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衰えません、死ぬまでは。

2026.08.15 公開 ポスト

対談その2(全4回)

年齢とともに未来に明るいビジョンが持てなくなる?――くよくよ対談、続きます!スズキナオ(ライター)/宮田珠己

今年の夏に、『衰えません、死ぬまでは。』を上梓した宮田珠己さんと、『このロボで、行けるところまで行くしかないのだ。』が間もなく、8月19日に発売となるスズキナオさん。なんとなく気が合いそうな二人が、膝をつきあわせて、老化の話に花を咲かせる。

「若者に対して、何も教えられない…」と、くよくよする二人の話の続きをどうぞ!(前回の対談はコチラから)

撮影:菊岡俊子

*   *   *

どうしたら”いい感じ”で歳をとれて、死ぬことも受け入れられるようになるのか…

宮田 まあそういう、40、50、還暦とか、年齢は確かに重ねたけど、それを自分として受け入れられるか問題みたいなこともあると思うんです。例えば還暦とかって、やっぱフィットしないし。20代の後半ぐらいから全然中身変わってない感じがして。だからもっと死ぬときは死を受け入れる心になってるのかと思ってたけど、全然そうならないままに死ぬのは怖いなと思って。もう死んでもいいかな、みたいになるのかなと思ったら、なかなかならないというか。

スズキ 本当ですね、ずっとこのままなのかな、って思います。

宮田 死ぬの怖いって、誰でもあるじゃないですか。で、僕はそれをどうやって回避しようかって思った時に、何かに没頭するしかないって思ってるんですよ。何か関係ないことに。で、没頭してるうちに、あ、気づいたら死んでたっていうのが理想。死を迎え撃つ気持ちや、受け入れる気持ちが全くないから。気づかないっていう作戦だから。自分が死にそうなことに気づかないっていう作戦をとろうって、もう今から思って。

スズキ それはすごくいいですね。

宮田 だからゲームでもいいし、映画でもいいけど、没頭してる時にポコって死ぬように調整しようと思って。

スズキ いいですね。でも、頑張らないと飽きがきてしまうってことですかね。

宮田 そうなんです。だからコロコロ変えながら次見つけないと、向き合っちゃうから。年寄りになる心構えとか何にも考えてないです。スズキさんが『このロボ』の巻末、岸政彦さんとの対談の中で、その心構えみたいなことを書いてたじゃないですか。岸さんが言ってたのかな。ゼロかマイナスしかない、未来に期待なんかないのに、それをどう生きていくかみたいな。僕はそんなことも考えないですね。落ち込むだけじゃないですか。

スズキ 岸さんも私からしたらちょっと年上なんです。だから、どうしたら40代後半の人間としていい感じの存在になっていけるかと、そういうことを相談しようと思ったんです。でも、もう、ここから良くなるなんていうことはないのである、みたいに言っていて。あとは、いかに恥ずかしくないように、みんなに嫌がられないように生きていくかだけです、みたいな、マイナスしかないみたいな感じで、結構その言葉は重たくもあったんですけど。まあ、そんな話をしている間は楽しくワイワイと笑って話せるという感じで。でもこれからはマイナスしかないと思って生きていくのもなかなか辛いですよね。私は普段、お酒でごまかしごまかし、過ごしてしまっていますけどね。

宮田 僕、酒飲めないんで。お酒ってそういう効果ありますか。

スズキ とりあえず今日だけはひとまず終えられてしまうみたいな。ぼんやりした状態で、明日へ続く。課題を先送りにするというか……。

宮田 あまり思考が尖っていかないわけですかね。

スズキ でも、年の近い飲み仲間とお酒を飲みながら話してると、まあいろいろあるかと、その場では軽く思えます。だからお酒が、それこそだんだん分解能力が弱まって、飲めなくなったらどうしようかと……。

宮田 お酒もよく健康診断とかも引っかかりますよね。

スズキ そうなんです。よく引っかかる方なんで、これで本当に飲めなくなったり、やめなさいって言われたら、いよいよどうしようもないと思って、そうなった時の紛らわし方がわからなくて。

宮田 僕は元から飲めないんで、普段から紛らわし方がないんですよ、そういう緩めて紛らわすっていうのはないです。だからよそ見するしかない。よそ見作戦ですね。

スズキ それがいいですよね。今回のことで言うと、例えばジムに行くと、一瞬のよそ見できるというか。

宮田 ジムはなんかやらなきゃみたいな、ノルマの感じなんですよね。僕ゲームしないんですよ。昔ちょっとやったことあるんですけど、はまりすぎちゃいそうな気がして。これ踏み出したらやばいぞっていうのはずっとあって。だからゲーム機も持ってないし、やらないようにしてたんですけど。本当にいよいよ死が近づいたら思い切りやろうかなと。

スズキ ああ、なるほど。

宮田 病院のベッドでゲームばっかりやろうかな。ゲームやって、別世界に住もうと。で、気づいたら死んでたっていう。

スズキ そうできたら一番いいですよね。宮田さんはあちこち旅もされると思うのですが、そういうのはあんまり、ごまかしにはならないんですか。

未来への期待度が下がるということを、受け入れる!

宮田 昔はありましたけどね、最近あんまり旅しなくなったんですよ。昔は旅の向こうに何か世界が広がってる感じだったんですけど、今は行って帰ってくるだけになっちゃって。普通に観光して、お土産買って帰るみたいに。ここの旅をきっかけに何か起こるかもしれないみたいなのが、全くなくなっちゃって。

スズキ 未来に対して明るいビジョンを抱けなくなるというのは自分も本当にそうなんです。それはおいくつぐらいの時からですか?

宮田 いつぐらいからかな。40代はまだ平気だったりもします。でもね、コロナのちょっと前ぐらいかな。なんか子供もね、だんだん大きくなってきて、家庭みたいなのができちゃって。で、一人で旅をするっていうのが好きだったから、全ての係累っていうのかな、関係を断ち切って、例えば別の国で生きるみたいな道もあるなとは思いながら、そうはしなかったけど、その可能性はあると思いながら旅したら気持ちよかったんですけど。でも今はもう子供がいるし、面倒見ないといけないし、次の締め切りはいつだし、何日までに帰らなきゃいけないな、とか思っちゃうから、もう全然そういうのないんですよ、昔のワクワクは。見聞することが面白ければ面白いけど、もう全然昔ほどの興奮はないですよね。

スズキ そうですよね。

宮田 だから年取ってから、定年してから、わっと旅行しても、僕、多分ダメだったと思うんで。その意味では若い時にいろいろ旅行しといてよかったなと思います。もうあの気持ちには戻れないですよね。

スズキ そう、特に努力もせず、この先に何かいいことが起きるんじゃないかぐらいの、棚ぼた待ちの状態だったんですけど、そんな気持ちもいつの間にか消えて。今、何のために生きてるのかわからない、みたいな。それこそ、少し先の約束とか、楽しみな仕事とか、ちょっと楽しいことがあるだけという感じで。それもいつかなくなると思うから、そうなったらどうしようかと。。

宮田 そうなんですよね。だからそういうのまともに向き合わなきゃいけないですよね。実際いい答え出てこない、解決策はないとは思うんです。

スズキ そうですね。向き合い過ぎずに、他のことに集中するみたいな技を身につけた方が早いというか、現実的なのかもしれないですね。

宮田 劣等感しかないですよ。だから本当にちゃんとコツコツ生きている人たちに比べて、フリーランスでわがままに生きてきてしまったなっていう。

スズキ 自分も本当にそんな感じです。

宮田 ものすごい作品を世に出して、後世まで語り継がれるようなものを残したっていうならいいんでしょうけど、それもないし。なんだったんだろう。

スズキ なんだったんだろうこの人生という感じ……ありますね。

宮田 ありますね。

(第3回へつづく)

(写真:編集部)

 

関連書籍

宮田珠己『衰えません、死ぬまでは。』

めでたく還暦を迎え、まじめに老化と向き合おうと一念発起! ……したものの。 自分でやろうと決めた筋トレも、始めてみれば愚痴ばかり。毎朝の”バター滲み滲みパン”も、やめられない。 怠け者作家が、老化にささやかな反抗を続ける日々を綴るエッセイ。

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衰えません、死ぬまでは。

旅好きで世界中、日本中をてくてく歩いてきた還暦前の中年(もと陸上部!)が、老いを感じ、なんだか「運気」も下がっている気がして、悶々。
いざ、まじめに老化と向き合おうと一念発起!……したものの、自分でやろうと決めた筋トレも、始めてみれば愚痴ばかり。毎朝の”バターしみしみパン”もやめられない。
はたして、「老い」と戦えるのか?「運気」は上がるのか?
怠け者作家が、老化にささやかな反抗を続ける日々を綴るエッセイ。

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スズキナオ ライター

1979年東京生まれ。フリーライター。WEBサイト「デイリーポータルZ」を中心に執筆。著書に『深夜高速バスに100回くらい乗ってわかったこと』『思い出せない思い出たちが僕らを家族にしてくれる』『家から5分の旅館に泊まる』『新幹線から見えたすき家へカレーを食べに行く』『捨てた紙、捨てられない紙』など、共著に『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで帰れない一日』(パリッコ氏)、文通 答えのない答え合わせ』(古賀及子氏)など。

宮田珠己

1995年に『旅の理不尽~アジア悶絶篇』を自費出版しデビュー。以来、紀行エッセイを中心に、日常エッセイ、書評、小説なども執筆。『東南アジア四次元日記』で 第3回 酒飲み書店員大賞、『ニッポン47都道府県正直観光案内』で第14回エキナカ書店大賞を受賞。他にも『ときどき意味もなくずんずん歩く』『いい感じの石ころを拾いに』『だいたい四国八十八ヶ所』『明日ロト7が私を救う』『路上のセンス・オブ・ワンダーと遥かなるそこらへんの旅』などエッセイ多数。小説に、東洋奇譚をもとにした『アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険』がある。2作目の小説『そして少女は加速する』で、青春小説に挑戦。賞賛を集めている。
(撮影:干田哲平)

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