1. Home
  2. 生き方
  3. あぁ、だから一人はいやなんだ。
  4. 第275回 鳩の日

あぁ、だから一人はいやなんだ。

2026.08.15 公開 ポスト

第275回 鳩の日いとうあさこ

これ、なかなか説明が難しいのですが、私はファンシー、というか、メルヘンチックなものはそんなに好みではない。なので例えば自分のウチは木目と白が基調でシンプル。まあ一ヵ所ポイントにオレンジのラグを置いているくらい。かと言ってすごいドライか、って言うと、そうでもないと言うか。“カワイイ”ものは、大好き。何かしらどこかしらに動物の柄が入っている服もたくさん持っていますし、自宅のテレビの周りにもちっちゃい犬だのサルだのの置物もいくつも置いてある。まあもちろん“カワイイ”はどうしても人によって、で感覚の話になってしまうので何とも言えませんが。それがもし一般的な“カワイイ”じゃなくても、その大きさだの色合いだの、いろんな要素で私の中の“カワイイ”センサーがビビビと来た子だけが、もう“出会い”ですよね、ウチにやってくるわけです。

 

以前もちょいと書いたことがありますが、私はトンカツそのものはあまりいただかないのですが、カツ丼は大好物、のように、自分でもその線引きが何なのかわからないことも多々ございまして。この件もそうで、いわゆるキャラクターグッズはほぼ買わないわたくしですが(コンサートのグッズは爆買いします、はい。)、どうしても惹かれてしまうものもある。そのひとつが、豊島屋さん。そうです、あの鳩サブレーのお店です。実は鎌倉の本店のみでいろんなグッズを売っているんですが、以前、妹が“鳩三郎”という鳩サブレーそっくりのちっちゃな根付を買ってきてくれまして。なんなんだ、と。なんなんだこのめっちゃカワイイやつは、と。しかもなんなんだこのネーミングセンス! と、完全に痺れてしまいました。これがまた本店でしか買えない、っていうのも何だか特別な感じがしていい。

そんな豊島屋さん。8月10日は鳩の日ということで、その日限りの限定グッズを出していることに気づいたのが2年前。創業130年記念で鳩サブレーが1枚入る、鳩サブレーの形をした缶4色セットが出る、と。で、それぞれの缶の中に春夏秋冬のイラストが描かれている。“カワイイ”センサー、発動。欲しい。ただ当日は土曜日。朝のラジオから始まって、ずっと仕事だったので、鎌倉本店に行く事は出来ない。するとこの限定グッズは1日だけオンライン受付があることを知る。しかもそれは8月10日8時10分から受付、という徹底した“鳩”っぷり。最高だぜ。こうして私はこの素敵な“カワイイ”缶を手に入れた。

今年の限定グッズはシリコンポーチ[はとっこ]。鳩サブレー1枚が入るもので、鳩サブレー型のカラビナもついていて、これまたたまらない一品。今年もまた8月10日8時10分ジャストにオンラインで注文しよう。そう思っておりました。それがその前日。渋谷ヒカリエを歩いておりましてね。地下で豊島屋さんを発見。するとなんと。明日発売される[はとっこ]がガラスケースの中に飾られていて、そこには“明日10日のみ発売”の文字が。ちょっと待ってよ。発売は本店だけじゃないの? ああ、もう。完全私の調べ不足。この特別グッズの時だけは本店以外にも工場や神奈川と東京の百貨店数店舗などでも発売するとのこと。ちょうど午前中は空いている。これはもう運命だ。並ぼう。

