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あぁ、だから一人はいやなんだ。

2026.07.15 公開 ポスト

第273回 チュニジアいとうあさこ

『世界の果てまでイッテQ!』番組20年目企画で行われている“世界遺産駅伝”。その7区、私と川村エミコでチュニジア共和国へ行ってまいりました。実は最初、チュニジアと聞いた時、正直ちょっとだけガッカリしたんです。と言うのも私、初アフリカでして。だからゾウだ、キリンだ、の方のアフリカに行きたかった。すぐ近くに野生の動物たちを感じられるような、そんなアフリカ。だってYouTubeでナミビアの野生動物の様子が見られる24時間ライブ映像、めっちゃチェックしているくらい好き。だからチュニジアの知識がないのも相まって、あまりピンとこないままチュニジアへ。でもでもそれをひっくり返すほど、“素敵”の連続でした。

 

我々は首都チュニスの街中で6区セネガルの大石ライアン大祐くんから襷を受け取った。大石くんも初一人ロケで、おそらくめっちゃくちゃ頑張ってきたであろうことが、その姿からなんかものすごく伝わってきた。6個のバッジがついた、新旧いろんな仲間で紡いできたその襷。番組20年の重さがビンビン来まくり。それだけでもう感動です、ええ。

さあ、いざ世界遺産へ。ただ空港でいろんなトラブルが続出。なかなか出られず&交通渋滞も重なり、世界遺産の撮影許可の時間がたった18分に。近くにロケバスを停めて、猛ダッシュで向かう。その辺りは普通にジーンズとか売っているお店があって、こんなところに世界遺産が? みたいなところ。角を曲がると目の前に世界遺産“エル・ジェムの円形闘技場”。約1800年前に建造されたはずなのに保存状態がよく、一瞬、世界遺産だとはわからなかったくらい。とにかく急いで中へ。どこ行ったらいいかわからないほど階段や通路だらけでしたが、とりあえず直感で進み、なんとか闘技場の真ん中へ。急にひらけたそのアリーナは、かつては人と人、人と猛獣が死闘を繰り広げていた場所。恐ろしいよ。歴史としたらとんでもないところです。ただ、そういうこととは別で、なんかね。泣けてきた。本当にね、何の涙だか自分でもわからない、まったく。でもなんか溢れてきてしまって。歴史の圧、って言うのかしら。1800年間、もちろん崩れている部分はあるけれど、そこにいた、というそのことに、かな。胸がギューッとなった。

ただね、そんなわけで時間がないんです。残り7分。上にも行ってみようと。コロッセオの高さは36メートル、ビル10階分。無限に思えるほど長い階段を56歳、再び猛ダッシュで駆け上がる。太陽が沈む前の、夕日に照らされる闘技場を上から見る。1800年の歴史ある建造物の周りにひろがる現代の町。その歴史深き美しい景色を一生忘れないほど、めっちゃ目に焼き付けた。

翌日はサハラ砂漠へ。ガタガタ道を車でいくこと約5時間。ほとんどが乾いた黄土色の風景で。本物の砂漠を見たことない私は「これもう砂漠じゃない?」何度も聞いた。でもその度に、サハラ経験ありのカメラマン金光さんが「もし“砂漠ツアー”に申し込んで、ココです、って車降ろされたら、あさこさんどう思う?」と。確かに枯れ木みたいな感じではあるけれど、まあまあ植物は生えていて、想像する“一面砂”ではない。「怒るかも。」「でしょ? それが答えです。」そんな“金光構文”を何度も繰り返しながら、時にみんなの“おにぎりの具1位当てクイズ”をしたりしながら、サハラ砂漠に到着。金光さんの言った通りだった。一面、砂、砂、砂。しかもその砂が見たことない細かさ。サラサラ、なんて言葉じゃ足りないくらいサラサラ。それが風でめっちゃくちゃ口に入って来るので、最初は口をゆすいでたりしたけどエンドレスだったので、もう開き直り。結果数日間、口の中のジャリジャリを楽しみながら噛んでおりました。どうも、妖怪“砂食べ女”です。

