まさか、こんなにも穏やかな再会になるとは思わなかった。
ノゴーン・ベキ(役所広司)。
シーズン1の最終話で乃木(堺雅人)に撃たれ、その生死が長らく謎に包まれていた男が、ついに私たちの前に姿を現した。
あれから約3年。
私はずっと、この男が再び物語に姿を現す瞬間を待ち望んでいた。
いつか必ず、乃木たちが絶体絶命の危機に陥ったとき、颯爽と現れるのではないか。
あるいは、世界を揺るがすほどの大きな事件の裏で、再び暗躍しているのではないか。
何しろ、あのノゴーン・ベキである。
きっと、その復活も壮大なものになるに違いない。
そんな登場を勝手に思い描いていた。
偉大なる指導者は、奥出雲で読書をしていた。

かつて世界を股にかけ、テロ組織「テント」の頂点に君臨していた男が、日本の片隅で老眼鏡姿で本を読んでいた。
最高幹部たちは朝ごはんを食べていた。
こんなにも我々の考察の斜め上をいくとは思ってもいなかった。
普通は12話ぶりの登場で、しかも死んだことになっているという状況なら、鳥肌の立つような復活劇を用意したくなるだろう。
しかし『VIVANT』は違う。
誰もが期待するであろう劇的な再登場を、あえて何でもない日常の中で描いてみせたのだ。それも、大げさな演出など必要ないと言わんばかりに。
考えてみれば、ベキは長い年月、故郷の日本に帰ることすら叶わなかった男だ。
そんな彼が今、仲間たちと静かな時間を過ごしている。
世界を震撼させたテントの指導者ではなく、ようやく安らぎを手にした一人の人間として。
そう思うと、あまりにも平和な再登場が、何とも感慨深いものに変わっていく。
派手な演出で驚かせるだけではない。
登場人物が歩んできた人生そのものを使って、私たちの心を動かしてくる。これもまた、『VIVANT』の魅力なのだろう。
しかし、私はまだ期待してしまう。
この穏やかな再登場さえも、今後の壮大な活躍に向けた“フリ”なのではないか、と。
何しろ第22話のラストでは、乃木たちがシンシーによって絶体絶命の危機に追い込まれている。
もし、この窮地を救うために、死んだことになっているベキたちが再び動き出すとしたら。
そして、あの日、結果として自分たちを救った乃木を、今度はベキたちが救うことになるのだとしたら。そう想像するだけで胸が熱くなる。
もちろん、そんな展開が待っている保証はどこにもない。
それでも、私たちの想像を超える場所で静かに生きていた男である。
その復活が、ただの生存報告で終わるとは思いたくない。
今はまだ、奥出雲で静かに本を読むベキ。
しかし、あの老眼鏡を外したとき、再び世界が動き出すのかもしれない。
私はまだ、ノゴーン・ベキの本当の「復活」を待っている。
劉はドラムを逃がすために撃った? 野崎がジャミーンの居場所を明かした理由とは……。
さて、ここからは考察に移りたい。
第22話では、ベキたちの生存という大きな伏線が回収された。
しかし、その一方で、新たに浮かび上がってきた不可解な行動がある。
それが劉銘軒(堺雅人)によるドラム(富栄ドラム)への銃撃だ。
シンシーから脱出しようとしたドラムに対し、劉は容赦なく6発の銃弾を撃ち込んだ。
その後、ドラムは地中に埋められ、死亡したかに思われた。
しかし、チンギスの救出によって奇跡的に生還。
さらに驚くべきは、6発もの銃弾が1発も内臓に到達していなかったことである。
ドラムの驚異的な生命力には驚かされるばかりだ。
しかし、私はどうしても別の可能性を考えてしまう。
劉は、ドラムを殺すためではなく、逃がすために撃ったのではないだろうか。
一見すると矛盾している。
逃がしたいのであれば、そもそも撃たなければいい。
しかし、もし劉がシンシーを裏切り、密かに野崎(阿部寛)と協力していたとすればどうだろうか。
劉がドラムをそのまま逃がせば、シンシーから裏切りを疑われる可能性がある。
だが、銃撃して死亡したように見せかければ、組織内での立場を保ちながら、ドラムを外部の人間に救出させることができる。
そして、ここでもうひとつ思い出したいのが、第21話でチンギスに届いた謎の連絡だ。
第22話では、その連絡にシンシー本部の位置を示す座標が含まれていたことが明らかになった。
結果として、その情報を手掛かりにチンギスはドラムを救い出している。
そうなると、ドラムへの銃撃とチンギスによる救出は、最初からつながっていた可能性があるのだ。
私は以前から一貫して、劉と野崎が密かに協力している可能性を考察している。
劉がシンシーの監視を遠ざけ、野崎と2人きりになるために要求した3時間。
あの時間に何らかの作戦が話し合われていたのだとしたら、今回のドラムの生還も、まったく違った意味を持ち始める。
しかし、ここで新たな疑問が生まれる。
仮に今回の出来事がすべて野崎と劉の作戦だったとしても、私にはどうしても説明できないことがある。
なぜ野崎は、ジャミーンの居場所を教えてしまったのか。

私はこれまで、野崎は洗脳されたフリをしていると何度も考察してきた。
今回もその考えは変わっていない。
だが、いくら作戦だったとしても、ジャミーンの居場所まで教える必要があったのだろうか。
野崎ならば、その情報がどれほど危険なものか理解しているはずだ。
実際、シンシーは日本へと動き出し、ジャミーンだけでなく、薫(二階堂ふみ)やノコル(二宮和也)、チンギスまでもが危険にさらされてしまった。
では、なぜ野崎は話したのか……。
これは、かつてないほどの難問だ。
ただ、野崎の目的が「ジャミーンとエリシャを会わせること」だったとしたらどうだろうか。あえてシンシー側に情報を与えて信用を勝ち取り、相手が油断した瞬間に形勢を逆転させる。そんな作戦ならば、なんとか説明はつくかもしれない。
しかし、仮にこれが野崎の作戦だったとしても、あまりにも危険な賭けである。
一歩間違えれば、ジャミーンだけでなく、乃木にとって大切な人たちの命まで失われかねない。それどころか、世界の均衡さえ揺らぐ事態につながるかもしれない。
正直に言えば、今の私には分からない。
どれほど考えても、野崎の真意には辿り着けない。
しかし、だからといって彼を疑う気持ちにはなれないのだ。
ここまで来たらもう最後まで「野崎」を信じたい。
第1シーズンから積み重ねてきた信頼も、乃木との絆も、野崎という男が見せてきた数々の行動も。
そのすべてが、今回の不可解な行動によって覆されるとは思いたくない。
もちろん、信じているからといって、すべての行動を正当化できるわけではない。
それでも私は、野崎が最後に私たちの想像を超える答えを見せてくれると期待している。
野崎を信じているからこそ、彼の行動にどんな理由があったのかを知りたいのだ。これだけ長い間、私たちを振り回してきたのだから、最後には盛大に驚かせてほしい。
そして、ずっと信じ続けてきた私たちに、こう言わせてほしい。
「やっぱり野崎守は最高にかっこいい」と。
••┈┈┈┈•• ドラマ情報 ••┈┈┈┈••
TBSテレビ『VIVANT』(毎週日曜夜9時~)
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、二宮和也、竜星涼、山中崇、富栄ドラム、濱田岳、小日向文世、松坂桃李
原作・演出・プロデュース:福澤克雄
演出:宮崎陽平、加藤亜季子
脚本:宮本勇人、李 正美、山本奈奈、土井笑生
著者:ペチ
イメージイラスト:サク
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