなのに、真っ二つに折れた歯。そして、突然目覚めた“94キロの男を肩に乗せる”という才能。―― 今日もあさこは、生きている。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。3』

海への恐怖を感じた、初めての遠泳。4人で襷を繋いだ「24時間駅伝」。お見合い旅inマカオ。“初”キスシーンに、“初”サウナ。ドラクエウォークで初めての高尾山。接続できずに大騒ぎのリモート飲み会。拍子抜けだった大腸検査。ブームに乗って、のんびり「おばキャン」、のつもりが……。いくつになってもあさこの毎日は初めてだらけ。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。2』

セブ旅行で買った、ワガママボディにぴったりのビキニ。いとこ12人が数十年(?)ぶりに全員集合して飲み倒した「いとこ会」。47歳、6年ぶりの引っ越しの、譲れない条件。気づいたら号泣していた「ボヘミアン・ラプソディ」の“胸アツ応援上映”。人間ドックの検査結果の◯◯という一言。ただただ一生懸命生きる“あちこち衰えあさこ”の毎日。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

ぎっくり腰で一人倒れていた寒くて痛い夜。いつの間にか母と同じ飲み方をしてる「日本酒ロック」。緊張の海外ロケでの一人トランジット。22歳から10年住んだアパートの大家さんを訪問。20年ぶりに新調した喪服で出席したお葬式。正直者で、我が強くて、気が弱い。そんなあさこの“寂しい”だか“楽しい”だかよくわからないけど、一生懸命な毎日。

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