今回はサハラ砂漠で一泊キャンプ。それがねえ、ホント、たまらなく素晴らしい時間でした。まずは夕日。サラサラ過ぎてめっちゃ登りにくいけれど、出来るだけ高い丘を探して登る。丘の上に座って見たその景色はもう……もろ明菜ちゃんじゃん!『SAND BEIGE-砂漠へ-』じゃん! 歌い出しの♪サハラの夕日をあなたに見せたい、じゃん! 風で出来た、波のようにも見える無数の丘がオレンジに照らされて、その雄大さは圧巻。地平線に太陽が隠れるまで夢中で見ていた。そこから今度は無数の星の登場。ディレクター藤野さんが得意のギターで『見上げてごらん夜の星を』弾いてくださいまして。その演奏がなんと優しいことか。♪ささやかな幸せを祈ってる、と歌ったとたん、涙止まらず。なんなんだ、今回。自分でも説明つかない涙ばかり。“幸せ”って言葉にもってかれたのかな。でもホント、幸せを祈ってる、です。

砂漠で一泊なんて一生ないでしょうから、あまり寝る気にならず。撮影終わってからも、星見ながら藤野さん金光さんと3人でちょっとお酒を飲んだ。なんと贅沢で平和な時間。そこから数時間後、起床。こうなったら日の出も、です。昨日地平線に沈んだ太陽が顔を出した。おはよう。太陽がのぼると命が動き出す。小さなフンコロガシが一生懸命歩いていて。砂の上にその小さな足跡がキレイな模様となって続いていく。小さなサソリもいた。サソリは尻尾を引きずっているので、足跡の他にまっすぐな線もついて美しい。もう、こんな景色見たことない、のオンパレード。広大な砂漠で、しかもたった一人で満喫するその世界。贅沢過ぎるにもほどがある。

そんな世界遺産駅伝のアフリカは我々でラスト。次からいよいよヨーロッパへ。8区のポルトガルへ向かうのはガンバレルーヤ。もう仲間と言うか家族のような二人の姿が見えたら、また涙。もうなんなのよ私。でも本当に嬉しかったんです。無事に襷がつなげてよかった。そんなわけでゾウやキリンには会えなかったけど、日本列島の約25倍の砂漠でたった10センチくらいの珍獣・サンドフィッシュに出会えたし。町で晩御飯の時、どこからかケーンと鳴き声が聞こえてその主を探したら、屋根の上にクジャクがいたし。羊を路上で焼いてくれる食堂の外で、一口もらおうと待ってたニャンコもかわいかったし。チュニジア、本当に最高でした。さあ、次はどの国で誰と襷を繋ぐかな。世界遺産駅伝、まだまだ続きます。

【本日の乾杯】見えるかな?北斗七星@サハラ、です。おつまみが、星。ちなみに下の光は、一晩まわす星用カメラを設置する金光さんの明かり。最高の、そして極上のおつまみです。

関連書籍

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。4』

震えながら歩いた、高さ180メートルの吊り橋のケーブル。座薬にすがった入院生活。中2で転校した親友との再会。台湾でなぜか私だけ、100カ所以上の虫刺され。強風に泣いた初ソロキャン。目玉焼きを食べただけなのに、真っ二つに折れた歯。そして、突然目覚めた“94キロの男を肩に乗せる”という才能。―― 今日もあさこは、生きている。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。3』

海への恐怖を感じた、初めての遠泳。4人で襷を繋いだ「24時間駅伝」。お見合い旅inマカオ。“初”キスシーンに、“初”サウナ。ドラクエウォークで初めての高尾山。接続できずに大騒ぎのリモート飲み会。拍子抜けだった大腸検査。ブームに乗って、のんびり「おばキャン」、のつもりが……。いくつになってもあさこの毎日は初めてだらけ。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。2』

セブ旅行で買った、ワガママボディにぴったりのビキニ。いとこ12人が数十年(?)ぶりに全員集合して飲み倒した「いとこ会」。47歳、6年ぶりの引っ越しの、譲れない条件。気づいたら号泣していた「ボヘミアン・ラプソディ」の“胸アツ応援上映”。人間ドックの検査結果の◯◯という一言。ただただ一生懸命生きる“あちこち衰えあさこ”の毎日。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

ぎっくり腰で一人倒れていた寒くて痛い夜。いつの間にか母と同じ飲み方をしてる「日本酒ロック」。緊張の海外ロケでの一人トランジット。22歳から10年住んだアパートの大家さんを訪問。20年ぶりに新調した喪服で出席したお葬式。正直者で、我が強くて、気が弱い。そんなあさこの“寂しい”だか“楽しい”だかよくわからないけど、一生懸命な毎日。

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