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あぁ、だから一人はいやなんだ。

2026.10.15 公開 ポスト

第279回 めぐり合わせいとうあさこ

先日オンエアになりました『あさこ・梨乃の5万円旅』。かたせ梨乃さんと二日間予算5万円の旅。今回で第25弾。びわこ箱館山から比叡山延暦寺へ、琵琶湖の周りをぐるり、ゲストの本田望結ちゃんとまわってまいりました。

 

実はこの辺り、『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』で2018年春に行ったんですよね。その時は今回と逆回りで、びわ湖バレイ付近から出発して、反時計回りで琵琶湖大橋を渡って、近江八幡へ。途中、淡水湖で唯一の有人島・沖島に寄って、最後、ひこにゃんが待つ彦根城でゴール、というルートでした。なので今回の旅と、近江八幡から彦根城の辺りは重なっているのです。そこでね、ありました、再会。旅2日目だったのですが、朝昼兼用ご飯を近江八幡近辺でいただこうと。駅の観光案内所でお薦めされたのが“初雪食堂”。あれ? 何か聞き覚えが? そうです、出川さんの旅の時に立ち寄らせていただいた食堂なのです。8年前同様、今回も超突然伺っているのにおかみさんが覚えていてくださって。「食べてってくれる?」という、なんとも優しいお声がけまで。確か前回は豚肉を卵でとじた他人丼でしたが、今回はカレーラーメンを注文。56歳、わんぱくにも白米もつけて。鶏ガラスープにカレールー、たっぷり野菜と豚肉&細麺。最高過ぎます。もうこういう食べ物は罪が深い。やめ時がわからないんですよねぇ。結局、一滴も残さず最後までご飯とスープをいただいちゃった。本当にごちそうさまでした。いつかまた伺いたいです。

そしてこの旅ではもう一つ、とても大きな発見が。それは旅1日目、長浜にて。最初に渡される地図に各所いろいろイラストが描かれているのですが、長浜はお城、巨大万華鏡、ワイナリーなど盛りだくさん。その中に“焼鯖そうめん”という長浜名物のお料理もあるとのこと。そこで乾杯といきますか、と駅で教えていただいた成駒家さんというお店へ直行。“焼鯖そうめん”は鯖を炊いた出汁でそうめんを味付けした郷土料理。昔からこの地域に“五月見舞い”という、農家に嫁いだ娘に親が焼鯖を届ける風習があったそうで、それを甘辛く煮て、手早く食べやすいおそうめんと合わせていただいたのが始まりだとか。それがもう美味しくて。なんかお食事、というよりはもうつまみとかおかずとかそんな感じ。完全にビール、すすみます。

いただいている途中にご主人が顔を出してくださいまして。元々は大和郡山の方で明治20年創業したお店でご主人は6代目だとか。するとご主人、梨乃さんに「撮影を見に行ったんですよ」と話しかけられまして。実は梨乃さん、1994年公開のシリーズ47作目「男はつらいよ 拝啓車寅次郎様」のマドンナをやられて。その時の舞台がこの長浜だったんです。その撮影時、琵琶湖まで見に行かれたと、ご主人も本当に嬉しそうでした。

そんな30年以上ぶりのマドンナとの対面、くらいビックリのご縁が発覚したのはこの時。梨乃さんは映画で、琵琶湖のほとりで湖の写真を撮っている役だったのですが、その時のことを思い出して「『琵琶湖周航の歌』とか歌いながら写真撮っていたのよねぇ。」とつぶやかれたのです。え? 琵琶湖周航の歌? なんだろ。聞き覚えが、すごくある。なんか父方の祖母がなんとか、みたいなことを聞いた事がある気が。早速妹にLINEしてみる。「琵琶湖の歌とばんたん(父方の祖母のことをこう呼んでいた。ちなみに祖父は“じんたん”。)ってなんか関係なかったっけ?」すぐに妹からの返信。「作詞家の小口太郎がばんたんのおじさんだよ。」おお! やっぱり! 確かウチにも『琵琶湖周航の歌 小口太郎と吉田千秋の青春』という本が本棚にあったっけ。更には妹の娘、要は私の姪っ子は更に“伊藤家”の歴史に詳しく(妹曰く“ご先祖マニア”だそう)、私が持っているのとは別の本が実家にあるのを知っていて、そこからの長い引用文も送ってくれた。そこには祖母が“太郎叔父”のことを話しているところが書かれておりました。書き出しは“「小口太郎」……懐かしい名前です。私の幼いころから、小学校五、六年頃の記憶に残る優しい眉目秀麗、そして頭脳明晰な若い学者であった叔父でした。”他にも小学生の頃、近所で太郎叔父が一人暮らしをしていて、日曜毎に太郎叔父の家へ食べ物を運んだり、掃除・雑巾がけをしに行った、とか。その家がいつも寝床は敷きっぱなし、食べた食器はそのまま、原稿用紙、紙屑は足の踏み場もない位に散らばっていたので、祖母が「おじさん、もう少しきちんとしたらどう?」と文句を言うと、太郎叔父はニヤニヤ笑って「そんな事する位なら寝ているよ」と言った、とか。関東大震災の時は連絡がすべて途絶えてしまったけれど、太郎叔父が中央線の汽車の屋根にしがみつき、諏訪から真っ黒になって安否の確認に来てくれた、とか。まるで何か物語を聞いているかのように夢中になってその文章を読んだ。

