友人と平日、買い物の約束をした。
例年行く、木村硝子店のアウトレットセールである。ウェブサイトに登録すれば、案内が来る。先着順の申し込みは、人気ライブも顔負けの、数分で売り切れる争奪戦だ。
毎年、タイミングが合った人と行くのだが、今年は食通の編集者と文筆家、敬愛するラジオDJの女性4人だ。
このメンバーで行くのは初。共通項は食いしん坊のおしゃべり好き。かつ物事を手際よく進めるのが、上手で決断が早い。
湯島でひとしきり買い物を堪能し、その後は、去年見つけた秋葉原のピザ店へ。ホテルの一階で、天井が高く広々としている。
ひとりが、ランチコースを予約しておいてくれた。ピッツァかパスタ、スープ、サラダで2500円のコースだ。メインディッシュとドルチェが付いた4200円のコースもあったが、それぞれに午後は仕事があるので諦めた。
ゆったりとしたテーブルに座る。
アウトレットの戦利品を手に、みな幾分高揚していた。石窯で焼くピッツァも美味しそうだ。メニューブックには、うに、豚肩ラグーソース、和牛サルシッチャ、レモン、セロリ、すだち、山菜。ピッツァのトッピングとしては珍しい食材の文字が並び、バラエティに富んでいる。
さてどれにする。その前に、飲み物も決めたい。人いきれの中で買い物に没頭したので、喉が乾ききっていた。
アイスコーヒーよりビール。でもビール一杯では済まないよな。何杯もおかわりするよな……。
無言の4人の胸の内がなんとなく伝わってくる。と、店の予約を入れてくれた友達が提案した。
「スパークリングワインをボトルで頼むのどう」
みなの顔がぱっと輝き「それがいい!」。
私は内心驚いていた。昼間から泡。しかもボトル。
だが、飲みきったらそれでおしまいにできる。ビールのようにごくごく飲むものでもない。なにより、限られたひとときの楽しい気分にぴったりで華やぐ。
サービススタッフがうやうやしくワインボトルを運んできて開栓した。
シュポンッ。浮き立つ金色の泡。繊細なフルートグラス。ワインクーラーとアイスペール。
昼酒の軽やかな楽しみ方に、すっかり感心してしまった。いつも、ボトルというと夜の食事で、ちょっと張り切って頼むものだった。ましてスパークリングなら、これから始まる長い夜の幕開けの一杯。二本目三本目に続く呼び水のような存在である。
だがボトルの二本目はなし。ひとり二杯ずつ飲んでおしまいの潔さも楽だ。
ピッツアとパスタは、それぞれ二種頼んでシェアした。「どの味も知りたい」という4人の思いが満たされた。
小一時間おしゃべりとおいしい食事を堪能し、14時前に「それじゃあね」と三々五々に別れた。
酒に強い人たちならでは、仕事の予定も自分の裁量で進められる点が共通しているからこそできることだが、私はその後いつも以上に仕事に集中できた。まさに二杯のグラスで、英気を養えたのである。
粋な大人たちの振る舞いは、グラス二杯分以上の濃密な記憶になっている。
ただ、それ以来、仕事のある平日の昼間にスパークリングのワインボトルを開ける機会はおとずれていない──。
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金沢で、ウイスキーをもう一度

お酒をほんとうに美味しいと思ったのは、37歳になってからだった――。子育てに奔走した時代から、少しずつ自分の時間を使えるようになって目覚めた「お酒」のこと。時間を惜しみながら飲み始めた地元・下北沢での日々、東京のさまざまな場所、そして金沢や沖縄、秋田、パリやアイルランドなど旅先での忘れられない1杯まで。珠玉の酒エッセイ。











