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あぁ、だから一人はいやなんだ。

2026.09.30 公開 ポスト

第278回 美容いとうあさこ

こないだNetflixの『ダウンタイム』を一気に観ました。ちょうどロケの移動中のバスの中で観始めたのですが、そのまま止まらなくなり。その時、やしろ優ちゃんも一緒に乗っていたんですが、彼女もまた然り。やしろの方が私より一話分くらい先に進んでいて。そこにはすでに観終わっている森三中・ムーさんもいて、「面白いよね」「あ、まだそこか」と我々の興奮に付き合ってくれた。結局、私もやしろもその帰りのバスの中で観終わらず、夜遅く帰ったのですが、そのまま観て。自宅にてラストまでいきました。観終わってすぐにやしろと話したくなりまして。「最後までいった?」と何度もLINEしようかと思ったのですが、「ロケで疲れてすぐ寝ちゃってるか」とか思って葛藤の末、連絡は我慢。すると翌朝早々にやしろから「みましたぁ笑笑?」とLINE。朝から二人で「あそこがああだったね」「ここはこうだと思ったのに」を何往復も。楽しかったぜ。

 

ちなみにこれは美容整形業界のお話。いやはやねぇ、本当にわたくし、“美容”と無縁と申しますか。まあとにかくご覧の通り、全然なんですよね。カッコよく言えば、いろんな言い方がありますよね。“年齢に抗わない”“今の自分を受け入れる”“自然体”。もちろん本当にそういう方でカッコいい方、いらっしゃいます。ただ私の場合は、自覚あります。そうじゃない。サボっている、です。

でも本当にどうしてこうなってしまったのか。昔からそうか、というとそんなこともないんですよ。例えばあれは中学生の時、松田聖子ちゃんの曲『Rock‘nRouge』が流れる口紅のCM。曲も相まって、すっごく欲しくなってしまって。学校帰り、誰にも会わない事を祈って、自宅と逆方向の御茶ノ水駅へ。こっそり寄り道です。駅近くのビルの地下街に入っている薬局みたいなところに聖子ちゃんのポスターが貼ってあって。そこで「あのCMの口紅ください」と。そんな感じでめっちゃくちゃ勇気出して買ったのに、あのメタリックなピンクの口紅のケースも、新品の口紅のあの先端の斜めの感じも中学生の私には美し過ぎて。その尊さから、一度くらいは塗った気はしますが、結局使わずそのままずーっと飾っておりました。

高校生の時は今井美樹さんが歌う『彼女とTIP ON DUO』が流れるCMの2色のアイシャドウも憧れて買いに行きまして。2色好きな色を選べるのですが、何となく色のバランスでこげ茶とオレンジの組み合わせにしたものの、いざ目元に塗るとなるとちょっと強いというか。そもそもどうやって使ったらいいのか、その正しい使い方が分からず。ペン型のスタイルだったのもあって、CMでは手帳や筆箱にスッと入れてたりしていたので、私もそのまま机の上のペン立てに入れ、これも使わず毎日うっとり眺めておりました。

そんなわたくしも19歳になりまして。家出をして働くことに。最初はホテルのクロークだったのですが、お化粧した方がいい、というかまあするもんだ、と思い、化粧品を買いに行きました。正直お金もそんなにないですし、知識もないですから。これが肌にいい、とかそういうのもまったくわからず、お安めのファンデーションを購入。それが合わなかったんですよね。なんか肌に小さなクレーターのようなボコボコがブワーッと出来てしまい。だったらそんなデキモノなどなかったのでファンデーションはいらない、となり。それがまさかの56歳の今までそのまんま、は予定外でしたが。なので結局マスカラと、ピンクの口紅くらいで働き始めました。

そんな状態のまま27歳でお笑いの国に入りましてね。これまたお金がない問題もございまして、もうリップクリーム1本のみ、で。むしろ物心ついたころからつけているニベアは必ず毎日お風呂上りにちょいと塗る、だけは続けておりました。ただあれは30代半ばくらいかなぁ? コンビニに、いわゆるコンビニコスメが登場しましてね。今でも忘れられないのですが、ある朝テーブルの上を見たら、3色入ったアイシャドウのちっちゃいパレットが4種類、綺麗に並べてありまして。どうやら前夜、飲んだ帰りにコンビニ寄って全色買ったみたいで。「あらやだ、私、本当は憧れているのかしら?」なんて。結局、その4つを使うことはなかったけれど、これも本当に綺麗でね。しばらく並べて飾っていました。