移動の電車の中でこのことを梨乃さんに伝えた。だって、すごくないですか? 大女優さんとお笑いというまったく別の世界で生きていたのに、“同窓生”ということから一緒に旅をするようになり。年齢こそ違えど、何か感覚が似ていると思う場面も多々あって。その梨乃さんが、寅さんのマドンナになった舞台が長浜で。『琵琶湖周航の歌』を何度も口ずさむシーンが出てくる。その曲を作ったのが私の祖母の叔父さんで。それを長浜の旅をしている時に、たまたま話が出て、わかることになり。もうなんか梨乃さんとのご縁の強さをより一層感じちゃった。なんだか琵琶湖を見る目もちょっと変わったというか。勝手になんか懐かしい気持ちになっちゃったりして。

他にも今回の旅は“横断歩道越しにちょっとだけ見た夕焼けの長浜城”“めっちゃ遠くから眺めた彦根城”“ガッツリ登った安土城址”と城満載だったり。舞妓さんとの勝負『金比羅船々』が楽しすぎて、勝負が決まってカメラも止まっているのに、まだやっていただいたり。映画『国宝』で使われた、びわ湖大津館で「死ぬる覚悟が~聞~き~た~い~」を言いまくったり。とにかく相変わらず楽しき旅でした。さてはて、次の旅はいずこに? どんなめぐり合わせがあることやら。

 

【本日の乾杯】オイルサーディンの缶詰にプチトマトと大葉をたっぷりのせて、醤油をちょいとひとまわし。オイルものなので、もう缶ごとで。後から“追い薬味”しました。

関連書籍

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。4』

震えながら歩いた、高さ180メートルの吊り橋のケーブル。座薬にすがった入院生活。中2で転校した親友との再会。台湾でなぜか私だけ、100カ所以上の虫刺され。強風に泣いた初ソロキャン。目玉焼きを食べただけなのに、真っ二つに折れた歯。そして、突然目覚めた“94キロの男を肩に乗せる”という才能。―― 今日もあさこは、生きている。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。3』

海への恐怖を感じた、初めての遠泳。4人で襷を繋いだ「24時間駅伝」。お見合い旅inマカオ。“初”キスシーンに、“初”サウナ。ドラクエウォークで初めての高尾山。接続できずに大騒ぎのリモート飲み会。拍子抜けだった大腸検査。ブームに乗って、のんびり「おばキャン」、のつもりが……。いくつになってもあさこの毎日は初めてだらけ。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。2』

セブ旅行で買った、ワガママボディにぴったりのビキニ。いとこ12人が数十年(?)ぶりに全員集合して飲み倒した「いとこ会」。47歳、6年ぶりの引っ越しの、譲れない条件。気づいたら号泣していた「ボヘミアン・ラプソディ」の“胸アツ応援上映”。人間ドックの検査結果の◯◯という一言。ただただ一生懸命生きる“あちこち衰えあさこ”の毎日。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

ぎっくり腰で一人倒れていた寒くて痛い夜。いつの間にか母と同じ飲み方をしてる「日本酒ロック」。緊張の海外ロケでの一人トランジット。22歳から10年住んだアパートの大家さんを訪問。20年ぶりに新調した喪服で出席したお葬式。正直者で、我が強くて、気が弱い。そんなあさこの“寂しい”だか“楽しい”だかよくわからないけど、一生懸命な毎日。

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