考察より大事なことをまずは語りたい。
ノコル(二宮和也)のあの一言に、完全に痺れた。
「テントは全勢力をかけて兄さんに協力する」

ただ「協力する」のではない。“全勢力をかけて”である。この言葉の強さに、この上なく胸が熱くなった。
第1シーズンで対峙したテントが、今度は乃木(堺雅人)の仲間を救うため、その持てる力のすべてを貸してくれる。
かつては突然現れた“兄”に複雑な感情を抱き、衝突したノコルが、今では「兄さん」と呼び、テントの全勢力を動かそうとしている。
少年漫画で何度見ても胸が熱くなる、あの展開である。
私はこういうのを待っていた。
ここ数話の『VIVANT』は、シンシーの正体、リュウ・ミンシュエンの過去、野崎の潜入など、1つの情報から真実を探っていく頭脳戦の面白さが際立っていた。
もちろん、それも『VIVANT』の魅力だ。
しかし第17話には、そんなことを一度忘れて、ただただ画面の前で興奮してしまう熱さがあった。
少年漫画のような大興奮の展開が、『VIVANT』に帰ってきた。
しかし、その大興奮の裏で、乃木はあまりにも重い選択を迫られていた。
黒須(松坂桃李)たちを救いたい。しかし、別班上層部が下した決断は「救出断念」
仲間を救うために新たな別班員を送り込めば、さらなる犠牲を生み、新たな拘束者からより多くの機密情報がシンシーへ渡る危険もある。
国家を守るのか。それとも、仲間を守るのか。
『VIVANT』という物語はこれまで、乃木に何度も「何を守るのか」を問い続けてきた。そして今回、乃木は再びその答えを迫られることになった。
そんな乃木の背中を押した男がいる。

長野(小日向文世)だ。
今回ばかりは、この男を心から見直した。
命令には絶対服従。それが別班員としての義務であることは、長野自身も痛いほど理解している。それでも彼は、仲間を助けられないことに苦しみ、眠れない夜を過ごしていたのだ。
組織の人間である以上、命令には従わなければならない。それでも、組織の人間である前に、一人の人間として仲間を救いたい。
相反する2つの思いを抱えていたからこそ、長野は乃木にも「別班員としての正解」ではなく、「乃木憂助としての本心」を求めたのだと思う。
別班員を動かせないのなら、テントという新たな仲間の力を借りればいい。
これは命令を破って仲間を救うのでも、命令に従って仲間を見捨てるのでもない。
2つしかないと思っていた道の間に、長野はもう1本の道を作った。
「君の命もまた大切な人が守りたい命だ、必ず生きて戻れ」
長野のこれ以上ない締めの言葉に、文章を書いてる今も鳥肌が止まらない。
私は別班員と判明した彼が幾度も口にする「愛する人」という言葉に、疑念を抱いていた。裏切り者だからこそ、乃木の弱みを握るために「守るべき存在」を意識させたのでは? と疑っていたのだ。
しかし今回の件で、彼が心を大切にする熱い漢なのだと気付かされた。
これまで最も疑っていた男が、今では私の「最も好きな男」になった。
冷静に考えるとテントという存在をシンシーに近づけるのは危険である。シンシーは何よりもテントの情報を欲している組織だからだ。
その提案をしたのは紛れもなく「長野」だ。
このことを考えると、両手を広げて長野の漢気を賞賛するのではなく、まだ疑念を持つべきなのかもしれない。
しかし今週の私に長野を疑うのは無理なのだ。それほどに彼のことが好きになってしまった。
考察より大事なことをまずは語りたい。
そう書いて始めた記事だからこそ、今週は考察よりも、この感情を大切にしておこうと思う。
やはりリュウ・ミンシュエンは野崎を裏切らない!? リュウが最後に選ぶ決断とは……。
考察より大事なことを語り終えた。ここからは、思う存分疑っていこう。
第16話のレビューで、私はこう書いた。
「リュウ・ミンシュエンは、野崎を裏切っていない」
第17話を見終えた今も、その考えは変わっていない。ただ、その理由については少しだけ考え方が変わった。
前回は、野崎とリュウが互いの意図を理解し、最初から何らかの作戦を進めている可能性を考察した。
今回も、その可能性を感じさせる描写はいくつかある。
野崎の正体を暴いたリュウが、自らテントの情報を聞き出す役目を引き受けたこと。
野崎がドラムの食事として「10人前」を要求した直後、リュウが「10日」という同じ数字を口にしたこと。そして結果として、リュウがシャキ城を離れる“10日間”という時間が生まれたこと。
これらを繋げれば、2人が水面下で何らかの意思疎通をしていると考えることもできる。
しかし一方で、リュウは実際に野崎の潜入を暴き、ドラムを使って自白にまで追い込んでいる。だから私は、すべてが最初から2人によって仕組まれた作戦だったとは考えていない。
むしろ今回、別の可能性を強く感じた。
今はまだ敵同士でも、最後にはリュウが野崎を選ぶのではないか。
「作戦ではなく、“野崎への愛”がリュウを動かす」
私はそう考察している。
第16話で描かれた5年前のリュウにとって、野崎は単なる上司ではなかった。
認めてもらいたい。褒めてもらいたい。
その言動の端々からは、野崎という人間に対する強い思いが溢れていた。
あれから5年。立場だけを見れば、2人は完全な敵になった。
それでも、人間の感情まで所属先に合わせて簡単に塗り替えられるものなのだろうか。
むしろ5年という時間を経て再び野崎と出会ったことで、リュウ自身が封じ込めていた感情が、もう一度動き始めているのではないか。
もしそうだとすれば、「10人前」と「10日」という数字の一致も、最初から決められていた作戦の合図ではなく、野崎の正体を知ったリュウが、その場で密かに送ったメッセージだった可能性もある。
第17話は、組織に生きる人間たちが、組織の論理だけでは割り切れない感情に突き動かされる回でもあった。
命令には絶対服従。それでも、仲間を救いたいと願った乃木と長野。
組織が求める「正解」と、一人の人間として選ぶべき「答え」は、必ずしも同じではない。
だとすれば、この先、リュウに同じ選択が迫られても不思議ではない。
シンシーの人間として野崎を切り捨てるのか。それとも、リュウ・ミンシュエンという1人の人間として、野崎を選ぶのか。
今はまだ、リュウが野崎の仲間だとは言い切れない。
2人が最初から手を組んでいたとも限らない。
ただ、5年前から2人を繋いでいたものは、作戦でも、公安という組織でもなかった。もっと個人的で、もっと不合理で、それでも簡単には消えてくれない感情だった。
最後に2人をもう一度仲間に戻すのは、きっと感情だ。
リュウ・ミンシュエンは、野崎を裏切らない。
それは作戦だからではない。野崎を愛しているからだ。
••┈┈┈┈•• ドラマ情報 ••┈┈┈┈••
TBSテレビ『VIVANT』( 毎週日曜夜9時~)
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、二宮和也、竜星涼、山中崇、富栄ドラム、濱田岳、小日向文世、松坂桃李
原作・演出・プロデュース:福澤克雄
演出:宮崎陽平、加藤亜季子
脚本:宮本勇人、李 正美、山本奈奈、土井笑生
著者:ペチ
イメージイラスト:サク
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