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勝手に!裏ゲーテ 街場の旨いメシとBar

2024.06.18 公開 ポスト

#51

“神はディテールに宿る”台北ロケハン編相場英雄

<使用機材>RicohGR3,SonyRX100M 6,SonyRX0M2

いきなりで恐縮だが、“神はディテールに宿る”という名言をご存知だろうか。ドイツ生まれの近代建築の名匠、ミース・ファン・デル・ローエのありがたいお言葉である。建築家の間では、図面を描く上でディテールへの徹底したこだわりが作品の本質を決定づけるとされる。

ディテールにこだわるという点は、小説にも通底する。舞台設定となる土地を尋ね、キャラクターの生活圏を決める。そこで起こるエピソードは、その土地の人情や風習に即したものでなければリアリティーを失ってしまうのだ。

 

さて前置きが長くなった。

四月半ばのある日、私は台湾の台北市へと飛んだ。G舎の文芸誌にて新連載の開始を控えていたため、G舎文芸誌のN担当編集長、その上司Kさんとともに新たなストーリーの重要な舞台、台北へと取材に向かった。

台湾は蒸し暑い。よってビールが進む。何本空けたかわからない。
名物シジミの醤油漬け。日本で食らう一皿とはまったくの別物。もちろん、ビール泥棒。

このG舎コンビとは、二〇一七年一二月にも旅している。このときは香港を訪れ、主人公が暮らす街をつぶさに見て回った。
(2019年に書籍化された『KID』)

今回は同作のパート2、舞台を台北に変えての続編となる。私は台湾への渡航は初めて。このため、台湾好きで知られるKさんが心強い助っ人を立ててくれた。かつてG舎のGOETHE(ゲーテ)編集部に勤め、現在は台北でフリー編集者として活躍する竹中式子さんだ(著作は『台湾ごはん何食べる? 台湾人・阿米と日本人・美菜の食楽記』)。本家本元の名エディターが裏ゲーテの書き手を案内する、これは奇遇、それともなにかの因縁なのか。

いよいよ台北弾丸ツアーが始まった。竹中さんは事前に拙著、当欄も読み込んでくださっていた。

〈要するに観光客がほとんどいなくて、キラキラしていない場所がお好みですね? 〉

その通り。こうなると話は早い。現地語を巧みに操る竹中さんにおんぶに抱っこの形でディテール探しの旅が展開した。

街のいたるところに廟があり、地元民が熱心に通う。
台北駅近くの名食堂。豚骨ベースのモツビーフン(お粥)が絶品。名ガイドなしでは辿り着けない。
二日酔いの胃袋に染み渡る豚骨スープとプルップルビーフン。

同行のN編集長はしきりに〈魯肉飯〉〈小籠包〉という日本人観光客特有のキラーワードを発したが、〈別に東京で食べられるものはいいでしょ〉とのことで、現地のディープな食堂や裏小路をひたすら探索することになった(超高層ビルとかスイーツの店は皆無)。

二泊三日の強行軍だったため、本欄で詳述はできないが(写真とキャプションで雰囲気を感じとっていただけたら幸い)、現地の空気をたっぷりと吸収した次第。

廟の境内にある食事処。大きなガジュマルの下、地元民で大混雑。皆大声で話し、よく食う。この雰囲気、大好物。
乾物屋街の交差点。胡椒専門店のスタンドで黒胡椒をゲット。お母さんがとんでもなく優しい。謝謝!

昨今は現地在住のユーチューバーや動画コンテンツが豊富で、台北に行かなくともロケハンは可能だ。しかし、動画コンテンツではカバーできないことがたくさんある。

実際の土地では湿度や風向きを感じる。飲食店の厨房から立ち上るスパイス(主に八角)の濃厚な香りに接する。こうすることで、主人公や他の主要キャラクターたちが傍らにいる気配を感じることができるのだ(たまには真面目なことを言う)。実際に作品を執筆する際、現地で触れた食べ物(もちろんビールも)、商店でのやりとりがディテールとして活きてくるのだ。

小説の主人公の住まい近くの燒餅油條の名店。鹹豆漿(しぇんとうじゃん)、油條(ヨーティヤオ)は初体験。1ミリもキラキラしていないところがツボ。
鹹豆漿(しぇんとうじゃん)。酸っぱい、チョイ辛、いろんな味が混ざった朧豆腐のスープ。病みつきになりそう。

同地はとにかく食べ物がウマい。竹中さんのチョイスが良いのは当然ながら、〈安くてウマい〉を愛してやまない私にとって、同地の食堂に〈胃袋鷲掴み〉されたのは間違いない。

巡った食堂、それに裏小路の多くはキラキラ系の観光ガイドではほとんど紹介されていない。だからこそ作家はつぶさに街を観察し、作品にエッセンスを落とし込んでいく。近く連載開始となる新作で、多くの読者を台北の路地裏にご案内しようではないか。

台北観光の有名地、龍山寺にて。社会派っぽいだろ?
一大観光地・台北101至近にある市場。地元民の熱気がすごい。美味しそうな物ばかり。

初めて台北。接する現地の人たちは皆優しく、親切だった。早くもう一度、台北に行きたいなあ。

さてさて、日程の最後。鵝鳥料理の名店でN編集長から初回原稿の締め切り日を告げられたような気がする。ただ、打ち上げでビールを飲みすぎてしまったので、スケジュール帳には記載がない。秋口、いや年末入稿でしたかね?

海鮮居酒屋の名店にて、台湾ビールのキャンペーンガールと。どうだ、より社会派っぽいだろ?

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食い意地と物欲は右に出るものがいない作家・相場英雄が教える、とっておきの街場メシ&気取らないのに光るBar。高いカネを出さずとも世の中に旨いものはある!

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相場英雄

1967年新潟県生まれ。元時事通信社記者。主な著書に『震える牛』(小学館文庫)、『血の轍』、『KID』(ともに幻冬舎文庫)、『トップリーグ』  『トップリーグ2/アフターアワーズ』(ともにハルキ文庫)。近著は『血の雫』(幻冬舎文庫)、『レッドネック』(ハルキ文庫)、『マンモスの抜け殻』(文藝春秋)、『覇王の轍』(小学館)、『心眼』(実業之日本社)、『サドンデス』(幻冬舎)、『イグジット』(小学館文庫)『ゼロ打ち』(角川春樹事務所、2月下旬発売)。

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