基本並ぶのは大の苦手な私でも、これまた不思議。何の迷いもなく、翌日、渋谷ヒカリエで買うことを決めた。ただ何時から並べばいい? 正直何にもわからない。2008年サザンのコンサートの当日券の為に始発で日産スタジアムに行って、7~8時間並んだ経験はあるけれど、それ以外はからっきし。渋谷ヒカリエのオープンは11時。私はその30分前、10時半に行ってみた。まだ誰もいない、と思ったのは大間違い。私が到着したのは地下3階の入り口前。目の悪い私でも、ガラスのところに黄色と白の貼り紙があることに気づいた。近づいてみると案の定、豊島屋さんの鳩の絵が。そこには限定グッズの販売は1つ上の地下2階です、と書かれていた。踵を返し、急いで横のエスカレーターで1つ上の階へ。はい、います。人、結構並んでいます。“最後尾”の看板を持っているお姉さんのところへ。「こちらへどうぞ」といざなわれ、最後尾につく。そのお姉さんに「今、これで何人くらいいらっしゃいますか?」と聞いてみる。すると横にいたお兄さんが「たぶん70、80人くらいですかね。横浜はもう200人だそうですよ」と。「じゃあ、ここ(渋谷)でラッキーでしたね」なんてお喋りをしながら、行列、スタート。普段やらない行列。並んでみると、ちょっと楽しい。「老若男女問わずだけど、30代くらいが少し多めかな」とか「一人で来ている人、多いなぁ」とか。すると私のちょっと前に並んでいる、おばあちゃん、と言っても私とそんなに年齢変わらなそうな方と小学校低学年くらいの女の子のお孫ちゃんのペア。そのお孫ちゃんがトイレに行きたくなってしまったようで。オープンまではまだ時間がある。おばあちゃんは近くにいた係のお姉さんに相談。代理でそのお姉さんが列に並び、他の店員さんが店内のトイレをご案内。いやぁ、優しいなぁ。素敵。すぐに戻ってきた二人。こうやって夏休みにお孫さんについてきて暑い中並ぶっておばあちゃんも大変だなぁ。そう思っていたらおばあちゃんが一言。「もう今度からこういうのあっても『ついていきたい』って言わないのよ。だってあなた欲しくないんでしょ? おばあちゃんは欲しいから並ぶけど。」わお。欲しいの、おばあちゃんの方だった。むしろお孫ちゃんはついてきただけだ。ついてきたものの、ちょっと飽きちゃったのね。でもこのおばあちゃんを始め、並んでいる皆々さまが同じ“推し”とか思ったら、なんだか急に、そして勝手に“家族”みたいに思えてきたりしちゃったりして。

結局11時48分、無事に白と茶色2種購入。買い終わった後、列を見るととんでもないことになっていた。開店30分前着は遅かったかもと思ったけど、いやはや、全然。よかったです。そんなわけで只今、私のリュックには[はとっこ]の茶色がぶら下がっております。中にはもちろん鳩サブレーが。私の非常食。お腹空いたら、いただきます。わーい。

 【本日の乾杯】島らっきょう。この歯ざわりと、ちょっとピリッとする感じが本当に夏のビールとよく合う。あ、ビールはもちろんオリオン。ゴクゴクいきまっせ。

関連書籍

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。4』

震えながら歩いた、高さ180メートルの吊り橋のケーブル。座薬にすがった入院生活。中2で転校した親友との再会。台湾でなぜか私だけ、100カ所以上の虫刺され。強風に泣いた初ソロキャン。目玉焼きを食べただけなのに、真っ二つに折れた歯。そして、突然目覚めた“94キロの男を肩に乗せる”という才能。―― 今日もあさこは、生きている。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。3』

海への恐怖を感じた、初めての遠泳。4人で襷を繋いだ「24時間駅伝」。お見合い旅inマカオ。“初”キスシーンに、“初”サウナ。ドラクエウォークで初めての高尾山。接続できずに大騒ぎのリモート飲み会。拍子抜けだった大腸検査。ブームに乗って、のんびり「おばキャン」、のつもりが……。いくつになってもあさこの毎日は初めてだらけ。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。2』

セブ旅行で買った、ワガママボディにぴったりのビキニ。いとこ12人が数十年(?)ぶりに全員集合して飲み倒した「いとこ会」。47歳、6年ぶりの引っ越しの、譲れない条件。気づいたら号泣していた「ボヘミアン・ラプソディ」の“胸アツ応援上映”。人間ドックの検査結果の◯◯という一言。ただただ一生懸命生きる“あちこち衰えあさこ”の毎日。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

ぎっくり腰で一人倒れていた寒くて痛い夜。いつの間にか母と同じ飲み方をしてる「日本酒ロック」。緊張の海外ロケでの一人トランジット。22歳から10年住んだアパートの大家さんを訪問。20年ぶりに新調した喪服で出席したお葬式。正直者で、我が強くて、気が弱い。そんなあさこの“寂しい”だか“楽しい”だかよくわからないけど、一生懸命な毎日。

{ この記事をシェアする }

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP