怠けるのが大好きなエッセイスト宮田珠己さんの連載『衰えません、死ぬまでは。』が、ついに書籍化! 還暦を迎えた宮田さんにとって、「老化」ってどんなものだったんでしょう?
中年の壁を越え、還暦へと一歩一歩進んでいるphaさん(47 歳)から、書評が届きました!
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筋トレのつまらなさを、はっきり言葉にしてくれていてうれしい。
宮田珠己さんの新刊、『衰えません、死ぬまでは』を読み始めてすぐに、これは完全に自分の未来の姿だ、と思った。
15年後に、絶対にこの本と同じ状態になっている自信がある。
この本は自分の未来を書いてくれている予言書に違いない。そう思って、じっくりと熟読した。
還暦を迎えた宮田さんは、特に大きなトラブルに見舞われたわけではないのだけど、なんとなく毎日が浮かない感じになっていることに気づく。
これは体力の低下によるものだろうか。運気を上げるためには筋トレをするべきなのではないか。体力をつければ気力も湧いてくるに違いない。
そう思い立って筋トレを始めてみたはいいものの、どうも続かない。
ジムに行ったり、行かなくなったり、中断したり、ボルダリングをやったり、また筋トレを始めたり、やめたり、といった試行錯誤が一冊にわたって書かれている。
まず、還暦になってもこんなにウダウダしていていいんだ、というところに勇気づけられる。自分も絶対にこういうダラダラした還暦になっているだろう。
他にも自分と似ているところがたくさんあった。お酒は飲まないが甘いものやバターは好きなところや、好きなことしかやりたくないところ、そして、散歩は楽しいから毎日でもできるけど、筋トレはつまらなくて続かないというところだ。わかる。わかりすぎる。全部自分と同じだ。
散歩をするといろんな景色が見えるし、毎日別のコースを歩けば飽きない。外の風に吹かれて季節を感じるのも気持ちいい。
それに比べると、筋トレって同じ場所でひたすらしんどい作業をするだけの苦行にしか思えない。あれが続く人が信じられない。同じ生き物とは思えない。
宮田さんは筋トレについてこんなふうにつぶやく。
「さっぱり楽しくない。」
「なんで、こんなことしなくちゃいけないのか。」
「虚しさが心に広がる。」
「こんなことをしないと人生は盛り上がらないのだろうか。」
筋トレのつまらなさを、はっきり言葉にしてくれていてうれしい。やっぱりそうですよね。
年を取ると筋肉が衰えてくるから、鍛えたほうがいいのはわかっている。でも、つまらなさすぎるのだ……。
筋トレが続かないという事実を受けて、「好きなことしかやらない」という自分の性格に問題があるのかもしれない、と宮田さんは自問自答する。
でもそんなことを言ったら、これまでの人生の全てが否定されてしまう。今まで何十年もそのやり方でやってきたのに、今さら言われても困る。
宮田さんは言う。還暦になったからと言って、特に人格は成熟しない、外側が老けただけで、中身は30歳くらいとあまり何も変わっていない、と。根本的な人間性は年齢を重ねても特に変わらないのだ。
今僕は47歳なのだけど、まさに同じようなことを思っていた。若い頃とあんまり中身は変わってないな、と。この調子で行くと60歳になってもあまり変わらないんだろうな、と想像をしていたけど、やっぱりそうなんだな。
宮田さんによると、50代60代の男性は、みんなうっすらと凹んでいて、土台が鬱らしい。
特に何か悪いことがあったわけがなくても、年を取ると少しずつ体力が落ち、見た目も老けていき、なんとなくずっと気分が凹みがちになる。そんな加齢による漠然とした落ち込みをこの本はリアルに伝えてくれる。
その上で、読み終わったときには、年を取って弱ってくる部分があるのは仕方がないことだから、不調や落ち込みも受け入れて、できる範囲で少しずつ前向きにやっていこう、というほんのりと明るい気分になれる本だった。
僕は2年前に『パーティーが終わって、中年が始まる』という本を出したのだけど、この本は40代の前半、青年から中年に移行する時期の戸惑いや喪失感を書いたものだった。
そしてこの『衰えません、死ぬまでは』は、その15年ほど先の、中年から老年へ移行する時期のことを書いたものだ。宮田さんが諦めと受け入れを繰り返しながら、60代という新しいステージに慣れていく様子が描かれている。
どうやら人生の変化は15年くらいごとにやってくるらしい。
変化の時期はそれまでのやり方が通用しなくなるので、いろいろと考えることが多くなり、そのことを本にまとめたりしたくなるのだろう。
思えば、宮田さんがこういう本を書いてくれるのを、ずっと待っていたような気がする。
宮田さんのエッセイは、ゆるくて力の抜けた文体でいろんなところに出かけたりする、というところに自分と似たものを感じていて、かねてから愛読していた。
ただ、似ているところもあるけれど、少し雰囲気が違うということも感じていた。
宮田さんのほうが、全体的に明るい。自分の文章のほうが暗くて地味だ。それは性格の差かもしれないけれど、世代の差かもしれない、と考えていた。
宮田さんとは年齢が14歳離れている。就職氷河期世代の自分と、バブル景気を体験していた宮田さんでは、やはり根本的な気分が違うのだろうか。自分にはどう書いてもこういう明るさは出せないんだよな。どうしても地味で暗くなってしまう。
そんなふうに憧れながらも、宮田さんにも地味で暗い感じのものを書いてみてほしいな、という気持ちがあった。
なので、全体的にうっすらと凹んだ気分が漂っている今回の本は、まさに自分のために書かれた本のような気がしたのだった。
ーーpha(作家/47歳)
衰えません、死ぬまでは。

旅好きで世界中、日本中をてくてく歩いてきた還暦前の中年(もと陸上部!)が、老いを感じ、なんだか「運気」も下がっている気がして、悶々。
いざ、まじめに老化と向き合おうと一念発起!……したものの、自分でやろうと決めた筋トレも、始めてみれば愚痴ばかり。毎朝の”バターしみしみパン”もやめられない。
はたして、「老い」と戦えるのか?「運気」は上がるのか?
怠け者作家が、老化にささやかな反抗を続ける日々を綴るエッセイ。