メイク以外だと、小さい頃、丸顔の私はキョンキョンの尖ったアゴに憧れましてね。なんとかそうなろうと毎日アゴを両手で、そして結構な力で牛の乳しぼりのようにギューッと絞っていたのです。ある日、強くやり過ぎたんでしょうね。アゴが真っ青に。そうです、アザになってしまったのです。どう見ても“アゴひげ濃い目の人”。かわいくなりたかっただけなのに、ただただ恥ずかしい数日を過ごす。もちろん聖子ちゃんカットもいたしましたよ。段カットに初めてのパーマが強くかかってしまいましてね。当時のあだ名、ライオン丸。まさに穴があったら入りたい、でした。はい。

爪はちょこっとだけですが爪磨きをやったり、足の爪にだけ黄緑などポップな色を塗った、なんて時期はありました。あと最近ですと、電気ピリピリ、なヤツや、顔コロコロ、なヤツなどを頂戴して、使ってみたりして。でも日常的に、となるとなかなか。今、日々やっているのは、頬っぺたを吸う、かな。「ん? 美容、それ?」と思ったあなた。正解です。私もわかっていますよ。ただ“もしあえて言うなら”です。もう無意識レベルで、頬っぺた、よく吸っています。要は鳥のくちばし、みたいになるヤツ。どこかで私、頬のスッキリ、憧れているのかなぁ。

でももうこれだけお化粧してこなかったもので、56歳にもなってお恥ずかしい限りなのですが、お化粧の仕方がわからない。結局ロケで汗かいたりびしょ濡れになったりすることも多いから、ノーメイクがいいっちゃいいんですけどね。とりあえず今日もまた、私の中の唯一の“飾りっけ”であるピアスつけて、ノーメイクでお仕事行くといたしましょう。いってきます。

【本日の乾杯】今年初のサンマは“サンマの南蛮漬け”で。スーパーのお惣菜。南蛮漬けってそもそも大好き。この野菜と酸味がサンマの脂とよく合う。たまらないぜ。

関連書籍

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。4』

震えながら歩いた、高さ180メートルの吊り橋のケーブル。座薬にすがった入院生活。中2で転校した親友との再会。台湾でなぜか私だけ、100カ所以上の虫刺され。強風に泣いた初ソロキャン。目玉焼きを食べただけなのに、真っ二つに折れた歯。そして、突然目覚めた“94キロの男を肩に乗せる”という才能。―― 今日もあさこは、生きている。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。3』

海への恐怖を感じた、初めての遠泳。4人で襷を繋いだ「24時間駅伝」。お見合い旅inマカオ。“初”キスシーンに、“初”サウナ。ドラクエウォークで初めての高尾山。接続できずに大騒ぎのリモート飲み会。拍子抜けだった大腸検査。ブームに乗って、のんびり「おばキャン」、のつもりが……。いくつになってもあさこの毎日は初めてだらけ。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。2』

セブ旅行で買った、ワガママボディにぴったりのビキニ。いとこ12人が数十年(?)ぶりに全員集合して飲み倒した「いとこ会」。47歳、6年ぶりの引っ越しの、譲れない条件。気づいたら号泣していた「ボヘミアン・ラプソディ」の“胸アツ応援上映”。人間ドックの検査結果の◯◯という一言。ただただ一生懸命生きる“あちこち衰えあさこ”の毎日。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

ぎっくり腰で一人倒れていた寒くて痛い夜。いつの間にか母と同じ飲み方をしてる「日本酒ロック」。緊張の海外ロケでの一人トランジット。22歳から10年住んだアパートの大家さんを訪問。20年ぶりに新調した喪服で出席したお葬式。正直者で、我が強くて、気が弱い。そんなあさこの“寂しい”だか“楽しい”だかよくわからないけど、一生懸命な毎日。

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